皆さんが住む住宅、勤め先のオフィス、学校に必ずあるガラス。
そのガラスはどういう企業が製造しているのかご存知ですか?
旭硝子株式会社(以下、旭硝子)は売上の半分以上がガラスの事業であり、世界のガラス産業ではトップのシェアを誇ります。また2016年12月8日の日本経済新聞でそんな旭硝子がタイの企業を買収し、化学工業を拡大したと報じられました。
今日は、旭硝子の戦略やガラス業界を紹介していきます。
旭硝子のIR
旭硝子の財務データ
旭硝子のセグメント別の財務データの推移
(出展 : 決算短信)
旭硝子は建築用、自動車用のガラスを扱うガラスセグメント、ディスプレイ用のガラスや電子部材を扱う電子セグメント、塩化ビニルやアルカリなど工業用の原料を扱う化学工業、そしてセラミック・その他のセグメントから成ります。
ガラスセグメントの売上はリーマンショック後年間平均約5%で成長していますが、営業利益率が低いのが現状です。
電子セグメントに関しては、
液晶用やディスプレイ用のガラスに関しては他社より進んだ製造技術を早期に導入したため2010年頃までは高い利益率を誇っていましたが、需要の低下と他社の技術が追いついたことにより、近年高い利益率を出すことができていません。
※製造炉を一旦稼働させると継続運転が必要であるためエネルギー代も固定費に計上している
(出展 : みずほ銀行産業調査部)
旭硝子の株価
参考までに旭硝子の直近1年の株価データを載せました。
旭硝子のガラスカンパニー
建設用、自動車用のガラスは製品の差別化が難しく、また新興国の技術発展により価格の差別化が難しいのが現状です。
そのため旭硝子だけでなく他社も営業利益を創出するのが困難です。
さらに上図に示した汎用的なガラスの製造原価を見て分かる通り、製造原価には固定費が多く含まれているため、稼働率を上げて製品あたりの固定費を下げる必要があります。
そして各ガラスメーカーが稼働率向上のために製品を多く作るため低価格競争となり、営業利益を向上させるのが難しいのがガラス業界です。
そこで旭硝子が注目したのが化学工業です。
成長する化学工業
ガラス業界での利益創出が難しい中、旭硝子が投資をしている分野が化学工業です。
化学工業では塩水の電気分解で得られる基礎化学品からフッ素化学品などの高機能製品まで手広く扱っています。
中でも工業的に用途の広い苛性ソーダはアジアでNo.1のシェアです。
2009年から売上が年平均6%で成長しており その中で今注目なのが水道管や建材で使われる塩化ビニル樹脂です。日本を除くアジアではここ10年で塩化ビニル樹脂の需要が2倍になるほどの成長分野です。
2014年にはベトナムで1社塩化ビニルの企業を買収し、今年旭硝子はタイにある塩化ビニルを扱うビニタイ社を買収することを発表しました。
旭硝子は2020年までの5年間で3,000億円をM&Aに投じる戦略を打ち出しており、化学工業を中心にアジアでのシェア拡大を狙っています。
さいごに
ガラス業界の動向や旭硝子という会社を解説したところで、最後に同社で活躍経験のあるCFO 経営企画部長を紹介したいと思います。
宮地伸二(昭和46年4月19日生)
1990年8月 旭硝子入社
2010年1月 同社執行役員社長室経営企画グループリーダー
2012年11月 同社執行役員
2013年10月 同社執行役員ガラスカンパニー戦略室長
2014年1月 同社執行役員電子カンパニーエレクトロニクス事業本部長
2015年3月 同社取締役兼常務執行役員社長室長
2016年1月 同社取締役兼常務執行役員経営企画部長(CFO)
現在、ガラスメーカーでシェアトップは旭硝子です。化学品の事業の拡大を成功させ収益性の向上を期待したいと思います。
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編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
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