政府は2019年4月に外国人労働者向けに新たな在留資格をつくり、人材不足解消を目指します。この新たな在留資格では、最長5年間の技能実習を修了した外国人がさらに最長で5年間就労できるというものです。また、試験に合格することで、家族を招いたり、より長く国内で働いたりできる資格へ移行することも可能になります。
新資格の導入で最長5年間の就労が可能、農業や介護は最長10年間も
政府は、これまで単純労働者の受け入れを原則として認めていませんでした。しかし、働きながら技能を身に着ける技能実習の範囲拡大や期間延長という形で事実上の受け皿をつくっていました。今回、単純労働者に対して就労の在留資格を幅広く与える制度を導入すれば、大きな政策の転換点になると考えられます。
この新たな在留資格については、今秋の臨時国会で入国管理法改正案が提出され、来年4月にも「特定技能(仮称)」という資格として新制度が始められる方針です。この制度の導入により、2017年10月末で25万人いる技能実習生は、最長5年間の就労を行うことが可能となります。さらに、農業や介護などは技能実習があるため、新設する資格とあわせると通算で最長10年間の国内就労ができるのです。
外国人労働者の増加で人手不足の業界を救えるか
この新しい在留資格で就労することで、技能実習よりも待遇がよくなるため、技能実習から移行を希望する外国人は多くなることでしょう。政府は少なくとも年間数万人の外国人労働者が増えるとみており、農業、介護、建設など人手不足の業界の人材確保に大きな期待が寄せられます。
もともと、技能実習は学んだ技術を母国に伝えることを前提にされており、経験を積んだ人材であっても実習後は国外に退去しなければなりませんでした。しかし、長く働きたい外国人や、人材育成をした国内の雇用主からは、この制度に改善を求める声が多くありました。
新資格では「技能実習制度」と「学んだ技術を母国に伝える」という本来の目的は維持するため、一定期間、母国に帰って再来日した後に資格が与えられることになっています。そのため、技能実習と新資格で通算10年を過ごしても、直ちに永住権取得の要件を満たすことはできません。
実習修了者と同程度の技能を持つ人にも新資格を付与する方針もあり、既に実習を終えて帰国した人もこの新資格の対象となる見通しです。これにより、経験豊かな労働者の確保と外国人労働者の増加が見込まれます。また、新資格を保有して専門技能を問う試験に合格することで、より専門性の高い在留資格に変更できるようになります。この在留資格に変更すると、海外の家族の受け入れや在留期間の更新ができるので、ますます外国人労働者の増加に寄与することでしょう。
外国人労働者が日本の労働力を担う
2025年度には、国内の介護職員が約38万人不足すると予測されています。さらに、農業人口もこの10年で約4割減少し、人手不足が深刻になっています。アジア各国の賃金上昇で外国人労働力の獲得は難しくなっていますが、新資格の移行によって技能実習生の多くを長期間の国内労働力として定着させることができるでしょう。
現在の日本の労働力人口は約6600万人。また、17年10月末時点の外国人労働者数は技能実習生の増加などがけん引し、127万人と過去最高を更新しました。労働力の50人に1人は外国人が担う状況ですが、政府はさらにその割合を増やしていく方針です。
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