企業を何で評価する? GPIFも注目、ESG投資信託とは? SRI(社会的責任投資)とは?

ESG投資信託の需要高まるか

2017年1月26日の日本経済新聞朝刊によると中堅運用会社キャピタルアセットマネジメント株式会社が 「環境社会ガバナンス」に積極的に取り組む日本企業の株式で運用する個人向けESG投資信託を立ち上げることを発表しました。
 
日本でも公的年金を運用する機関である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、ESG投資に配慮する姿勢が強まっているので、個人にも需要が高まると判断したのでしょう。
 
しかし、ESGや投資信託のようなワードはあまり馴染みが無い方もいらっしゃるかもしれません。そこで、今回はESG投資信託について分かりやすく解説いたします。
 

そもそも投資信託とは?

投資信託とは?

投資信託(ファンドとも言う)とは簡単に言うと、「投資家から集めた資金を一つにまとめ、運用の専門家が株式や債権などに投資し、運用する商品で、その運用成果が各投資家に投資額に応じて分配される金融商品」です。
 

投資信託の仕組み

投資信託の販売

では、投資信託では実際にどのようなやり取りで行われるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
 
まず、商品である投資信託は投資信託運用会社で作られます。次に投資信託は販売会社となる証券会社、銀行、郵便局などを通して販売され、投資家からお金を集めます。
 

投資信託の保管

投資信託を販売することで集めたお金は資金となり、専門家である信託銀行に投資信託が保管されます。
 

投資信託の運用

投資信託運用会社は資金をどこに投資するのか、どうやって運用するのかを考え、信託銀行に投資の実行の指示を出します。
 
このように、投資信託は販売・運用・保管の業務を専門の機関が担うことで成り立つ商品なのです。
 

ESGとは?

ESGとは非財務情報

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、 Governance(企業統治)の略です。
 
これまでは投資家などの利害関係者が企業の評価をする際は、財務情報の分析をすることがほとんどでした。
 
しかし、近年では財務情報に加えてESG、つまり、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に関する情報も考慮する傾向が強くなっています。
 
E、S、Gの具体的な項目は様々ですが、Eは地球温暖化や環境汚染、Sは労働雇用問題、Gは不祥事への対応など社会的な影響度が大きい課題が当てはまります。いずれも決算書では示すことのできない非財務情報に焦点を当てており、投資家が投資先を評価する際の新たな指標になります。
 

E「環境」

Eの環境は、CO2排出などの地球温暖化問題、水や生物多様性、化学物質や廃棄物の管理など、企業を取り巻く自然環境に関連する取り組みの情報です。
 

S「社会」

Sの社会とは、従業員の労働管理や衛生管理、製品や―ビスの安全管理、人権、顧客、地域社会に対する責任など、企業内及び企業外に関する取り組みの情報です。
 

G「ガバナンス」

最後にGのがバンスとは、企業経営の体制や社外取締役の独立性、コンプライアンス、汚職防止、情報開示など経営の根幹に関わる取り組みの情報です。
 

ESG投資の目的とは?

ESG投資のルーツ、社会的責任投資(SRI)とは?

社会的責任投資(SRI)の目的とは? 社会の持続性を追求

ESG投資の目的をお話しする前に、ESG投資の歴史的なルーツである社会的責任投資(SRI)について解説します。
 
SRI(Socially Responsible Investment)とは社会的責任投資で、投資を通して社会の持続可能性を高めることに貢献しようとすることです。
 

社会的責任投資(SRI)の起源

もともと、社会的責任投資(SRI)は教会の資産運用で酒や武器など、教義や宗教的価値観に反する事業を投資の対象から除外するという倫理的な投資から始まったとされています。
 

社会的責任投資(SRI)の拡大

そして、ベトナムの反戦運動や消費者運動などの社会運動の高まりにより社会的責任投資(SRI)は発展しました。さらに、近年地球環境や資源、貧困、人権などの問題への関心が高まったことで持続可能な社会の実現への取り組みが盛んになり、より社会的責任投資(SRI)が拡大しました。
 

社会的責任投資(SRI)からESG投資へ

社会的責任投資(SRI)の拡大に伴い、国連で2006年に出された責任投資原則で、持続可能な社会の実現に向けて解決すべき問題を3つに整理しました。それが、環境、社会、ガバナンスであり、それぞれの英語の頭文字はまさにESGなのです。倫理観から始まった社会的責任投資(SRI)が責任投資へと広がり、ESGという観点が生まれました。つまり、ESG投資は社会的責任投資(SRI)の発展の歴史から生み出されてきた投資というわけです。
 

ESG投資の目的とは? 企業の「収益性、安定性」を中長期的に追求

以上を踏まえた上で、ESG投資の目的とは何でしょうか?ESG投資はあくまで投資先企業の収益の向上、安定を求める投資であり、投資先の企業のESG情報を見ることは中長期的な観点で企業を評価することであると言えます。
 

ESG投資の評価「リターンの視点」

ESG投資の評価には二つの視点があり、リターンとリスクの視点があります。ESG投資におけるリターンの視点では、例えば、地球温暖化問題をビジネスチャンスとするなど、企業がESG課題に取り組むことは企業価値の向上を評価することに繋がります。
 

ESG投資の評価「リスクの視点」

ESG投資におけるリスクの視点では、ESG情報から将来の企業価値の縮小や損失の可能性を評価します。
 
したがって、投資家がESG情報を分析することは企業のESG要因への取り組みを促すことに繋がります。これが投資家や企業が社会的責任を果たすこと、持続可能な社会の向上に寄与することに影響するのです。
 

ESG投資信託、あなたは何で企業を評価する?

皆さんはどんな観点で企業を見ていますか?商品の認知度、売上、従業員数、存続期間、ブランドなど様々な視点があると思います。
 
ESG情報は上で述べたように企業と社会のつながりを重視している観点だと言えます。ESG情報を見ることによって、企業の新しい捉え方が出てくるでしょう。今まで見ていた企業に新しい評価が加わるかもしれません。
 
(参考ページ)
大和総研グループ 「ESG投資を考える」
http://www.dir.co.jp/research/report/esg/esg-place/esg-investment/20151214_010432.html
 
ケイゾンマネー
https://www.k-zone.co.jp/study/learning/fund/selection/198.html
 
投資信託協会
https://www.toushin.or.jp/investmenttrust/about/what/
 
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
 

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