金融庁、自らの職場で「職場つみたてNISA」の導入を決定
2018年1月から始まるつみたて方式の少額投資非課税制度、つみたてNISA(ニーサ)をご存知でしょうか。金融庁は、このつみたてNISAを他省庁・地方自治体、更には民間企業における普及を視野に入れて、“職場つみたてNISA”としてまずは金融庁自らの職場に導入することを決定しました。この記事ではこの職場つみたてNISAについて解説します。
また、投資初心者でつみたてNISAに関心がある方々向けの解説を2本立てのシリーズでお届けしております。第一弾ではまずつみたてNISAの仕組みや特徴、現行NISAとの違いなど概要を分かりやすく解説しました。そして、第二弾の本記事ではつみたてNISAの使い方として導入される「職場つみたてNISA」を働きながら投資を始めたい方々に向けて解説します。
- つみたてNISAを使った「職場つみたてNISA」とは? 金融庁、家計現預金を投資へ
おさらい 「つみたてNISA」とは
なぜ私たちの投資が必要なのか
私たちの生活で、どうして投資が必要なのでしょうか?
まず家計金融資産、つまりは各世帯の家計が保有する金融資産(現金・預金、保険・年金、株式・投信など)について考えてみましょう。日本の家計金融資産の残高は、1,832兆円(2017年6月末)そのうち約52%にあたる945兆円(同)が現預金(現金・預金)と共に過去最高なのです。金融庁はこの大量な現預金を投資に移行すると、以下の2つの経済効果を生み出すと予測しています。
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中長期的に安定的なリターンの実現を通じて、家計の金融資産が増加
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国内株式市場への資金流入、外為市場における外貨買い需要が継続的に発生し、株式市場・為替市場の安定にも資するとともに、健全な成長資金の供給へ
(引用)金融庁 「つみたてNISAについて」 http://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20170614-2/12.pdf
そこで、現行NISAよりも“家計を管理しているが投資が未経験な人たち”でも利用しやすいつみたてNISAは、家計に眠っている900兆円という現預金を投資することで日本の経済を活性化させようという試みなのです。
つみたてNISAとは
(出所)金融庁「つみたてNISAについて」 http://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20170614-2/12.pdf
つみたてNISAの最大の特徴は、金融庁が投資対象商品を長期の資産形成に適すると判断した手数料が低いシンプルな投資信託に限定しているという点です。現行NISAは、非課税期間が原則5年で、福利厚生として長期の資産形成を促す仕組みには属さないという見方がありました。しかし、つみたてNISAは非課税期間が20年と長期で、対象商品も金融庁によって選ばれたもので、安心できます。
以上がつみたてNISAのおさらいとなります。
職場つみたてNISAを解説
職場つみたてNISAとは
職場つみたてNISAとは、給与から天引き等によりNISA口座を利用して投資信託等に投資する仕組みをいいます。
“現行NISAを使ったつみたてNISA”は定着せず
日本証券業協会は、様々な金融機関による“現行NISAを使ったつみたてNISA”(注:2018年1月から始まる“つみたてNISA”とは異なる。)の普及を支援しています。しかし6月時点での同つみたてNISAの導入企業は、6002社。1社あたりの積立金額は月4万円弱と、1社に数人しか職場つみたてNISAを利用していない可能性を指摘しています。
つみたてNISAのメリットとデメリット
つみたてNISAのデメリット
つみたてNISAは現行NISAに比べると対象商品の手数料が低いため、現行NISAに比べると採算が悪いという金融機関にとってはデメリットがあると言われています。
つみたてNISAのメリット
しかし、つみたてNISAは非課税期間が20年であることとコストが低いという点から、利用者にはメリットが大きいと考えられています。
さらに、つみたてNISAを使った職場つみたてNISAを導入することは金融機関にとってもメリットがあります。金融機関が窓口で利用希望者一人一人に説明するよりも職場で多人数を一挙に取り込めるという効率性の高さがあるというのも、職場つみたてNISAの導入背景にあります。
また利用者である従業員にとっては、給料から積立が行われるためわざわざ金融機関に足を運ばなくて良いのもメリットです。
まずは金融庁が自ら職場つみたてNISAを導入
金融庁は職場つみたてNISAを導入する下記のメリットをあげ、まずは金融庁が自らの職場に職場つみたてNISAを導入することを決定しました。これは来年の2018年1月のつみたてNISA開始とともに、金融庁職員による買付けを可能にするものです。
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つみたてNISAは少額からの長期・積立・分散投資に特化し、投資未経験者などが資産形成を始めるのに適している制度。
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身近な場(職場)でつみたてNISAを開始するきっかけが得られる環境を整えることにより、現役世代も資産形成に取り組みやすくなる。
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併せて、つみたてNISAをきっかけに、職場において金融・投資教育を受けられることは有益。
(引用)「職場つみたてNISAの導入について 別添1」 http://www.fsa.go.jp/news/29/20171020-1.pdf
この職場つみたてNISAを金融庁がまず自ら導入することで、その仕組みを基本モデルとして他の省庁や自治体、さらには民間企業に広げるという方針です。
金融庁における職場つみたてNISAの取扱金融機関
10月20日には金融庁に導入される職場NISAを取り扱う金融機関の公募が始まりました。金融機関の公募条件は二つあり、一つは金融庁職員向けに金融・投資教育を実施すること。もう一つは顧客本位の業務運営「フィデューシャリー・デューティー」の原則を採択し、取り組み方針を公表していることです。
職場つみたてNISAで投資がより身近に
2018年1月から始まるつみたてNISAは、現行NISAよりも非課税期間が20年であることと手数料が低いということから、現行NISA利用者にとっても投資がさらに身近になると考えられます。また、職場つみたてNISAは、給料から積立が行われるという仕組みを持ち合わせています。利用希望者は金融機関に出向く必要性がなくなり、さらには一度に多人数に投資の説明を行うことが可能になりました。
金融庁が自らの職場に導入する職場つみたてNISAは、つみたてNISAを職場に適した形で基本モデル化して一般企業にも浸透させるための大きな門出となりそうです。
(参考文献等)
- 日本経済新聞「つみたてNISA 職場でGO! 」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22517410Q7A021C1000000/
- NISA推進・連絡協議会「職場積立NISAの導入状況等について(平成29年1月~6月)」http://www.jsda.or.jp/sonaeru/content/tsumitatenisa201706.pdf
- 金融庁 「つみたてNISAについて」 http://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20170614-2/12.pdf
- 金融庁「職場つみたてNISAの導入について 別添1」 http://www.fsa.go.jp/news/29/20171020-1.pdf
- ロイター「家計の金融資産が過去最高1832兆円、日銀の国債保有は4割突破」https://jp.reuters.com/article/household-asset-idJPKCN1BV00L
編集者:株式会社mannaka
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