今回は樽本法律事務所代表弁護士 樽本哲氏にご登場いただきました。樽本法律事務所では、ビジネスや人生、社会変革のためのチャレンジなど、クライアントが本当に叶えたい未来のための法的サポートを提供しています。
今回の対談の前編では、樽本氏の弁護士としての道のりや以前より力を入れているベンチャー・NPO支援に対する思い、弁護士をめざすきっかけとなったエピソードなどを語っていただきました。WORK COMPASS編集長の柴田、株式会社Mi6代表取締役の川元氏との対談をぜひ、お楽しみください。
以下
樽本:樽本法律事務所代表弁護士 樽本 哲氏
柴田:株式会社mannaka 代表取締役 柴田 雄平
川元:株式会社Mi6 代表取締役 川元 浩嗣氏
弁護士業務とベンチャー・NPO支援
柴田
まずは樽本さんの経歴についてお話しいただけますか。
樽本
赤坂の弁護士事務所に14年間在籍し、国内の大手・中小企業の訴訟案件に主に関わっていました。とりわけ建設・不動産関連の訴訟に関わることが多かったです。談合やカルテルの弁護、開発案件の立退交渉などけっこうゴリゴリ系の仕事ですね。2018年に独立して樽本法律事務所を設立しました。独立と同時に株式会社も作ったので、そちらでも法律関連サービスと投資を含む企業家の支援をやっていく予定です。
柴田
樽本さんはベンチャー支援を積極的に行っていますね。
樽本
弁護士をめざしたときから、「世の中を変えていきたい」とか「新しい価値を生み出したい」ということにチャレンジする人を応援していきたい気持ちがあったんです。それも、バイプレイヤーとして応援するんじゃなくて、仲間のひとりとして応援していきたいなと。それで弁護士になって2、3年目頃から、ベンチャーに出資して役員や顧問として入り、経営チームの一員になるというスタイルを確立していきました。
川元
ずいぶん早い段階からベンチャーに関わってたんですね。
樽本
ベンチャー経営の苦しみや辛さを一緒に味わえるのが楽しかったです。そのために弁護士をやってるような感じでした。もちろん既存の不動産や建設関係の訴訟もやりがいはあったんですが、だんだんこっちがメインになってきちゃって。自分の価値観が出せるような法律事務所を作りたいという思いがあって、とうとうこの4月に独立したわけです。
柴田
なるほど、独立おめでとうございます。
樽本
「プレイヤーでいる」ということが、僕にとってはすごく大事なことなんですね。弁護士は、相談に訪れた方に正しく対応すれば、それで完結できる仕事ともいえます。でもそこで一歩踏み込んで、「自分も経営の責任を負ってチームに入る」ことができる弁護士人材を、この法律事務所で育てて増やしていきたいなと思っています。
川元
なるほど。ベンチャーだけでなくNPOの支援に取り組むことになったきっかけは何ですか。
樽本
東日本大震災で心境の変化がありました。2010年に結婚して、子どもが12月に生まれて、翌年の3月に地震があったんですよ。発生当時、僕は仕事で青森にいて、停電などですぐに帰って来られなくて、妻は子どもを抱えて心細い思いをした。
柴田
それは大変でしたね。
樽本
震災がきっかけで、日本社会の将来を真剣に考えるようになりましたね。ただビジネスや儲け話を追いかけるというのではなく、世の中を良くするようなことにもっと貢献できないかなと。家族の将来がかかってますから。結婚してなかったら、こんな風に考えなかったかもしれないけど。それでビジネスだけではないところで何かできないかなと思って、社会貢献活動や非営利団体を応援する弁護士を募って「NPOのための弁護士ネットワーク」をつくったんです。
2013年の春から勉強会を始めて次で29回目になるんですけど、いろんな団体から声をかけていただいて、この分野では存在感のある弁護士になれたかなという手応えがあります。
柴田
非営利団体を対象にした勉強会ですか。
樽本
そうですね。NPOの分野には、足りないと思うパーツがたくさんあるんです。たとえば寄附を集める際に寄附をしたい人とNPOをつなぐプラットフォームはできていましたが、NPOを適切に評価する仕組みがないんですね。ビジネスの世界では当たり前にあるサービスがNPOでは確立されていない。そこで2016年に「非営利組織評価センター」が立ち上がった時に、その仕組みを作るチャレンジがしたくて監事としてサポートに入りました。それから非営利組織が資金調達するときのファンドレイジングの団体にも監事として参加しています。活動団体のサポートとしては、フェアトレードの団体の理事などもしています。
柴田
すごく幅広く活動されてるんですね。
樽本
活動しすぎてパンパンなんですけど(笑)。面白い人たちと知り合えるし、名指しで依頼してくださるお客さんが増えていてありがたいなと思ってます。一方で若手を育成していかないといけないので、そこが今の課題です。なかなかいないんですよね、経営感覚を理解できる弁護士って。
川元
確かに、弁護士はそういうイメージがあるかも。
樽本
決算書を見て数字の意味がちゃんと理解できるとか、経営者とお金の話をしっかりできる弁護士って、実はそれほどいないと感じています。倒産事件の弁護士さんはその分野には詳しいんですけど、会社を設立して資金調達をして成長して投資して…といったあたりを経営者と同レベルで話せる弁護士はなかなかいない。
柴田
そういう意味では、弁護士の世界でも未開拓の分野なんですね。
ストリートダンスをしたくて東京の大学へ
柴田
今、樽本さんはマルチスキルで活躍していらっしゃるわけですけど、樽本さんが弁護士になろうと思ったきっかけを教えていただけますか。
樽本
僕は関西の出身で、親からは「関西の国立に行け」と言われてたんですね。でも推薦で早稲田の法学部に決まって、進学したいと親に交渉したんですが、親からすれば仕送りしなきゃいけないし私学だから金もかかる。そこで、親から「法学部に行くなら司法試験の勉強をしろ。それが嫌なら国立に行け」と条件を出されまして(笑)。
川元
ご両親、すごい(笑)。
樽本
親父は転勤族のサラリーマンで、母親は看護師資格を持っていたんですね。看護師はどこに転勤しても働けるから「資格は大事」と、小さい頃から言われて育った。
川元
マインドセットで植えつけられてたんだ(笑)。
柴田
資格の英才教育を受けていたんですね。
樽本
でも僕が東京に行きたかった本当の理由は、弁護士資格が欲しかったからではなくて、実はストリートダンスをしたかったんです(笑)。
川元
やばい(笑)。
柴田
そうだったんですか(笑)。踊れる弁護士だったんだ。
樽本
大学時代はひたすら踊ってましたね。チームでイベントに出たりして。
川元
やばい。それ、めっちゃ見たい(笑)。
樽本
六本木とか通って、クラブ行って、踊りまくってました。
柴田
樽本さんからファンキーさを感じるのは、そういうことだったんだ(笑)。
樽本
実は今でも、ストリートダンスの経験が活きてるなって感じるんですよ。あれって即興力なんですよね。あと、人からすごく見られるじゃないですか。僕、法廷の証人尋問で緊張したことが一回もないんで(笑)。
川元
証人尋問ってかなり緊張するものなんですか。
樽本
事前にかなり準備するんですけども、なかなかシナリオどおりには進まないんですよ。アドリブ力が相当必要ですね。
柴田
弁護士の仕事に興味がわいてきました(笑)。
川元
弁護士ってお堅いイメージだったんですけど、樽本さんはちょっとそのイメージを覆しますよね。
間口の広い弁護士をめざす
川元
樽本さんが弁護士業務を行っていく上で大切にしているスキルを教えていただけますか。
樽本
これは直接の答えではないかもしれませんが…弁護士のタイプって、いろんな分野に関わっていくゼネラリストと専門に特化したスペシャリストに分かれるんですけど、僕はやっぱりゼネラリストかなと思うんですね。いろんな人と繋がって仕事をしたいという思いがあって、間口の広い弁護士でいたいと思っています。
柴田
人と繋がっていたいという気持ちは、どこから来るんですかね。
樽本
困っている人にとっては、「この分野しか分かりません」という人より、いろいろな知識と経験と問題解決を知っている人の方が頼りやすいんじゃないかなと。ただ、仕事にするためには専門的にその分野を掘り下げていないといけないので、いろんな法分野で仕事する中で「自分はその分野をどれぐらい掘り下げているのか」ということを常に意識しています。自分の掘っている深さとその人の求めている深さがマッチしないと、仕事を受けることはできませんからね。そこは常に気をつけていますし、機会があるごとに掘り下げる努力をしています。
柴田
その力を総合していくと、なんだろう。オールラウンダーなのかな。
樽本
目指す方向としては法律に関するオールラウンダーではあるのかもしれませんね。
川元
「いろんな人の役に立ちたい」というのが重要なキーワードであるように思いますね。
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今回の対談の前編では、法律事務所を設立するまでの経緯と、ベンチャーやNPO支援への取り組みについて語っていただきました。弁護士になって間もない頃からベンチャー企業の支援に関心を抱き、経営メンバーとして参画していった樽本氏。その想いが新しく設立した法律事務所の理念にも結びついているようです。
対談の後編では、弁護士業務の枠を越えて行っているビジネス支援の新しい取り組みと若い世代に向けたメッセージについてお話を伺っています。
後編のテーマは「ビジネスの力で社会の仕組みを変える」「司法の枠にとらわれない発想を持つ」「ゴールとなる現場に身を置いてみる」です。後編もぜひご覧ください。
▶︎樽本法律事務所
未来から考えよう-Future oriented-
依頼者のビジネスや人生をできる限りシンプルにする-Make it as simple as possible-
社会をよりよくするためのチャレンジを後押しする-Boost challenge-
HP:https://tarumoto-law.com/