株式会社ALEG 岩崎マミさんに聞く|家事をビジネスに。しなやかな発想で清掃業界の変革をめざす【後編】

今回は株式会社ALEG代表取締役 岩崎マミさんにご登場いただきました。株式会社ALEGは、2004年に家事代行サービス事業でスタート。民泊やシェアハウスの清掃事業にいち早く参入し、現在は民泊・シェアハウス・撮影スタジオ・小規模オフィスなど幅広い物件での清掃サービスを展開しています。
今回は、今後のビジネスの展望と、若い世代に向けたメッセージを語っていただきました。WORK COMPASS編集長の柴田、株式会社Mi6代表取締役の川元との対談をぜひ、お楽しみください。
 
以下
岩崎:株式会社ALEG代表取締役 岩崎マミ氏
柴田:株式会社mannaka 代表取締役 柴田 雄平
川元:株式会社Mi6代表取締役 川元浩嗣
 

子どもたちに家事を教え、生きる力を育みたい

柴田
ALEGの今後の展望について教えていただけますか。一般の家庭での家事代行サービスは、これからはしないんですか?
 
岩崎
定期的な家事代行はやってないんですが、これから伸ばしていきたい事業が、家事の方法を教えるサービスですね。
 
川元
いいですね、それ。絶対やってほしい。
 
岩崎
あと思うのが、子どもに家事をちゃんと教えたいなって。うちは子どもに家事を教えてきたから、家事代行を頼まないで済んだの(笑)。
 
川元
なるほどねえ。岩崎さん、今度ちょっと我が家の子どもたちに教えてやってくださいよ。
 
岩崎
ハンカチのたたみ方とか、そういうところからね。
 
柴田
いいですよね。そういう講師やってほしい。子どもに家事を教えるって、けっこう難しいんですよ。僕自身、子どもの頃に親から家事を教わってないしね。あと、家事をとことんまでやり切ってる人に、意見を聞いてみたいというのもあるね。家事って生きる力だよね。
 
岩崎
家事って地味だけど、生きる上で絶対に必要なことだからね。
 

 
柴田
知り合いの会社がちょっと面白くて、採用の基準が「子どもがいること」なんですよ。業務の打ち合わせなんかも、Slack(ビジネス向けチャットツール)でお互いがオンのときにやりとりするの。オフの時は、家事が忙しいとか手が離せない時だから、別の時間にするとかね。
 
川元
すごいね。
 
柴田
子どもが熱出した時もLINEで「業務に遅れます」ってメッセージ送るだけで済んじゃうっていう。
 
岩崎
うちもそうですよ。オペレーターのスタッフさんは基本的にリモートなんですけど、子どもが熱出して病院に行くときは「ちょっと行ってきます」って言ってくれれば皆でフォローできるし。
 
柴田
そういう価値観って大事だよね。
 
岩崎
清掃のスタッフさんも、現場に子どもを連れて行ってもOKなんです。
 
柴田
最高ですね。そういう感覚は、弊社と似てるかも。「子連れで会議に行けない会社とは契約しない」と決めてるんです。
弊社はオフィスレスで、完全にリモートなんですよね。全員が別々の場所で働いているんですけど、アウトプットはこちらで見るって形で。評価軸も、人それぞれポテンシャルやスキルが違うので、個別に評価するという感じですね。
 
岩崎
なるほど。リモートって、どうやって評価するかが難しいですよね。
 
柴田
同じことをやっているなら評価しやすいんですけど、そうじゃないですからね。だからそれぞれがやりたいことと、自分たちができることをうまくつないで合わせていくっていう感じにしたいかなと。
 

好奇心で動けば、人との出会いがある

川元
岩崎さんが培ってきたスキルというか、生きてきた土台にあるものを「〇〇力」という言葉で表現するとしたら、どんな言葉が入りますか。
 
岩崎
うーん、なんだろう。これといってあまり意識してないかもしれない。「フワフワ力」とか?(笑)でも、自分の中で「あ、これ知りたいな」とか好奇心はすごくあるから、いろいろ調べたりとかどんどん動いていくんですね。そうすると、アンテナが立つっていうのかな、自然にいろんなものがこちらにやってくるの。興味のある分野の人に出会えたりとかね。
 
柴田
アンテナがすごいですよね。感度が鋭いというか。
 
川元
民泊の清掃代行を始めたのもその流れだったよね。
 
岩崎
そうそう。フランス人の友達としゃべってて、ニースにある自宅で民泊をしてたっていう話を聞いたの。「旅行者に部屋を貸してるんだ」とか言ってて。当時はAirbnbなんて知らなかったから、「そうなんだー」ぐらいに思ってたんだけど。そしたらその翌日かな、韓国人の友達に「民泊で浅草にあるマンションの部屋を貸し出してるから、掃除してくれない?掃除得意でしょ」って言われて。さらにその翌日に、日本人の友達からも「民泊で貸してる部屋を掃除してくれない?」って(笑)。そんなことが3日連続で起こって、「あ。これ、いけるかも」って思って、民泊の清掃代行を始めたの。
 
川元
いきなり日本を飛び出してる(笑)。
 

 
岩崎
自分から何かを「やろう」って始めるというより、向こうから自然に来る感じなんですよね。今はメディアに興味があるんですけど、「清掃業界は働く人が少ない」というのが実感としてあるんですね。で、「清掃業界ってすごく誤解された業界なんじゃないかな」という問題意識があって。清掃をおしゃれでかっこいいイメージにしたいなと思って、そういうメディアがないかと探したんですけど、ないんですね。じゃあ自分で作ってみようかなと。いつもそんな感じで発想してますね。自分の中に問題意識があって、「こんなサービスがあったらいいな」と思ったところから始める。
 
川元
フワフワ力があって、フットワークが軽いのと意志決定も早いですよね。あと、不必要なものはすぐに切り捨てる力とか。それと、やっぱりアンテナが鋭いなと。
 
岩崎
あ、意志決定は確かに早いですね。
 
川元
そういう要素を総合すると、どんな力といえますかね。
 
柴田
直感、鈍感力とか?
 
岩崎
あ、うまい。それだね。直感はすごくあると思う。
 
柴田
市場に対する先見性とか、お客さんのニーズに対する先読みの力が直感としてあって、一方でどうでもいいことはすぐに切り捨てられる鈍感力もある。
 
岩崎
そうそう、どうでもいいことは本当にどうでもいい。鈍感というか、いつもニュートラルでいようと思ってるんだよね。「自分はこうだ」と決めつけないというか。
 
柴田
「ここはアクセルかける時だな」とか「ここでブレーキ踏まなきゃな」とか、自然にできてますよね。岩崎さんが身につけたそういう生き方って、子ども時代の環境とか、何か要因がありますか。
 
岩崎
小さい時からこんな感じの子どもでしたよ。一人でも割と平気だし、人といるから安心感を覚えるっていう感じでもなかった。転校を7回経験してるんですよ。それもあるのかも。
 
柴田
あっ、岬太郎タイプだ。
 
川元
『キャプテン翼』の(笑)。岬くんは翼くんの相棒なんですよね。ゴールデンコンビで。
 
柴田
岬くんは転校を繰り返してて、いろんな土地でサッカーをしていろんなチームを経験してるから、どんなプレーにも合わせられるんですよ。それでいて自分の軸があるっていう。
 
岩崎
確かに、何度も転校したことで、柔軟性がすごく高くなりましたね。そんなに主張はしないんですけど、集団の中にいたら何気に自分の居場所を作ってるっていう(笑)。
 
柴田
お話を伺ってて思ったのが、何かを決めるときに自分の軸をしっかり持って判断できる人なんだなあと。物事を決断する時って、普通は躊躇したり、悩んだりするじゃないですか。人に相談したりとか。
 
岩崎
あー、人に相談しないですね。っていうか、どうやって人に相談したらいいのかわかんないな、そういえば(笑)。
 
柴田
周囲の声に導き出されて動いてる感じもしますね。なかなかいないですよね、そういう人。岩崎さんって滅多に会わないタイプかもしれない。悩みとかなさそうな感じもする。
 
岩崎
悩みはありますよ(笑)。でも、悩みは自分の中で分類するんですよ。時間軸で解決できるものと、そうでないものとを分けたり。時間で解決できるものに関しては悩まないし、そうでないものは「じゃあどうやって動こうかな」って考えます。
 

リアルな場での人とのコミュニケーションを

柴田
今、若い世代はフリーランスとか起業とか本業のほかに副業を持つとか、いろんな働き方の選択肢があるんですが、若い世代に向けたアドバイスをいただけますか。「若いうちにこうした方がいいよ」とか。
 
岩崎
リアルな場で人と会って、いっぱいコミュニケーションした方がいいと思います。私は本当に、周囲の人に助けられてきたから。ネット上の文字だけのコミュニケーションじゃ、分かり合えないこともありますよね。文字だけでコミュニケーション取ってる人のことを本当に信頼できる?たとえば「1万円貸して」って言われても、貸せないでしょ。
 
柴田
確かに、それは難しいかも(笑)。「助けてもらえる人になる」って、難しいですよね。そう考えると、素直さって大事かも。
 
岩崎
うん、素直さは大事ですね。素直って、人生ですごく得することが多いんですよね。自分の子どもには「素直じゃないと損な人生になるよ」って、よく言ってます。
 

 
柴田
SNSっていくらでも着飾れるじゃないですか。でも、それでかっこよく見せたり可愛くしたりしても、嘘偽りだらけの自分になる。若いうちに自分をさらけ出して、いろんな人たちに実際に会って話をして、人を見る眼を養うことって大事なのかなと思いますね。
 
岩崎
うん。あと、若いうちは傷つくことも大事だと思う。傷つくって、痛いじゃないですか。痛みを知ると、自分は他の人を傷つけないようにしようと思いますよね。人間関係もいい関係ばかりじゃなくて、悪い関係もありますよね。いろんな人とコミュニケーションする中で、いい関係とか悪い関係ってわかってくるじゃないですか。そういう経験を若いうちに積んでほしい。
 
子育てという面でいえば、私は子どもたちに肯定的な言葉を使うようにしてるんです。「可愛い」とか「よくできたね」とか。バカ親って言われてるんですけど(笑)。肯定的な言葉を使うと、自分で自分のことを認める力が育まれて、他の人をちゃんと認められるようになるんです。たまに「ばかやろう」って言っちゃうこともあるんですけど(笑)。子どもの自尊心を育てたいという思いがあります。
 
柴田
なるほど。今日は楽しい話をありがとうございました。
 
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今回の対談の後編では、清掃代行業を立ち上げ、拡大してきた岩崎さんの将来の展望と、ビジネスを支える岩崎さんの仕事観や生き方、若い世代に向けてのメッセージについてお話を伺いました。人とのコミュニケーションの中から市場のニーズを直感的に感じ取り、いち早くビジネスにつなげる岩崎さんのしなやかな感性と決断力が印象に残りました。子どもたちの未来を見据え、「子どもに家事を教えるサービスを展開したい」という岩崎さん。これからの事業展開が楽しみですね。
 
あなたにとってはどんな話が胸に残りましたか? この記事から、これからの時代を生きるヒントが見つかれば幸いです。
 
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