はじめに
2017年5月17日、金融商品取引法の改正案が成立しました。今回の改正では、1秒間に何千回もの株式売買を繰り返す高速取引を規制する3つの柱が盛り込まれています。
今日は、そもそも金融商品取引法とは何か、そして株の高速取引について解説していきたいと思います。
金融商品取引法の概要
金融商品取引法とは何か
金融商品取引法は、金融商品や金融サービスを利用する投資家を保護することを目的に作られた法律です。略して金商法とも呼ばれています。
元々、金融商品に対しては先物取引法、証券取引法、銀行法など個別の法律がありました。しかし、次々と新しい金融商品が生まれる中で個別では対応が難しくなり、包括的な法律を作ることになったのです。
金融商品取引法の四つの柱
金融庁はこの法整備の具体的な柱として以下の四つをあげています。
- 投資性の強い金融商品に対する横断的な投資者保護規制の構築
有価証券の範囲を拡大したことや、金融商品の販売や勧誘の際に、虚偽情報を提供しないことや、善管注意義務を負うことを定めています。
- 開示制度の拡充
投資家にとって有用な情報を提供するために、上場会社などの財務情報の開示を充実化させました。四半期報告書の開示も金商法によって義務化されました。
- 取引所の自主規制機能の強化
証券取引所自体が適切な業務を行うこと、自主規制委員会を設置することを定めています。
- 不公正取引等への厳正な対応
インサイダー取引や虚偽記載などの不正に対する罰則の強化。
(出典:金融庁ホームページ)
[http://www.fsa.go.jp/policy/kinyusyohin/]
株の高速取引とは
株の高速取引に関する新規制
以下は、今回の金商法改正で新たに盛り込まれた、株の高速取引に関する規制の三本柱です。
- 高速取引をする投資家の登録制
- 高速取引をする投資家への取引記録の作成と保存の義務付け
- 証券会社や取引所への規制
(出典:日本経済新聞2017年5月29日電子版「株の高速取引 規制の3本柱」)
[http://www.nikkei.com/article/DGKKZO16893800W7A520C1TCJ000/]
株の高速取引とは何か
そもそも株の高速取引とは、高性能のコンピュータとアルゴリズムによって1000分の1から100万分の1秒単位で株の注文やキャンセルを繰り返すことです。HFT(ハイ・フリークエンシー・トレード)とも言われ、日本の株の売買高は全体の7割がこのHFTによる取引とも言われています。
株の高速取引が起こす問題
HFTにより、特別な事象が起きなくても株価が急変動するケースもあり、通常の投資家が思うような価格で株を売買できないという状況になることもありました。
以前は、誰がこのような高速取引を行っているのかが分からない状態でしたが、登録制を設けることによって今後その実態が見えるようになりそうです。
金融商品取引法と株の高速取引のまとめ、貯蓄から投資へ
日本でもNISA制度の設立移行、政府主導で貯蓄から投資への動きが広がっています。しかし、2008年のリーマンショックが示したように、金融商品には大きなリスクが潜んでいることを忘れてはいけません。
金融商品取引法は、投資者が最低限の保護を受けるために存在していますが、裏を返せば法律で守られている部分以外は全て自己責任ということです。
投資が貯蓄のように当たり前となれば、投資に対する知識は不可欠になるでしょう。日本でもアメリカのように、金融教育が当たり前の時代が来るのでしょうか。
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
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