IPOの重要論点 ストックオプションとは?

はじめに

2017年5月31日の日本経済新聞朝刊で、役員報酬として自社株式を活用する上場企業が増えているとの記事が掲載されていました。いわゆるストックオプションですね。
 
今日は、IPOの際の論点にもなるストックオプションについて解説していきます。
 

ストックオプションとは

ストックオプションとは、会社が役員や従業員に対するインセンティブとして与える「自社株の購入権」です。ストックオプションを持っていると、会社の株式をあらかじめ決められた一定の価額(権利行使価額)で将来購入することができます。
 
例えば、今の株価が300円である時に権利行使価額500円のストックオプションを与えられたとしましょう。500円出せば自社の株を買うことができますが、今買ってしまうと株価は300円ですので200円損をしてしまいます。
 
しかし、もし今後会社の業績が拡大して株価が800円になったとしましょう。このときストックオプションを行使すると、800円の株を500円で買うことができ、300円の利益が生まれます。
 
このように、ストックオプションは株価と連動してその価値が高まるため、与えられた人は会社に対する貢献意欲が高まると考えられています。既に上場して株式を公開しているだけでなく、新規上場(IPO)を目指すベンチャー企業等でもストックオプション制度は導入されています。
 

ストックオプションへの課税

ストックオプションの発行の際に注意が必要なのが、税制適格要件です。株式を売却した時に得られる利益は譲渡所得として課税されますが、ストックオプションの場合はそれだけではなく、権利行使をしたタイミングで株価が権利行使価額を上回る分だけ給与所得として課税されることがあります。
 
このうち権利行使時の給与所得にかかる課税を、売却時の譲渡所得への課税に繰り延べることができるのが、税制適格型ストックオプションと呼ばれるものです。
 
税制適格要件を満たすには下記の条件が必要です。
 
・その会社の取締役、従業員であること
・付与決議から2年~10年の間に権利行使をすること
・権利行使価額が年間1,200万円を超えないこと
・無償発行で譲渡が禁止されていること
 

ストックオプションの種類

税制適格型以外にも、ストックオプションには様々な種類があります。中でも代表的なスキームが、株式報酬型ストックオプションと有償ストックオプションです。
 

  • 株式報酬型ストックオプション

通常のストックオプションであれば、権利行使価額は付与時の株価の時価を上回るように設定されますが、株式報酬型ストックオプションでは権利行使価額が1円に設定されます。
 
よって、株式と同等の価値を実質的に得ることができます。株式報酬型ストックオプションは、近年株主から批判が多い役員退職慰労金の代わりに導入する企業が増えています。
 

  • 有償ストックオプション

通常のストックオプションは、報酬として無償で付与されるのが一般的ですが、有償ストックオプションはその名の通り、付与者は金銭を払い込むことによりストックオプションを購入します。
 
無償のストックオプションは、取締役に付与する場合は役員報酬になるので株主総会での決議が必要ですが、有償の場合は取締役会の決議のみで付与することができます。
 

ストックオプションのまとめ

以上、ストックオプションの概要から課税、種類についてざっくりと見てきました。特にIPOの局面では重要な論点になってくるのでしっかり押さえておきましょう。
 
 
 
 
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
 

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