『花』で社会貢献を志す28歳の女性経営者、株式会社LORANS. 福寿満希氏の今後の挑戦

今回は、株式会社LORANS. 代表の福寿満希氏にお話を伺いました。株式会社LORANS.は花を中心としたビジネスを展開されており、従業員の75%が障がいを持った方たちで構成されています。そのLORANS.を率いるのが、28歳の女性経営者福寿満希氏。彼女は23歳の時に起業し、会社は現在6期目。なぜ福寿氏は、花に関するビジネスを始めたのか? 障がい者雇用を始めたきっかけは? 経営者として大事にしている考え方は? そして今後の挑戦についてもじっくりお話を伺いました。
 
以下
福寿:株式会社LORANS. 代表取締役 福寿 満希
柴田:株式会社mannaka 代表取締役 柴田 雄平
 

一生もののスキルを磨き続けるカッコイイ生き方を目指して

柴田
LORANS.の事業内容について教えてください。
 
福寿
はい、私たちの事業は店頭販売や法人ギフトを対応させて頂いているお花屋さんです。会社の特徴としては従業員の75%が障がいと向き合うスタッフでお花屋さんを運営しているというところです。売上の大半が障がい者雇用にも繋がっているということから、企業のCSR活動のお手伝いをさせてもらったり、企業の花の贈り物を通じて、社会活動に参加していけるという価値を提供しています。業務は多岐に渡っていて、企業や個人の花の贈り物、イベントやブライダルの制作、葬儀のお花など、花にまつわる色々な業務のご相談を頂きながら、新しいことにトライして業務の幅を広げています。
 
柴田
満希(福寿氏)が事業を始めたきっかけは何ですか?
 
福寿
新卒でスポーツマネジメントの会社にいましたが、2年で転職しました。私は元々、硬式テニスを12年間やっていて全国大会も経験させて頂いたり、もともとこの業界を目指していたのですが…。
 
柴田
スーパーアーリーリタイアだね(笑)
 

 
福寿
はい(苦笑) 3年間は勤めようと思っていたんですが、その2年の間に、やりたいことが明確になったんです。なぜお花屋さんを選んだかというと、選手たちのサポートをしていく中で、「一生もののスキルを磨き続ける生き方はカッコイイ」と思うようになったんです。そう思った時に、自分に何かトライできることはないかと思い出したのがお花で、実は私は学生時代にお花のことをちょっと勉強したことがあったんです。
そう思った時からお花のことをもう一度勉強し直しまして、個人で一つ2、3千円のお花の注文を受け始めました。そして、転機となったのが高輪プリンスホテルで行われた展示会に出た時のことで、法人のお客様から花の装飾のご相談を頂いたんです。それが社会人2年目の終わりくらいの時で、その会社様からの後押しもあって飛び出してみようと思ったんです。
 
柴田
それは会社に勤めながら?
 
福寿
そうです、会社に勤めながらです。副業というほどではありませんが、休日に展示会に出展したりしていました。会社には3年以上は勤めようと思っていたのですが、自分がやりたいことに気づいた時に先輩の経営者から「石の上にも三年とは言うけれど、3年待たずに石から降りることも選択の1つ。より早く次のキャリアを先取りすることもできる。」ということを言われ、背中を押されるようにして自分の事業をスタートさせました。それで法人化させたのが23歳の終わりくらいです。なので、今、会社は6年目になります。
 

 

教育現場に出るよりも、出口である就職先を作る方が大事だと感じた学生時代

柴田
障がいのある人たちと働くようになったのはどういったきっかけがあったんですか?
 
福寿
私は3年間、店舗を持たないオンライン販売のみのお花屋さんをしていたのですが、3期目の時に、障がい者施設にお花のレッスンに行ったことがあり、その時のことが大きなきっかけとなりました。私は学生時代に、特別支援学校の教員免許取得に向けて学んで、その時に感じた社会課題があったことを思い出したんです。それは、「障がいがある子どもたちの卒業後の就職先がない」ということでした。
学生時代に自分の将来のことを考えた時、自分が先生になるという選択肢もあったんですが、教育実習に行った時に教育機関が想像以上に充実していることを知ったのです。普通の学校は40〜50人の生徒に対して1人の先生がついていますが、特別支援学校では4〜5人の生徒に対して1人の先生がついていて、思ったより充実をしていたので、「自分は将来、先生になって教育現場に出るよりも、出口である就職先を作ってあげる方が大事そうだな」と感じたんです。しかし、その術は分からないまま社会人になったのですが、障がい者施設に行った時に、皆さんがとても器用で、すごく一生懸命作業に打ち込んでいるのを見ました。この時、「もしかして、障がいと向き合う人と一緒にお花の仕事ができるんじゃないか」と思ったんです。これが、お花と障がい者雇用がリンクしたタイミングです。そこから障がいと向き合う人たちと、お花屋さん運営をしていくためにはどうしたらいいのかということを考えて、今の形になりました。
 

LORANS.が運営するローランズショップ原宿店

お花屋さんの隣にカフェが併設されています

 

障がいがあるからという考え方はない。多様である、ただそれだけだという考え

柴田
なるほど。LORANS.の社内の雰囲気とか、男女の比率はどうですか?
 
福寿
まず、男女の比率については女性が8割です。それはLORANS.だから、というよりもお花屋さんだからというのが強いかもしれないです。店舗だと、やっぱり女性の方が多くて、フラワーイベントとかの現場仕事になってくると男性の比率が高いですね。社内の雰囲気としては割とゆったりめですが、責任者になる人は体育会系が多いですね。
 
柴田
障がい者の人たちは店舗スタッフにもなるんですか?
 
福寿
はい。私たちは、花屋チーム、カフェチーム、Webチーム、経営戦略チームという具合にチーム分けがされていて、その中では障がいと向き合うメンバーもリーダーになったりしています。中には、難病と向き合い働く女性の方で、経営戦略を練って活躍されている方もいます。
そもそも私たちには”障がい者である”という考え方があまりなくて、ただ多様であるということだけだと思っているんです。誰でも苦手なことがあるように、障がいと向き合うメンバーにも苦手なことがあって、その苦手な部分のふり幅がたまたま今の社会で生きるには不便さが大きいので、”障がい者”という位置づけになっているだけなのではないかと。なので、その不便さを持った中で、どう工夫して社会でやっていくか、働き続けていくのかということをディスカッションしながら、仕事にあたっています。
 

 

配慮はするけど優遇はしない。皆対等であるから

柴田
経営者として、障がいのある人たちと働くことであったり、自分が大切にしていること、気遣っていることはありますか?
 
福寿
働く上では皆役割は違えど対等であるということですね。だから討論をすることがよくあります。障がいや働き方に対する考え方も人それぞれという中で、1つにまとまっていかないといけない時に、LORANS.としてはどういう考え方で皆の持つ多様性と向き合っていくかなど、そういう話し合いはよくしますね。
 
柴田
LORANS.の文化を象徴する言葉はありますか?
 
福寿
最近、キーワードになっているのは、先程もお伝えした「対等である」ということです。それを障がいと向き合い働く皆には目指してほしいし、障がいを理由に「やれません」と言ってほしくない。大切なのはその個々の壁をどう乗り越えて、工夫して働くのか。私たちも障がいがあるからといって優遇はしません。配慮はするけど優遇はしない、ですね。そうじゃないと、「働く幸せ」を共有できないと思うのです。
 

覚悟がないなら経営者を目指すべきではない

柴田
これから経営者を目指す若い人たちに伝えたい言葉はありますか?
 
福寿
「覚悟がないならやめた方がいい」と伝えたいですね。女性で事業をやりたいという方からの相談を受けることがありますが、「なんとなく誰か助けてくれるから大丈夫だろう」という匂いがする時があるんですよね。
 

 
柴田
匂いがするんだ(笑)
 
福寿
しますね(笑) それは質問をするときの姿勢とかで分かると思います。本気な人というのは、やっぱりいろいろなことを調べてくるし、誰かの時間の大事さを分かっていると思うんです。既にホームページに書いてあることとかを質問する、しないなど、姿勢によって、その人の本気度が分かるんです。採用面接とかでも一緒かもしれないんですけど、全然下調べもなく、何を質問したいか分からないで来る場合に、残念な気持ちになることがあります。逆に少しでも調べたりして来てくれたら嬉しいなと思いますね。
 

 
柴田
何を質問したいか分からないのに会いに行くなんて怖くてできないね。俺はあんまりそういう人とは会わないようにしているし、起業準備中という人に対して一番最初にする質問は決めていて、「いつどこで誰と何をやるのか?」ということを聞くようにしてる。
 
福寿
一生起業準備中だろうなっていう人はやっぱり匂いますよね。(苦笑)
 

若手の人たちへ伝えたいこと。「多様であるということを力に変える素晴らしさ」

柴田
経営者という括りではなく、若手のメンバーに対して期待していることはありますか?
 
福寿
多様であるということを力に変えることって、素敵なことなんだともっと共有していきたいなと思います。他人と違うからダメなのではなくて、違いがあることって唯一無二で素晴らしいことだと知って欲しいんです。例えば世の中で、自分で事業をしている人たちって、何か人並み外れたものがあるんだと私は思っています。アインシュタインもアスペルガーだったと言われていますし、他にも、歴史に名を残す人々が、障がいを持っていたという話を聞いたことがあります。
過去、一つのことに打ち込んで極めることができることが「天才だ」と言われていたり、ある時代は知的障がいの方が、神様の生まれ変わりだと言われたりもしていたんです。でも今は「障がい」だと言われることも多く、その時その時によって障がいのあり方って変わってくるんだなと。そう考えると実は、誰もが障がい者であり、誰もが障がい者ではないという考え方をすることもできるのだと思います。
そういった違いを強みに変えられているのが、例えば経営者とか表現者とか。走れないことをどう強みに変えていくのかとか、じっとしていられないことをどう強みに変えていくのかとか。そういう一見”○○できない”とされることを、ネガティブに捉えるんじゃなくて、どう工夫して前に進むのかということを考えていけたら素敵なのかなと思います。
 
柴田
同感。俺も、障がいって言葉自体が良くないと思っていて、満希の言うように、俺もある意味障がいを持っていながらも、自分が経営者として事業をしているなって思うし。それを補ってくれるのが社員であり、チームのメンバーだと思っているので、そういう意味では、みんな強み弱みを持っていてそれを補いあって成果を出すのがチームかなと思ってる。誰かの強みが誰かの弱みを補っているからチームとして成り立っている、みたいな状態でいられるといいな。
 

 

28歳の女性経営者、福寿満希が今後挑戦していくこと

柴田
最後に、満希がこれから会社として、もしくは個人として挑戦したいことを教えてください。
 
福寿
私は将来、教育機関を作りたいと思っています。 今は障がいと向き合うメンバーと働いていますが、先ほど言ったように、「多様を力に変えていく」「対等に働く」ということが、まだまだ仕事をする上で課題をクリアできていません。例えば、プライベートで何かがあった時に、それが影響して仕事を休んでしまうだとか。本当に障がいの部分もあると思うけれど、甘えが出てしまっている場合もあると思うんです。線引きをするのが難しいところもありますが、社会人としてやっていくのに障がいを言い訳にするのはよくないし、そういったことを続けてしまうと、愛されるチャンスを逃してしまうと思うんです。
あまり障がいに関わりのない方からすると、全てが甘えにしか見えなかったりどうしてもしてしまうんですよね。「心の体調が悪くて家から出れません」みたいなことって、普通だとなかなか通用しない。でもLORANS.ではそういうことが社内で起こり受け入れてしまうこともあるので、どうしたらいいかを日々考えてはいるんですけど、時々限界を感じてしまう時もあります。
こういう現状から、障がいを持った方が社会人になる前から「障がいと向き合って働くとはどういうことか」とか、「職場で愛されて働き続けるためにはどうしたらいいか」というベースの考え方や心を身に付けて、社会に出ることができたらもっと良いのでは、と思うようになったんです。だから、「障がいと向き合うメンバーが愛されて働き続ける、につながる教育機関をいつか作りたい」と思っています。
 
柴田
今日はありがとうございました。
 
福寿
こちらこそありがとうございました。
 
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今回は、株式会社LORANS. 代表の福寿満希氏にお話を伺いました。花の事業を始めたきっかけ、なぜこの事業と障がい者雇用と繋がったのか、そして、若い人たちへのメッセージと福寿氏自身の今後の挑戦など、たくさんのお話を聞くことができました。障がいがある方と一緒に働いている彼女だからこその障がいに対する考えは、とてもハッとさせられる部分がありましたね。そして、多様であることを強みに変えるということや、覚悟を持つということなど、若手に対してのメッセージは多くの気づきを与えてくれました。この記事を読んだあなたにとっても、今後の人生を生きるヒントが見つかれば幸いです。
 
▶︎株式会社LORANS.
FLORA[花の女神]×HUMAN[人]×S[複数]
「生誕の時」、「新たな門出を祝う時」、「感謝を伝える時」花は人生のあらゆる節目で登場し、大切な時を彩ります。お届けした花たちにより、まるで花の女神が微笑んでいるようなそんな幸せな一時を過ごす一助となれば幸いです。
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