訪問介護に強み 介護医療のニチイ学館、企業内保育所に参入

ニチイ学館、保育所需要に対応

今回は株式会社ニチイ学館(以下、ニチイ学館)を見ていきます。
 
平成29年2月17日にニチイ学館が日本生命保険相互会社と「企業主導型保育事業」で提携したことを発表してから、ニチイ学館において、保育事業が基幹事業の一つとして存在感を増してきています。
 
ニチイ学館は介護部門と医療関連部門が主軸ですが、企業が主に従業員の福利厚生のために設ける「企業主導型保育所」は今後「仕事と育児の両立」の観点から重要性を増すでしょう。
 
企業主導型保育所といえば、平成28年11月1日に資生堂が、保育園などの運営で最大手であるJPホールディングスと事業所内保育所の運営受託を事業の柱とした合弁会社を設立することを発表しています。
 
やはりここでも、保育所の不足という観点から、女性の職場復帰が遅れるなどといったことのないよう、また、男女が「仕事と育児の両立」を達成しやすいような、働きやすい環境づくりを目的としています。日本経済界全体として、今後もこの動きが強まるでしょう。
 

ニチイ学館の沿革

昭和43年12月
創業 現代表取締役会長兼社長が医療事務受託事業を開始
 
昭和48年8月
設立(前身 株式会社保育総合学院)
 
昭和50年8月
株式会社保育総合学院を株式会社ニチイ学館に商号変更
 
平成11年3月
東京証券取引所市場第2部上場
 
平成14年9月
東京証券取引所市場第1部上場
 
(出典:ニチイ学館ホームページ
 

ニチイ学館の事業

ニチイ学館の5事業

ニチイ学館の部門は主に以下の5つからなっています。
 

  • 医療関連部門
  • 介護部門
  • ヘルスケア部門
  • 教育部門
  • 保育部門

 
ニチイ学館は、売上高ベースで介護部門医療関連部門約90%を占めています。
 

ニチイ学館、訪問介護で他社と差別化

ニチイ学館といえば医療関連部門と同様に、介護事業が主力の一つとなっていますが、これには他社とは違うサービスがあります。それが効果的に働く反面、ハンデとなる事例も出てきているようです。
 
一つに、他社は老人ホームの施設利用やデイサービスといった通所型のサービスが主なのに対して、ニチイ学館は訪問介護を主力としています。この点におけるハンデとは、人材不足です。一人で顧客の元へ訪問するスタイルでは新人を雇いづらく、熟練者を必要とします。
 
二つ目に、ニチイ学館は自社の教育事業における受講者をそのまま供給元としているそうですが、その受講生が減少しているそうです。
 
ニチイ学館は、この二点の課題解決が早急に求められています。
 

ニチイ学館の業績


Table ニチイ学館の損益計算書
決算短信より作成)
 
ご覧の通り、ニチイ学館の売上高は堅調に増加しています。
 
しかしながら、ニチイ学館の29年3月期の営業利益、経常利益は、ともに27年3月期に比べ減少していますが、その理由は28年3月期の損失にあります。
 
ニチイ学館の28年3月期の損失の内容を見ていくと、営業利益については、「厚生労働省の介護報酬改定によるサービス単価の引き下げ」「利用者数の減少」「教育事業(語学事業)・中国事業の戦略投資」に起因しています。
 
経常利益については、「固定資産の減損損失計上」「その他、関連会社等への投融資に対する評価損・引当等の計上」の2点に起因しています。固定資産の減損理由は、「介護事業や語学事業、セラピー事業等、新規事業の収益化の遅れ」によるものです。
 

ニチイ学館、介護人材不足の解消が課題

ニチイ学館の事業は、国の方針や制度等の変更により大きく影響を受けるため、収益力の安定化が課題となっています。
 
また、ニチイ学館だけでなく、介護業界においての課題はやはり人材不足です。
 
ニチイ学館の寺田明彦会長兼社長は人材再配置の必要性を強調すると共に、処遇の改善も進め、離職防止を狙っているようです。
 
また、高齢化が進んでいるため、事業としての需要は伸びる一方、人材の確保が難しいというジレンマがあります。ニチイ学館がこの課題にどう対処していくか注目です。
 
 
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
 

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