「ドライアイ確定」患者が3割増加、ドライアイ治療の適応拡大へ

順天堂大学医学部附属順天堂医院眼科の村上晶 教授、猪俣武範 助教らの研究グループが2016年のドライアイ診断基準の改定を受け、旧ドライアイ診断基準と新ドライアイ診断基準(※1)におけるドライアイ患者の分布について調査を行い、その結果が発表されました。
 
新診断基準によって、旧診断基準では「ドライアイ疑い」と診断されていた患者の8割が「ドライアイ確定」と診断され、ドライアイ確定患者数は33%も増加するそうです。
 
さらに、新診断基準によるドライアイ確定例の中で、涙液層破壊時間短縮タイプ(※2)のドライアイは、38%を占めるということも今回の調査結果でわかりました。これまでドライアイと診断されていなかった患者が「ドライアイ確定」と診断されることで、より多くの患者に治療できること明らかになっています。
 
(※1)旧ドライアイ診断基準と新ドライアイ診断基準:下記の表は新旧ドライアイ診断基準の抜粋である。2016年に改訂された新基準では涙液層破壊時間5秒以下が採用された。
 
(※2):涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ:
ドライアイの自覚症状を有するが、涙液層破壊時間(目を開いてから目の表面の涙の膜が破壊されるまでの時間)が短く、涙液分泌や角結膜上皮はほぼ正常なもの。

 
 

調査の背景

ドライアイは日本に2,000万人、世界に10億人以上いると推測される最も多い眼疾患です。
ドライアイの原因として、加齢、ストレス、デジタル機器の使用時間の増加などが考えられ、ドライアイは現代病として今後も増加すると考えられています。ドライアイに罹患すると、眼精疲労、眼痛、表在性角膜上皮障害、頭痛、自覚視力の低下などQuality of Life (QOL)や業務の生産性を下げることが明らかになっています。しかしながら、未だにドライアイ確定の診断に至っておらず、QOLや生産性を低下させてしまっている人が多くいることが現状です。
 
一方、これまでの研究から、旧診断基準ではドライアイ確定と診断されていなかった涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイは、その発症に涙液層の安定性の低下が密接に関連し、ドライアイの多くを占めることが明らかになってきました。そのため、ドライアイの定義及び診断基準を見直す必要が生じ、2016年の改定に至りました。これを受けて、本研究では新診断基準におけるドライアイ患者の分布の変化及び涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイの分布を調査しました。
 
 

調査の内容

順天堂大学医学部附属順天堂医院眼科の村上晶 教授、猪俣武範 助教らの研究グループは、新ドライアイ診断基準におけるドライアイ患者の分布を明らかにする目的で、2015年11月から2017年4月に順天堂医院眼科外来を受診した患者(250例)を対象に、ドライアイ旧診断基準と新診断基準におけるドライアイ患者の分布の変化の調査を行いました。
 
旧診断基準では、ドライアイ確定38.8%、ドライアイ疑い35.6%、非ドライアイ25.6%であったのに対し、新診断基準では、ドライアイ確定66.8%、非ドライアイ31.2%でした。旧診断基準における「ドライアイ疑い」の79.8%は新診断基準において「ドライアイ確定」に割り振られました。新診断基準において、ドライアイ確定患者は33%増加し、そのうち38.3%に「涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ」を認めました。
 
以上、本研究結果から旧ドライアイ診断基準における「ドライアイ疑い」の患者の79.8%が新ドライアイ診断基準では「ドライアイ確定」診断となり、ドライアイ確定患者は33%増加し、その38.3%に「涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ」が含まれることが明らかになりました。
 
 

調査結果のポイント

  • 旧ドライアイ診断基準における「ドライアイ疑い」患者80%が新ドライアイ診断基準で「ドライアイ確定」診断となった
  • ドライアイ確定患者は33%増となった
  • 「涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ」はドライアイ確定例の38%を占めた
  • ドライアイ確定と診断されていなかった「涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ患者」の治療が可能になった


 
 

今後の展開

ドライアイの治療では、涙液層の安定性を低下させている眼表面の不足成分をみつけ、点眼によって成分を補充する必要があります。本研究結果から、「涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ」が新診断基準では「ドライアイ確定」として、その多くを占めることが明らかになったことで、「涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ」における涙液の安定性の改善に着目した治療ができると考えます。
 
なお、ドライアイは多因子疾患であり、様々な検査が行われることから、これまで世界で診断方法は統一されていませんでした。しかし、2016年のドライアイの診断基準の改定は、日本のみにとどまらず、アジア諸国に合意を得たことから、アジア諸国でもこの診断基準の導入が予想されます。これにより、普遍的な臨床研究をアジアで行うことが可能となり、より一層ドライアイ治療の進歩が予想されます。
 
 

論文・参考情報

▼論文
論文タイトル:Changes in Distribution of Dry Eye Disease by the New 2016 Diagnostic Criteria from the Asia Dry Eye Society.
日本語訳:アジアドライアイ社会からの新しい2016診断基準によるドライアイ疾患の分布の変化
著者:Takenori Inomata 1),2), Tina Shiang 3), Masao Iwagami 4), Fumika Sakemi 1), Keiichi Fujimoto 1),Yuichi Okumura 1), Mizu Ohno 1) & Akira Murakami 1)(日本語著者表記: 猪俣 武範、Tina Shiang、岩上 将夫、酒見 郁圭、藤本 圭一、奥村 雄一、大野 瑞、村上 晶)
著者所属: 1) 順天堂大学医学部眼科学教室、2)順天堂大学医学部戦略的手術室改善マネジメント講座、
3) Orange Park Medical Center, Jacksonville, FL, US、 4) London School of Hygiene and Tropical Medicine, Department of Non-Communicable Disease Epidemiology, London, UK.
掲載誌: Scientific Reports
DOI: 10.1038 / s41598-018-19775-3
 
▼ドライアイに関する参考情報
「世界初! スマホアプリでドライアイ指数をチェック~順天堂大学眼科×iPhoneでドライアイのビッグデータ解析~」(順天堂大学ホームページ 2016年11月2日)
http://www.juntendo.ac.jp/news/20161102-01.html
「ドライアイアプリ「ドライアイリズム」の米国版をリリース」(順天堂大学ホームページ 2017年11月22日)
http://www.juntendo.ac.jp/news/20171122-01.html
 
出典元