コカ・コーラ 東西ボトラー統合の背景にサントリーの影

2016年9月30日、コカ・コーラウエスト(以下CCW)とコカ・コーライーストジャパン(以下CCEJ)が来年4月に経営統合することが正式に発表されました。新社名は「コカ・コーラボトラーズジャパン(以下CCBJI)」。売上高1兆円の世界第3位のコカ・コーラボトラーとなる見通しです。10/1(土)の日本経済新聞朝刊でも取り上げられており、これからの清涼飲料業界を俯瞰するにあたって押さえておきたい話題の1つですね。今回は、この東西統合の背景について探っていきたいと思います。

 

コカ・コーラビジネスの仕組み

経営統合の背景を理解するためには、まずコカ・コーラビジネスの仕組みを把握しておく必要があります。

 

 

一般消費者にとっては、コカ・コーラと聞いて真っ先に思い浮かぶのは米コカ・コーラか、その日本法人「日本コカ・コーラ」かもしれません。しかし、日本コカ・コーラは私たちの手元に届く製品の製造・販売は行っていません。日本コカ・コーラが行うのは原液の供給やマーケティング活動で、フランチャイズ契約を結んだCCWやCCEJなどのボトラーと言われる会社が製造・販売事業を行っています。

 

かつては17社存在した日本国内のボトラーですが、1999年以来統合が進み現在残っているのは6社。中でも、CCEJは関東・東海・南東北地方、CCWは近畿・山陽・四国・九州地方と広範囲にわたって統括しています。経営統合の実現後は、国内コカ・コーラブランド製品のシェアの86%を占めることになります。

 

原液ビジネスのデメリット

一見するとこの東西統合は前向きな施策のように感じられますが、統合が進む背景にはコカ・コーラの原液ビジネスの限界が見られます。コカ・コーラ特有の原液ビジネスは、広い地域にコカ・コーラブランドを展開するには非常に効率のいい手法でした。しかし、成熟市場と化した日本では今、他の飲料メーカーには見られないデメリットが現れてしまっているのです。

 

それは、原液供給サイドとボトラーの利害関係の齟齬です。原液供給サイドにとっては、とにかくボトラーに量を売ることが利益拡大につながりますが、ボトラーはその分在庫を消費するために販売量を増やさなければならないため、値下げのための費用がかさんでしまいます。

 

これまで日本では、日本コカ・コーラがボトラーに対して値下げ費用を賄う販売奨励金を支払ってきました。しかし、それでも価格競争に巻き込まれ、シェアが奪われていく現状が続いています。そこには、清涼飲料業界のトップを目指すサントリー食品インターナショナルの影がありました。

 

コカ・コーラを追うサントリーの影

サントリー食品インターナショナル(以下、サントリー)。コカ・コーラグループに次いで国内販売シェア2位の飲料メーカーで、BOSSや伊右衛門、PEPSIなどを手がけています。

 

2015年12月期の業績を見てみましょう。

 

 

CCWとCCEJは両社併せて、売上高1,003,638百万円、営業利益26,164百万円で営業利益率は2.6%。一方、サントリーは売上高806,937百万円、営業利益46,739百万円で営業利益率5.8%。サントリーは、売上高こそCCWとCCEJ合算のシェアに届かないものの、営業利益率は両社を大きく上回っています。

 

さらに、サントリーは2015年に日本たばこ産業(JT)の自販機事業を買収したことで国内の自販機設置台数を63万台に拡大。コカ・コーラグループの83万台に大きく近づきました。コカ・コーラの首位の座は、もうすでに脅かされ始めているのです。

 

東西統合の果てに

ボトラーが統合すれば、製造や物流の設備が効率化され大幅なコスト削減になります。東西統合が完了すれば、次は北海道・みちのく・北陸・沖縄のボトラーの吸収も実現するかもしれません。

 

日本におけるボトラー統合は、米コカ・コーラの思惑とも言われています。

 

日本コカ・コーラの親会社である米コカ・コーラ。その筆頭株主は「バークーシャー・ハサウェイ」という投資会社です。米国は特に株主利益を重視することが知られていますが、米コカ・コーラにはその特徴が顕著にあらわれています。2015年12月期は、減益にもかかわらず1株あたり0.7ドルの増配を行いました。

 

米コカ・コーラは毎年利益の創出に追われており、コスト削減の一環として乱立する日本のボトラーの統合を進め始めたのです。さらに、統合の際に出資を行うことで日本国内のコカ・コーラ市場を直接管理する体制に移行することが考えられます。

 

今後も、コカ・コーラとサントリーの攻防に目が離せません。

 

 

編集者:株式会社mannaka

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