キャッシュレス「後進国」に焦り。広がらない理由と今後の対策

2020年の東京オリンピック開催まであと2年です。
この時には、訪日客が一気に増えることが予想されますが、今もなおクレジットカードや電子マネーなどで支払うキャッシュレス決済が日本では広がりをみせません。主要国では非現金決済の比率が50%を超える中、未だ日本では20%にとどまります。
政府はカードの利用が多い訪日客の購買機会を逃したり、利便性を損ねたりしかねないことを懸念しており、焦る経済産業省内では「現金主義」からの転換に向け、税優遇や補助金を創設する案が浮かんでいます。
 
経産省はキャッシュレス決済普及策のとりまとめに向け、5月にも金融機関やカード会社、コンビニといった小売業、有識者を招いた産官学の協議会をつくるようです。

キャッシュレス決済20%どまり。目標は40%

日本は、国際比較ができる2015年の時点で現金を使わない決済の比率は18%。韓国(89%)の1/4程度で、中国(60%)や英国(55%)などに比べても低いです。2016年でも20%と微増にとどまり、政府が掲げる「27年までに40%」の目標には程遠く、政府内で焦りが強まっています。

現金決済については、輸送費やATMの設置など流通コストが年8兆円との試算もあり、小売店の負担も大きいのが現状です。
野村総合研究所によると、レジで現金の残高を確認する作業にかかる時間は「1店舗あたり1日平均で2時間半」という結果が出ており、人手不足で現場の余裕が失われている中、これは見逃せない負担と言えます。

日本でキャッシュレス決済広がらない理由と訪日客の思い

それでも広がらない理由は大きく2つあります。
 
・消費者に現金の安心感が根強い
・ATM網が張り巡らされており、消費者に利便性の問題があまり生じていない
 
日本で暮らす人々には、キャッシュレス決済を使わない理由よしてこのようなものが挙げられますが、訪日客にはそうは受け取られません。
VISAの調査によると、小売店などで現金しか使えないことに不満をもつ訪日客の割合は約40%。20年に政府目標の訪日客数4000万人を達成した場合、買い物しなくなることなどで1.2兆円の機会損失が発生するとの試算もあります。

キャッシュレス決済を導入しない理由と対策

地方ではカードが使えない小売店なども多く、加盟店の拡大が課題です。
導入に消極的な店では、導入していない理由として、売り上げの一部を手数料としてカード会社に支払うことを挙げています。観光地の小売店などを対象にした経産省の調査でも、42%の店舗が手数料の高さを問題視しています。
 
銀行系カード会社の業界団体、日本クレジットカード協会は「民泊新法で増える若者や海外からの顧客のために地方のキャッシュレス推進施策の立案を」という提言をまとめました。民泊の普及で、カードの利用が多い外国人が地方を訪れる機会が増えると予想しているためです。
 
キャッシュレス決済が80%を超える韓国の事例研究では「協議会では小売店がカード会社に払う手数料の一部を予算措置で補助する案を検討する。」というものがあります。
 
日本では税制面で韓国の事例を研究し、1999年に年間のカード利用額の20%を控除する制度を設け、3年間で利用額が7倍に増えました。類似の所得控除などを議論し、19年度予算の概算要求や税制改正要望に反映させたい考えです。ただ財務省などから公平性などの面で慎重論が出る可能性があり、国がどこまで関与するかも今後議論になりそうです。
 
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