REIT運用でシナジー効果を狙う、星野リゾートの経営戦略とは?

はじめに

軽井沢や沖縄などのリゾート地を中心に宿泊施設を運営してきた株式会社星野リゾート(以下、星野リゾート)。2017年3月9日の日本経済新聞朝刊によると、大阪で同社初のホテルを2022年に開業することを決めたようです。今日はこの星野リゾートについて解説したいと思います。
 

星野リゾートの概要

星野リゾートは1914年に軽井沢で開業した星野温泉を起源とする宿泊施設の運営会社です。現在では、「星のや」「リゾナーレ」「界」の3つのブランドを全国に展開するほか、個性的な宿泊施設や日帰り施設の運営を行っています。
 
「星のや」は圧倒的な非日常感の演出、「リゾナーレ」は洗練されたデザインと豊富なアクティビティの提供、「界」は地域の魅力の追求。それぞれのブランドが別々のコンセプトを掲げ、日本らしいおもてなしを提供しているのです。
 

星野リゾートの経営戦略「所有と運営の分離」

星野リゾートの経営上の特徴は、「所有と運営の分離」を徹底していることです。つまり、土地や旅館などの施設を所有せずに、運営に特化して高品質なサービス提供をしているのです。
 
所有と運営の分離を行う最大のメリットは、借金をしなくてもよいということです。通常、土地や建物などの資産を購入、建設する場合は多額のお金を借り入れる必要があります。バランスシート上の資産も負債も増やさずに済む星野リゾートは、圧倒的な展開スピードで競争優位性を築いてきたというわけです。
 
この経営方針を支えるのが、子会社である株式会社星野リゾート・アセットマネジメントです。同社は、不動産投資信託(以下、REIT)である星野リゾート・リート投資法人の資産運用を行っています。大阪で2022年に開業予定のホテルの土地も、この子会社が取得・所有し、星野リゾート本体が運営を行っていくという形になります。
 

星野リゾート・リートの財務情報

星野リゾート・リート投資法人は観光産業に特化したREITで、先に挙げた星野リゾートの3ブランド「星のや」「リゾナーレ」「界」への投資を主軸としています。2013年7月に上場した当初のポートフォリオは全6物件、資産規模は取得価格ベースで約150億円でしたが、2016年4月期末時点では、全46物件、資産規模約900億円と6倍程になっています。
 
星野リゾート独自のブランドのみならず、外部成長も積極的に推進しており、「チサンイン」や「ANAクラウンプラザホテル」などもポートフォリオに組み込んでいます。
 
当面は資産規模1,000億円を目指していますが、株式会社日本格付研究所によると、資産規模が拡大することで、分散度の上昇によるキャッシュフローの安定や規模の経済によるコスト削減、運用の自由度向上などが見込まれ、REITとしての信用力の向上に資すると考えられています。
 

星野リゾートの今後の展望

所有と運営の分離によるスピード展開により、全国に拠点を持つことに成功した星野リゾート。その経営戦略が軌道に乗りつつある中での、2016年の星のや東京開業や、大阪進出への報道など、最近ではリゾートや地方にとどまらず都市部への展開でインバウンドを狙いっています。
 
したがって今後の発展には、訪日外国人に、星野リゾートならではの日本のおもてなしをいかに味わってもらえるかが重要な要素となってくるでしょう。星野リゾートの動向には当分目が離せません。
 
 
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
 

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