はじめに
2017年3月6日の日本経済新聞朝刊に公正取引委員会が「流通・取引慣行ガイドライン(指針)」を抜本的に見直すという報道がされました。このガイドラインはメーカーと流通業者の関係が独占禁止法に抵触しないよう規制するものですが、これを理解するためには独占禁止法について知っておかなければなりません。
独占禁止法とは何かと問われると、意外と答えられない方が多いと思いますので今一度確認していきましょう。
独占禁止法とは?
独占禁止法の正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。
制定されたのは昭和22年と古くからありましたが、平成に入るまであまり機能していなかったと評価されています。公正取引委員会ホームページによると、独占禁止法の目的は、「公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすること」とあります。
独占禁止法は事業者自らの創意工夫によって、より安くて優れた商品を提供できるとともに、消費者はニーズに合った商品を選択することができ、事業者間の競争によって、消費者の利益が確保されることを保全しています。
以下に、よく目にする項目を挙げます。
独占禁止法の規制内容とは?
独占禁止法の規制内容 「私的独占」とは?
私的独占には二つの形態が存在します。
排除型私的独占
不当な低価格販売などの手段により、競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害することで独占すること
支配型私的独占
株式取得などにより、他の事業者の事業活動に制約を与えることで独占すること
独占禁止法の規制内容 「不当な取引制限」とは?
不当な取引制限に該当する行為も二つあります。
カルテル
事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為
入札談合
国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札に際し、事前に受注事業者や受注金額などを決めてしまう行為
まず始めに覚えておくポイントとしてはこれらが挙げられるでしょう。
独占禁止法の規制内容 その他
その他に「事業者団体の規制」、「合併や株式取得などの企業結合規制」、「独占的状態の規制」、「不公正な取引方法に関する規制」についての項目があります。さらに、独占禁止法の補完法として、下請事業者に対する親事業者の不当な取扱いを規制する「下請法」も存在しています。
公正取引委員会とは?
公正取引委員会の目的とは?
では、ここで、公正取引委員会とはどのような組織でどのような構成となっているのかも確認しておきましょう。
まず、公正取引委員会は独占禁止法を運用するために設置された機関です。
公正取引委員会の構成メンバーは?
委員長と4人の委員の計5名から構成される独立行政委員会となっています。メンバーの構成は法律・経済に関する学識経験の豊富な者のうちから、内閣総理大臣が国会の同意を得て任命します。
公正取引委員会は他行政機関から独立した組織
この組織の特色としては、独立行政委員会として他の機関から指揮監督を受けることなく、独立して職務を行うことです。
ちなみに、事件調査や監視などを行い、公正取引委員会の事務を行っているのが事務総局という組織です。また、国の行政組織上は内閣府の外局として位置づけられています。
「流通・取引慣行ガイドライン見直し」の理由とは? 製品価格の急落に歯止めをかけたいメーカー
では、なぜ今回日経新聞で独占禁止法が登場してきたのかといいますと、製品価格の急落にあるようです。
例えば家電ですと、価格比較サイトというものがありますが、多くの消費者はそれをチェックしていると思われます。現在はあるサイトが値下げを始めれば、他のサイトも追随せざるを得ない状況にあり、その結果、製品価格の急落が進みます。日経新聞によりますと、薄型テレビの販売価格は2001年の約4割、ブルーレイ・ディスクレコーダーは2005年の約2割に下落しているとあります。
現在は「流通・取引慣行ガイドライン(指針)」で、メーカーによる販売価格の強制や販売事業者間の商取引への介入を制限していますが、上記の状況に悩むメーカー側は出荷先の選別を認めるよう求めているようです。メーカー側の利益と、消費者側の利益の両立が課題となっています 。
このように独占禁止法は身近であり、その運用方法によって企業の業績が大きく影響されるものですので、ぜひさらに勉強してみてください。
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
財務・会計系コンサルティング会社。
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