前編に引き続き、後編となります。ぜひご覧ください。
以下
下村:株式会社エスネットワークス 下村雄一郎 氏
柴田:株式会社mannaka 柴田雄平
失敗をしてもいいから、新しいことにチャレンジする
柴田
僕らみたいなベンチャー業界だと、アクセラレーションプログラムとか、イノベーションの力が欲しくて、様々な企業が色々と施策をしています。そういうようなことから、僕は大手企業がアイディアを出せるスキルがなくなってきているんじゃないか、と感じています。
20代前半の若者が、これから長い社会生活、ビジネス生活を始めるにあたり、30年40年働く間に、ものすごく多くのことを今の段階から学んでいくことになりますよね。その最初の入口として、どんなことを若者たちは身につけていくべきでしょうか?将来自分の人生の選択肢が増えるとか、開拓していく力が身につくなど、そういった時に必要になるスキルはどんなものだと下村さんは思われますか?
僕は、用意されたレールに乗っていればある程度は進んで行っても、そこから先は多分進まないと思うんです。
下村
僕もよく学生に聞かれるんですよ「あと1年、何したらいいですか」ということを。そんな時に必ず言うんですけど、「したことがないことをしよう」と伝えます。
例えば、「海外旅行に友達と行くのはやめて、ひとりで行ってこい」と伝えています。日本語が通じない、誰にも頼られない世界に一人で行ってみる。時間があることが学生の最大のメリットだと思うので、時間がある内にいろんなことをやってみる。そのいろんなことの内のひとつは、誰にも頼れない状況を、自分で作り出してみること。近場の海外でもどこでもいいから、とにかく日本語が通じない、友達がいないところへひとりで行ってこいと話しますね。
他に、1回もやったことがなくて、友達もいないバイトをやってこいと伝えます。中でも僕がおすすめしたいのは、ビラ配りです。「ビラ配り好き?」と学生に聞くと「嫌い」ってみんな言うんですよね。「何で嫌いなの?」と聞くと、「取ってくれないから」と。「そりゃそうだよね、取ってくれるように渡してないから」って僕は言ってるんです。その自分が思う苦手なことをやってこい、と話しています。僕もそういったことをやったことがあるんです。クライアントと一緒に、いろんな所に訪ねて屋根を売ってたんですよ。
とにかく苦手なことをやって、それを楽しむ。ビラ配りのバイトだったら、チラシをいかにしたらもらってもらえるか工夫してみる。例えば、みんな嫌そうに配るからもらいたくもないと思うんです。丁寧に、ちゃんと相手の目を見て渡すだけでもらってくれる確率高まるよ、というふうに工夫してみてほしいです。
こういう苦手なこととか挑戦したことがないことで、何か成功をしてきて欲しいですね。成功しなくても、失敗でもいいからしてきて欲しいです。若者の特権はチャレンジだと思うんですよね。チャレンジを学生の内に1回でも2回でもしていないと、社会に出てもチャレンジしようがないですよ。だから、チャレンジすることを推奨してますね。
柴田
それは弊社の若いメンバーによく言うことに似てますね。
下村
とにかく若者の特権はチャレンジです。チャレンジして、会社の1年生2年生が失敗したところで、大したことないんです。1年生2年生の失敗は、マネージャーが謝りに行けば大抵済んで、マネージャーの失敗は部長が行けばいいですよね。部長の失敗は、僕ら役員が行けばいいじゃないですか。僕らの失敗は社長が行くしかないんだけど。笑
失敗すると、上司に謝りに行ってもらうしかないんですけど、それくらいで収まるんだよと。なので、とにかく迷ったらやってみろ、迷ってやめるのだけはやめろ、と話します。だから、考えて行動することがまず大事だよと伝えていて、それを推奨しています。
自分を活かすには、失敗を恐れないこと
柴田
なるほど。今の若者たちって、本当にチャレンジする力がないわけではないと思うのですが、チャレンジすることをためらっているという感じです。「これやっちゃったら、こうなっちゃうんじゃないか」みたいなところだけが頭の中で広がっていて、自分たちのポテンシャルを全く活かしきれていないように感じます。
下村
おっしゃる通りです。
柴田
SNSはわかりやすい例だと思います。炎上したらどうしよう、と発信する前に心配している。社会人になったら、そんなの全然関係ないじゃないですか。自分の力でどう開拓していくか、ですね。
僕は、御社は尖ってる会社だと思っていて。若い子たちも現場に多いし、社員数も多くいる。下村さんみたいな役員もいれば、いろんなメンバーがいるじゃないですか。下村さんはビジネス社会から見て、今の若者の優れているところってどういう点だと思いますか?
下村
ポテンシャルはすごくあると思いますね。要はその使い方をわかっていないだけで、人としてのリテラシーは高いんです。なので、この教育を受けたリテラシーを元にもっと羽ばたいて、この知識をもっと活用するだけだと思ってるんです。要はこれを上手に使っていないだけで。使い方がわからない、使ったことがないだけで、人としてものすごくちゃんとしてると思います。
柴田
もうちょっとこの部分を変えたらいいよなと、下村さん自身が若者に対して何か思っていることはありますか?
下村
さっきも言った、失敗を恐れないことだと思うんですよね。でも、そうは言ってもね、若者たちは失敗することを恐れているんでしょうから、どうしたらいいんだろうなって今思ってたんです。
組織を形作るのは、風通しの良いコミュニケーションから
柴田
世の中的なビジネスの話になってしまうんですけど、昔ってピラミッド型組織みたいな会社がすごく多かったじゃないですか。会社自体がヒエラルキーになっていて、多くの社員の上に中間職がいて、その上に管理職がいて、トップがいるみたいなピラミッドの形の組織です。このピラミッドでいうと、トップが右を向けって言ったら全員がいかに速く右を向くかというような、そういう感じだったと思うんです。
現代に新しい文化や会社の組織を作っていくという点を含め、今だからこそエスネットワークスが取り組んでいる会社のあり方は、どのような形なのでしょうか?
下村
ピラミッドはピラミッドなんです。ただ、ピラミッドでも、風通しがいいピラミッドを目指していますね。
僕らエスネットワークスは、まず新年、3月、6月、9月、12月と、年5回全国から東京に集ってきて、飲み会やキックオフを催しています。その他、社員旅行があったり、家族同伴OKのクリスマスパーティがあったり、バーベキューもありますね。あとは月2回の朝8時全員集合会もあります。こういう日々のコミュニケーションを大事にすることによって、風通しをよくしているんです。これをしていなかったら、当面は大丈夫なんですけど、あっという間にコミュニケーションが少なくなって、風通しが悪くなっていくと思うんです。
右向け右って言うほど、僕らは強くはないんですけれども、右だよって言った時に、右にくっついて来てくれるような組織にしたいと思っています。ただ、そこで右だよっていうことに対して、「何で右なんですか?」ということを言える空気にしておきたい。右と言われれば右に行くんですけど、何で右なんですか?というキャッチボールはできるようにしておきたいです。
だから、ヒエラルキーがないわけではないんですけれども、でも、風通しがいいヒエラルキーにしたいなと。そんなことを思って僕らはやっています。
努力し続けられる人は社会に求められる
柴田
PILES GARAGEは元々、20代の力があまりにも弱く、このままいくと、30代、40代になった時にも、活躍できないんじゃないかなという懸念があって、出来上がったWEBメディアなんです。欲しがられる人材であったり、会社の杭になるような人材、というのをすごく求めていまして。別にベンチャーの経営者になれと言う話ではなく、大企業の何かになれという話でもなくて。前編で下村さんが、名刺に会社名も肩書きも書かないで、名前と電話番号だけ書いて営業に行くと言われてましたけど、そういったところを鍛えたいと思っているんです。
要は会社の看板とかを背負わなくなった時に、自分がどういう人間であるべきか、というところ。そういう人材は、どこからでも欲しがられると思うんです。下村さんが考える、欲しがられる人材とはどんな人だと思いますか?
下村
僕の持論がありまして、最初に持っているポテンシャルは、大して差はないと思ってるんです。
学生から「どういう人材を採用したいんですか。例えば、コミュニケーション能力高い人ですか」など聞かれるんですけど、そういうことではないです。
何を求めてるかというと、前編で、面接では今までに挫折したことを必ず聞いているとお話ししましたが、兎にも角にも努力し続けられる人だと思っています。とはいえ、毎日365日、24時間頑張れと、さすがにそこまで求めてはいないです。今月のこの日は早く帰ろうとか、今週は夏休みだから休もうとか、ちょっと疲れたな休もうとかあっていいんですよ。
ただ、1年を通して、「今年も間違いなく頑張ったな」と思えること。それが何年も何年も続いて、今年も間違いなく頑張ったという努力をし続けられる人は、必ずコミュニケーション能力を始め、基礎知識なども全部伸びているはずなんです。こういう人はどこからも求められる人材だと思います。努力することをやめた瞬間に、そこが給与とキャリアの頭打ちだと、僕は思ってるんです。
毎日じゃなくていいから努力し続けられること、何かに頑張り続けられること。それは回り道かもしれないし、真直線かもしれないけど、でも努力していれば前に進んでいるわけですよね。きれいに前に進まなくてもいいけれど、愚直に頑張っている人は絶対社会に求められると思います。何歳になっても素直にね。
変わりゆく社会の中で、自分の偏差値を高める就職活動を
柴田
最近、“はい”と“いいえ”が曖昧な若者たちが多いなって思っていて。自分で決められないから、誰かにお尻を叩いてもらわないといけないような。
そんなこれから10年、20年とキャリアを築いていく若者たちに向けて、社会がどういう人材を求めているか、というようなメッセージをいただけますか。
下村
みんなに言っていることなんですけど、これからの世の中はとにかくAIが発達して、日本に多い中産階級というゾーンの人たちが一番削られると思うんです。つまり年収でいうと、600万から800万くらいの人たち。仮に真ん中で700万だとすると、700万の人と例えば3000万で同じ仕事のできるAIを導入できるとしたら、絶対経営者は3000万のAIを選ぶわけです。4、5年で回収できますから。
そうすると日本だけじゃなく世界が、年収において上に行くか下に行くかしかなくなるのではないかと思います。年収が低い人たちに対して、経営者としてはそこにあえてAIを導入したいとあんまり思わないですよね。年収が高い人たちは、AIじゃ出来ないことができるので、ニーズが高いです。
だから、考えて仕事ができることなのか、安い労働力を提供することなのか、どっちでも生き方は構わないですけど、どっちかしかないよと僕は思っているわけです。でも、大体の人は考えて仕事できる人になりたいわけじゃないですか。だとしたら、今まさに就活を頑張れと、就活生に僕は伝えています。就活が唯一にして、初めて人生で大きな決断をする場だと僕は思ってるんです。
今まで、小中高大学と行って、全部日本や学習塾が決めてくれた偏差値という物差しの中で選択をしてきたわけじゃないですか。就活では、初めて偏差値というものがない、就職というものに出くわすわけです。仮に偏差値が高そうに見えていた大企業だって、あっという間に落ちてしまうわけですよ。だから今、偏差値が高そうに見える企業であろうが、どうなるかわからない社会です。
何が言いたいかというと、会社という偏差値に対して就職先を選ぶべきではない、ということです。自分という偏差値を高めろと言っています。だからこの就活というのは大事なんだよ、と伝えているんですね。人生に唯一にして初めての大きな選択である就活を、本当に真剣に考えて欲しいなと思っています。ここの第1歩を決められない人は、多分人生も決められない人だと僕は思います。この就活が、人生の本当の岐路だよと、ずっと伝えています。
柴田
本当にあと20年くらいで、かなり世界が変わりますよね。僕らもそう思っています。僕らは今ベンチャー企業ですけど、20年後はベンチャーじゃなくなっちゃうかもしれない。
経営者界隈やベンチャー界隈で話してるのは、AIに負けないスキルをどうやって身につけていくかみたいなところです。そういう時に、パッションを伝えられるのは人でしかないと思っています。あとチャレンジですよね。ロボットは自分から壊れにいけないという話を聞いたことがあって、人間は自分から壊れにいけるというようなことを聞いて。そういうことに似てるなと思いました。
今回は、本当にありがとうございました。僕自身すごくためになりました。
下村
ありがとうございました。満足しました、僕。
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これから社会に飛び立つ若者たちに向け、エスネットワークス 下村氏から「チャレンジすること」「失敗を恐れないこと」「努力し続けること」の大切さをお話いただきました。今後、日本だけでなく世界でも”働く”ということが変わりゆく時代において、「考えて働くことを選ぶのか、労働力を提供することを選ぶのか」という叱咤激励のお言葉が印象的でした。そのための大切な一歩である、就職活動をいかに臨むのか。その心構えは、若者だけでなくキャリアを積むビジネスマンにおいても刺さる言葉ではないでしょうか。
前編はこちら
現代社会にみる「欲しがられる人材」とはーエスネットワークス 下村氏 × mannaka 柴田 対談【前編】
▶︎株式会社エスネットワークス
財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
エスネットワークスは、「経営者の視点でニーズを掴み、経営者の視点で課題を解決し続ける、最強パートナー」を実現すべく、成長し続けています。
HP:https://esnet.co.jp/