M&Aのメリットとは? 買い手側と売り手側の目的とは? M&A実務に必須の流れを押さえる

はじめに

2017年4月3日の日本経済新聞に「日本企業の海外M&A、最高の11兆円、16年度」という記事の中でM&Aというキーワードがございました。
 
近年は従来からしばしばあったクロスボーダーM&Aだけでなく、事業承継やノンコア事業のカーブアウトなどを目的としたM&Aも増加しつつあります。また、CFOになればM&Aに関わる機会もきっと出てくることになるでしょう。
 
本日はそんなCFOの必須科目であるM&Aについて解説していきます。
 

M&Aとは?

M&A(エムアンドエー)とは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略です。
 
M&Aの意味は、企業の合併買収のことで、2つ以上の会社が一つになったり(合併)、ある会社が他の会社を買ったりすること(買収)です。M&Aの広義の意味として、企業の合併・買収だけでなく、提携までを含める場合もあります。
 

M&Aのメリットとは?

適切な企業間のM&Aは、譲渡企業・譲受企業の各関係者に大きなメリットをもたらします。
 
「後継者問題の解決」「業界再編に備えた経営基盤の強化」「事業領域の拡大」などの経営者の課題解決の実現にM&Aは有効な手段です。M&Aは企業の「存続と発展」をダイナミックに実現させるための戦略ツールなのです。
 

M&A買い手側の目的とは?

M&A買い手側の目的とは?

M&Aの目的は買い手側と売り手側で異なります。以下の表Tabele 1は買い手側の目的です。
 

Table 1 M&Aにおける買い手側の目的
 

M&A買い手側の目的「規模の経済性」とは?

ここでM&Aの買い手側の目的である、「規模の経済性」「範囲の経済性」の違いについて解説します。
 
「規模の経済性」については、単一製品(事業)の大量生産を行うことで製品一単位当たりの固定費が低下することで原価が下がっていく現象を指しています。
 

M&A買い手側の目的「範囲の経済性」とは?

一方で「範囲の経済性」とは、単一事業において規模が拡大することによる効果ではありません。製品や事業の多様性が増すことにより経済性が高まるのは、何らかの経営資源を共有することで、それを有効に利用できるからであり、これを範囲の経済性と呼びます。
 
たとえば、自社が既存事業において有する販売チャネル、ブランド、固有技術、生産設備などの経営資源やノウハウを複数事業に共用できれば、それだけ経済的ということになります。
 

M&A買い手側の「既存事業」「関連事業」「新規事業」ケース別の目的とは?

上図Table 1を見ると、既存事業の拡大を目的としたM&Aの場合は規模の経済性が発生します。
 
関連事業の拡大を目的としたM&Aの場合は範囲の経済性が発生することが分かります。一般的に、M&Aでは範囲の経済性獲得を目的としたM&Aのほうが、シナジー効果(以下に、シナジー効果について解説した記事を紹介します。)による企業価値の創造は生まれやすいと言われています。

 
一方で新規事業のM&Aになると、事業経営においてリスク分散効果が発生したり、或いは逆にコングロマリットディスカウント(多角化していることによって、個々の事業を別個に営むよりも事業価値の総和が低価していると市場に評価されること)が生まれることになります。
 

M&A売り手側の目的とは?

M&A売り手側の目的とは?

以下はM&Aの売り手側の目的となります。
 

Table 2 M&Aにおける売り手側の目的
 

「カーブアウト」や「事業承継」目的のM&Aが増加

近年は投資ファンドの主導による「ノンコア事業のカーブアウト」や「事業承継」を目的としたM&Aも増加しつつあります。
 
欧米企業では“Cash is king.”という言葉にあるように、コーポレートファイナンスの手法や経営管理技法が発達しています。一方で日本企業は「お客様は神様」という言葉にあるように、マーケットインの発想からの製品改良に余念がありません。
 

外資系投資ファンド、日本企業のM&A市場に注目

そんな背景もあってか、外資系の投資ファンドは、「製品の技術は優秀なのに、コーポレートファイナンスに改善の余地があったり、優秀な経営陣を外部から導入することで企業価値が飛躍的に高まりそうな『のびしろ』のある日本企業」の買収に積極的です。「ノンコア事業のカーブアウト」や「事業承継」はその例です。
 
CFOになると投資ファンドとのお付き合いも増えますので、M&Aの売り手側の目的についてもしっかり学習しましょう。
 

M&Aの流れ

M&Aの流れ

M&Aは以下の図Chart 1の流れに沿って、進めていきます。
 


Chart 1 M&Aの流れ
 
本記事で解説している内容は、上図Chart 1の1~4のフェーズで役に立つ内容になっております。また5の企業価値算定でしばしば利用するDCF法でも、M&A後のシナジー効果を念頭に置きながら財務モデリングをしていくことになるので、それ以降のフェーズでも重要な知識となると思います。
 

M&A実務では効率良いプロジェクトマネジメントが不可欠

また通常M&Aは5名程度のメンバーで進めていきますので、短い期間で多くのタスクをこなす必要があります。その際、上図のような流れを常に念頭に置きながらプロジェクトマネジメントしていくことになるかと思います。
 
CFO志望者は、まずはM&Aの基本的な流れについてしっかり覚えましょう。
 

M&Aのまとめ

以上、M&A戦略の分類や流れについて、解説してきました。一般の書店でもM&Aについて解説している書籍が溢れるようになってきましたが、M&A戦略の立案について詳細に解説している書籍はまだまだ少ないのが現状です。本記事を読んだのをきっかけに、経営戦略分野の関連書籍やM&Aの現実の事例を調べてみるのも良いかと思います。
 
次回は、今回解説できなかった企業価値評価について解説していきます。
 
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
 

財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
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