スタートアップと中小企業、期待される新たなエコシステムの構築とは

産業の“力”である中小企業

京セラ、日本電産など京都には日本を代表する製造企業が集積しています。それらを支える力となるのが数多くの中小企業。しかし近年、大手企業の製品製造における海外委託は進み、中小企業の受注環境は厳しいのが現状です。そこで今注目されているのが、スタートアップのアイデアと中小企業の力。今回は、スタートアップや中小企業による新たな挑戦について解説します。
 

スタートアップとは

スタートアップの定義

スタートアップとは、比較的新しいビジネスで急成長し、市場開拓フェーズにある企業や事業のことを指します。スタートアップ(startup)の単語には、「行動開始、操業開始」などの意味があり、アメリカのIT関連企業が集まるシリコンバレーでよく使われる言葉です。
 

スタートアップの特徴

スタートアップである企業の特徴として、「短期間で急激に成長を遂げる」点が挙げられます。企業の目的には、これまで市場に存在しなかった新しいビジネスを掲げていることが多く、「イノベーション」と「社会貢献」を目的とした活動を行っていることが重要な特徴でもあります。
 

スタートアップと投資

スタートアップは、事業を世の中に広めていく途中の段階であるので、外部から資金を調達する必要性があります。その際、使われるのがベンチャーキャピタル(VC)です。最近では、日本でもベンチャー企業やスタートアップへの投資を行うVCも増えています。
 

京都 「スタートアップ×中小企業」の場

スタートアップ、ダルマテックラボが運営する「KYOTO MAKERS GARAGE」とは

今回、紹介をするのは、京都の「KYOTO MAKERS GARAGE」を中心として運営するダルマテックラボ。「KYOTO MAKERS GARAGE」へは様々な国や地域の起業家や、地元の中小企業の担当者が多く訪れ、スタートアップが気軽に製品を試作し、ものづくりのプロである中小企業と意見を交換できるスペースとなっています。ここには3Dプリンターやレーザー加工機などの工作機械が並び、料金1000円でどれも使い放題。多くの海外ものづくりのスタートアップが集います。
 
「KYOTO MAKERS GARAGE」を運営する牧野成将率いるチームは、マネジメントや投資によるサポート等も提供しています。チームの掲げる目的は、世界に広がるIoTエコシステムの日本の玄関口となること。試作から最初の量産まで日本のものづくりのノウハウを活かすことで、ハードウェアのスタートアップとグローバルプレイヤーを繋ぐ役割をしています。
 

スタートアップとのコラボレーション(協業)の例

世界的にも話題となっている製品には、企業同士の持つ各々の力の掛け合わせで誕生したものも多くあり、いくつか例を載せます。
 

  • スタートアップ企業のノーニューフォークスタジオ(東京)、機械設計を手がけるKYOSOテクノロジー(京都)は、製品(人間の足の動きをセンサーで解析できるスマートシューズ)の耐久性を改善しました。

 

  • 京セラコミュニケーションシステム株式会社(京都)は、sigfox(フランスのスタートアップ)が提供するIoTネットワークを日本で展開し、2017年2月からサービスを開始することを発表しました。

 

  • スマートフォンに使用される電池のシェアサービスを手がけるホップライトパワー(米国)は、機械設計等を手がけるニューネクスト(京都)と新製品の開発プロジェクトを始めています。

 

起業家の抱える問題と次世代の解決案

ものづくりに携わる起業家が抱える問題に、「死の谷(デスバレー)」と呼ばれる経営の壁を乗り越えることが困難だという点があります。実際に、欧米企業もこの壁にぶつかっています。
 
低コストで量産を試みても、その手前の試作段階で設計の不備や性能不良など様々な問題が発生し、量産に行き着くことができないケース、また初期投資が膨らみ疲弊する企業もみられます。技術があるにも関わらず、一つの要素が欠落することで実現化が難しいというように、スタートアップにおける課題はまだ溢れています。
 
そこで、大手企業の支えとなっている日本の中小企業とスタートアップが連携し、互いに補い合えるような形態をつくることが新たな対策として考えられています。
 

スタートアップ×中小企業の目指す未来

2017年6月6日で開催された「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」では、「世界で活躍するスタートアップ企業をどうやって生み出すか」をテーマに国内外の投資家やイベント主催者による議論が行われました。米国のVCである500 Startupsの日本法人共同代表のジェームス・ライニー氏によると、議論において「シリコンバレーは、6世代に渡って大きなエコシステムを構築した。それに比べて日本は歴史が浅いので、成功した人たちが、エコシステムに戻り、返す仕組みを構築できるといい」と語っています。
 
また中小企業にとっても、協業は大きなメリットがあります。日本では中小企業が大手の下請けとして存在しているのが主流です。しかし中小企業にとっては、そこにリスクが存在します。そこで、伸びのあるスタートアップと協業することで、中小企業は下請けの立場から主体的製造の立場への変化が見込めます。
 
スタートアップと中小企業の連携、そして新たな価値の発想の生まれる成長性の高いエコシステムの構築。今後、さらなる注目が期待されます。
 
参照リスト

  1. 日本経済新聞「起業家の発想、中小が形に京都でものづくりコラボ」https://r.nikkei.com/article/DGXMZO24162520R01C17A2XY0000?type=my#IAAUAgAAMA
  2. MAKERS BOOT CAMP「会社概要」 http://makersboot.camp/ja/about/
  3. はたらくビビビット「スタートアップって何?|仕事百科」https://hataraku.vivivit.com/works/startup
  4. クラウド時代のビジネスメディア ボクシルマガジン「スタートアップ企業とは?ベンチャー企業とはここが違う!意味や特徴をチェック」
    https://boxil.jp/mag/a63/
  5. IT Pro 「外から見る日本のスタートアップ業界、投資家らが課題を指摘」
    http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/060701604/?rt=nocnt

 
 
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
 

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