起業するには?起業して成功するための5つのステップ

終身雇用制度の限界を迎え、働き方が多様化してきた今、起業に興味を持つ人が増えています。しかし、「実際に起業するためにはどうしていいのかわからない」と一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、起業に必要な心構えや知識、実際の手続きまでを5つのステップにわけて紹介します。具体的な流れを理解し、不安を解消していきましょう。

 

誰でも起業できる時代?

“起業”と聞くと、会社を設立することを思い浮かべて身構えてしまう人もいるのではないでしょうか。
“起業”とは、“新たに事業を起こす”ことを指しています。「新しい会社(法人)を設立すること」だけでなく、個人でも挑戦できることなのです。
また、2006年5月に「新会社法」が施行され、1円の資本金から株式会社が設立できるようになったことなども手伝って、以前より起業しやすくなったといわれています。
このように“起業”自体は難しいものではなく、“誰でも起業できる時代”といっていいかもしれません。しかし起業において本当に難しいのは起業後に事業を軌道に乗せ、成功に導くことでしょう。そのためには、いかに起業前にしっかりとした準備ができているかが重要です。

 

起業して成功するための5つのステップ

ここからは、“成功するための起業” をする上で押さえておきたい5つのステップを詳しく紹介していきます。どれも起業の成功には欠かせないことですので、段階を踏んで確認していきましょう。

  

ステップ1 起業の目的を明確にする

第一に、「なぜ起業するのか」という“起業の目的”を明確にしておくことが非常に重要です。
なぜなら“起業する”ということは、“自らが事業の主となる”ということで非常に主体的なものだからです。
“起業” は事業のスタートでありゴールではありません。「なぜ起業するのか」の答えが、起業した後に目指すべき場所でしょう。はじめに目的をしっかり確認しておくと、ブレてはいけない軸が定まり、どんな困難な局面においても自分を奮い立たせる力となるはずです。
  

ステップ2 事業アイデアを整理する

起業の目的を明確にした後は、具体的な事業のアイデアを整理しましょう。多種多様な商品やサービスが溢れ返る現代で勝ち抜くためには、事業アイデアは重要ポイントです。

   

事業アイデアの見つけ方

事業アイディア
具体的なビジョンがまだ見つけられていない場合は、自分の好きなことや得意なことに目を向けてみましょう。起業において、心理的に一番不安を感じやすい「事業の立ち上げ~軌道に乗るまで」の期間でも、好きなことや得意分野であればモチベーションが維持しやすい傾向にあると言われています。
また、自分や周りの人が困っていることに着目するのもおすすめです。困っていること=ニーズであり、需要が見込める分野でしょう。
世間のニーズを見極めるためには、いくつかの方法があります。
【人に聞いてみる】
困ったことはないか、周囲の人にダイレクトに質問してみましょう。案外近くにヒントが転がっているかもしれませんね。
【SNSをチェックする】
ビジネスにおいて、時代の流れを掴むことは非常に大切です。リアルタイムで自由な意見がやり取りされているSNSには、今のニーズが詰まっていると考えられます。
【クラウドソーシングを覗いてみる】
クラウドソーシングでは、たくさんの“今誰かにしてほしいタスク”が掲載されています。困りごとの宝庫ともいえるでしょう。

ビジネスモデル・マネタイズポイントを整理する

ビジネスモデル
事業アイデアがいくつか思い浮かんだら、ビジネスモデルに落とし込み、比較してみましょう。
この際、「ビジネスモデルキャンパス」というフレームワークを用いて、9つの角度から考えてみるのがおすすめです。
【ビジネスモデルキャンバス】
1、顧客セグメント(Customer Segment):誰に売るのか
2、顧客との関係(Customer Relationships):顧客とどんな関係を持つのか
3、チャネル(Channels):どうやって売るのか
4、収入の流れ(Revenue Streams):どのようにお金を得るのか
5、提供価値(Value Propositions):顧客にどのような価値を提供するのか
6、キーアクティビティ(Key Activities):事業の実現のためにやるべきこととは
7、キーリソース(Key Resources):事業の実現のために必要な経営資源とは
8、キーパートナー(Key Partners):事業の実現のために必要な協力者は誰か
9、コスト構造(Cost Structure):何にコストがかかるのか
またマネタイズ(収益化)できるかどうかも、忘れてはなりません。いくら事業が楽しくても、マネタイズできなければ成功とはいえませんし、事業の継続自体が困難になってしまいます。
いくつかの事業アイデアを比較すると、よりよいアイデアを選択できるでしょう。
   

なぜ自分でなければならないかを明確にする

起業は、自らが主体となって進めていくものであることから、今から始めるのが「自分でなければならない」という確固たる決意を持って挑む必要があります。
そのために今一度、自分自身をよく振り返ってみましょう。成功するためには、自分の特徴をよく理解し、自分とマッチした事業と向き合っていくことが重要です。「自分でなければ」と自信を持って進んでいける事業であれば、どんな困難にも立ち向かっていけるでしょう。

  

ステップ3 事業計画を立てる

事業計画
事業アイデアが見えてきたら、現実的に実行できるプランにしていきましょう。いくらアイデアが素晴らしいものでも、事業として実行できなければ起業は困難です。
事業計画は、起業に必要な手続きの中でも各所に提出を求められる重要なものです。特に決まった形式はありませんが、さまざまなフォーマットが出回っていますので参考にしながら作成していきましょう。
事業計画書のフォーマットで主に取り上げられている項目には、
・事業の目的
・事業内容
・マーケティングの結果と戦略
・売上や利益の予測
・開業資金計画・収支計画
などが挙げられます。
  

ステップ4 資金調達をする

起業に必要な資金は、起業方法や事業内容、規模などで大きく異なります。まずは事業計画で必要な資金額を算出し、最適な資金調達方法を選択するようにしましょう。
   

事業計画でいくら資金が必要か試算する

事業計画で起業時や開業後の「資金総額」を試算し、開業から数ヶ月分を「開業資金」として計上します。開業資金は、業種や戦略にもよりますが、3ヵ月以上を想定しておくのが一般的です。ここで重要なのは、“シビアな目で試算する”ことでしょう。起業後はすぐに利益が出にくいものですが、ここで資金が枯渇してしまうと事業を成功させることができなくなってしまうため、厳しめに見積もっておくことをおすすめします。
必要な資金すべてを自己資金で賄うことができれば理想的ですが、なかなかそうもいかないでしょう。自己資金投入割合や、残りの資金の調達先だけでなく、いつまでに必要なのか、ひとつの資金調達がうまく行かなかった場合に次の手はあるのか、といったところまで考えておくと安心です。
   

資金調達方法

起業時の資金調達方法はいくつかありますが、融資の審査では、自己資金比率などを審査対象とするケースも見られるため、開業資金の1/3程度を目安に自己資金を用意しておきたいところです。また、「事業計画書」はどの調達方法においても共通して求められる書類ですので、説得力のある事業内容を打ち出すことは必須です。
これらを踏まえた上で、どのような調達方法があるのかチェックしていきましょう。
    

日本政策金融公庫

実績のない起業者にとって、「審査が通るかどうか」は最大の心配事ではないでしょうか。その点でおすすめなのが、政府系金融機関である「日本政策金融公庫」です。民間の金融機関では取り扱いが難しい“中小企業を起業するための融資”を積極的に支援しています。
中でも、「新創業融資制度」は、事業実績がなくても無担保・無保証で3,000万円(うち運転資金1,500万円)まで融資が受けられる可能性があり、初めて起業する人にとって心強い制度です。他にも、女性や若者、シニアの起業を対象とした資金なども用意されています。
    

融資

多額の資金を希望するときは、民間金融機関に申し込むケースが多い傾向にあります。そこで利用したいのが、“信用保証付きの融資”です。
公的機関である「信用保証協会」に保証人になってもらい、銀行や信用金庫などから融資を受ける方法で、返済が不可能な場合は、金融機関への返済は信用保証協会が肩代わりし、債務者は信用保証協会に借入金を返済するシステムになっています。
信用保証協会は全国各地にあり、起業予定地の窓口で相談することが可能です。
    

補助金・助成金

補助金
各自治体では、起業する人を増やすことを目的として、創業時に申請できる補助金や助成金を用意しています。一般的に、要件を満たせば誰でも受けられるものを「助成金」、審査を通過する必要があるものを「補助金」といいます。
メリットは、返済不要であることと、事業内容が公的に認められたという証になることでしょう。しかし、「後払い」で費用の「一部補助」である点には注意が必要です。
    

クラウドファンディング

最近増えてきている方法が、インターネットを活用し、不特定多数の個人から出資金を集める「クラウドファンディング」です。資金集めの段階でしっかりと商品やサービスをPRする必要がありますが、マーケティングも兼ねることができる一面もあります。事業に共感を得られれば、多額の資金が調達できる可能性もあるのも魅力です。
出資者へのリターン方法は、
・何も還元しない「寄付型」
・金銭ではなく、商品やサービスなどで還元する「購入型」
・金銭を還元する「投資型」
の3種類があります。
また、資金の受け取り方は
・目標金額に達した場合にのみ資金を受け取る「オール・オア・ナッシング方式」
・集まった分だけ資金を受け取る「オール・イン方式」
の2種類があり、特別の場合を除いて、ほとんどのケースでは「購入型」の「オール・オア・ナッシング方式」が採用されています。
目標金額に達しない限り資金を手にできない可能性があることは考慮しておきましょう。
    

ベンチャーキャピタル

「ベンチャーキャピタル」とは、株式公開できそうな会社に投資し、株式公開後に株式や事業を売却することでキャピタルゲインを得ることを目的とする投資会社です。
無担保でも多くの資金を得ることができ、返済不要であることは大きなメリットなのですが、その分出資条件が非常に厳しい上に、「成長の見込みがない」と判断された場合には資金を回収されてしまう可能性も否めません。
資金面だけでなく、経営に関するアドバイスなどを得られる場合もありますので、事業内容や規模に自信がある場合には、挑戦してみるといいでしょう。
    

個人投資家

組織としてではなく、個人で出資を行う「個人投資家」は、いわば“ベンチャーキャピタルの個人版”のような存在です。「エンジェル投資家」とも呼ばれています。
大口投資が主流のベンチャーキャピタルに対し、個人投資家では数百万~2,000万円前後が多く、審査に個人的な思いが反映されがちです。大企業の重役を退いた人などが、後輩育成のために出資をしている場合が多いようです。
  

ステップ5 開業手続きを行う

資金調達のめどが立ったら、いよいよ開業に向けて手続きを進めましょう。ここでは会社設立までに必要な手続きを個人・法人に分けて紹介します。

   

個人事業主の場合

「個人事業主」とは、法人設立をせずに個人で事業を営んでいる人のことをいいます。手続きが簡単で費用も必要ないため、初めて起業する人や、副業からの起業におすすめです。

    

開業届・青色申告承認申請書を提出する

個人事業主の起業手続きは、開業から1ヶ月以内に税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を提出するだけで、屋号は決まっていなくても大丈夫、といった簡易さに驚く人も多いかもしれません。
開業届の提出だけでも起業が可能なのですが、同時に「青色申告承認申請書」を提出しておくと、税金面での優遇措置が受けられるようになります。65万の控除対象になりますので、忘れずに提出しておきましょう。

   

法人設立の場合

法人設立の場合には、開業までにやらなければいけないことも多く、起業手続きにも費用が生じます。初めての設立でハードルが高いと感じるようであれば、専門家による代行サービスを利用するのも手です。
個人の起業に比べると、手間がかかる上に総額で24万円程の費用が必要(株式会社の場合)なのですが、税金面では個人より有利になり、社会的信頼も得やすくなるのは大きなメリットでしょう。
    

会社の概要を決める

第一に、会社の商号や事業内容など、会社の概要を決めましょう。この概要は「定款(ていかん)」といわれ、公証人役場で認証を受けなければ効力を発揮しません。なお、合名会社・合資会社・合同会社では、定款の認証は不要です。

    

印鑑の購入をする

捺印
会社の概要決めと並行して、印鑑を購入しておきましょう。
会社印は、購入後なるべく早い時期に、法務局で登録手続きを行う必要があります。この手続きによって、会社の実印として登録され、以下のものが入手できるようになります。
・印鑑カード
・印鑑証明書
・登記事項証明書
これらはすべて、設立したばかりの会社が「すぐに必要になるもの」で、前述した定款にも押印する必要があることから、早めの手続きをおすすめします。
    

資本金の払込みをする

資本金が決定したら、払込みをしましょう。ここで注意したいのが、「出資者が自分(発起人)以外にもいる場合」です。発起人以外の口座に入金しても、資本金の払い込みとして認められませんので、必ず発起人の口座に入金するようにしてください。

    

設立書類を法務局に提出する

「定款」と「設立登記申請書」を法務局に提出し、登記を行います。登記によって新会社に法人格が認められ、晴れて会社として成立したことになります。
登記を済ませた後は、税務署で「法人設立届出書」を提出しましょう。法務局と税務署は同じ建物内にあることが多いので、併せて行っておくのがおすすめです。
税務署は、法人設立届出書を受理した後、市区町村の税務課に法人設立届出書の内容を通知します。税金の納付を確実にするための手続きです。
 

まとめ

今回は、起業して成功するための5つのステップを紹介しました。
起業前から正しい知識を身に着けておけば、スムーズに起業でき、事業に集中しやすくなるため、成功への近道となることでしょう。
自ら事業を起こし、新たな人生の第一歩を踏み出してみませんか。