キャリアアップのためのキャリアプランの考え方

「より責任や権限のあるポジションに挑戦したい」「これまでの経験を生かして違う会社でも働いてみたい」といった思いから、キャリアアップを望んでいる人も多いのではないでしょうか。
実現するためには、明確なキャリアプランが必要だといわれています。
本記事では、そもそもキャリアアップとはどういう意味なのかといった基礎知識から、実現するためのキャリアプランの考え方まで解説します。
これからどうなりたいのか、そのためには何が必要なのかを具体的に考えながら読み進めてみてください。

 

キャリアアップの意味はより高度な職務経歴を積むこと


「キャリアアップ」とは、 “キャリア(職歴、経験)”を“アップ(高める)”ことです。
職歴や経験を高めることは、自分の市場価値を高めることにつながります。自己価値を上げることで、今より地位や待遇などの向上を期待する人が多いようです。
キャリアアップの具体例としては、
・雇用形態がアルバイトから正社員になった
・社内で昇進、昇級した
・転職して待遇や収入がアップした
などが挙げられます。
いずれにしても、“社会的に現状よりも良い状態になった”ことがわかりますね。

  

スキルアップと違い

キャリアアップと同じような意味で、「スキルアップ」という言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。
「スキルアップ」は“スキル(能力、技能)”を高めることです。職歴や経験といった社会的要素とは異なり、能力や技能は個人的要素である点が大きな違いでしょう。
スキルアップとしては、次のような例が挙げられます。
・TOEICの得点を伸ばす
・プログラミングスキルを磨く
・新しい資格を取得する
このように、個人が学習したり習得したりして自分のスキルを向上させることを指すものです。
キャリアアップとスキルアップは、向上させる対象が異なる言葉ではありますが、個人のスキルアップが結果的にキャリアアップにも繋がったり、キャリアアップのためには足りないスキルを身につける必要があったりすることから、密接な関係にあるといえるでしょう。
 

キャリアアップを実現するには


キャリアアップを実現するためには、大きく分けると3つの方法があります。自分が望むキャリアの終着地によって、選ぶべき道も変わってくるでしょう。
  

転職する

キャリアアップと聞くと、すぐに転職を思い浮かべる人も多いかもしれませんね。
実際、キャリアアップを目的とする「キャリアアップ転職」は、転職理由の中でも大きな割合を占めています。
キャリアアップ転職では、これまでの経験を生かし、同業種の好待遇他社へ転職するケースがほとんどですが、同じ転職でも、他業種や他業界へ転職する場合は「キャリアチェンジ(職歴、経験の変更)転職」と呼ばれ、区別されています。
これまで、キャリアアップ転職は、年功序列や終身雇用の意識が薄い外資系企業におけるキャリアアップの主な手段と捉えられていましたが、近年は日系企業でも同じような状況が見られるようになってきています。
  

昇格する

現在勤めている会社を退社せずにキャリアアップを図る方法で、社内での昇進や昇給を目指すものです。
社内キャリアアップを推奨する企業も増えているようです。従業員のキャリアアップのために社内公募や研修、ジョブローテーションなどを行ったり、キャリアパス制度(昇進、昇格の基準や条件を明確に定めた人事制度)が設けられていたりする企業も見られるようになってきました。まず自分の勤務先の状況を確認し、積極的に活用してみましょう。
  

独立・起業する

近年、すでに十分な実績や経験を積んだ人たちのキャリアアップの手段として注目を集めているのが、独立・起業でしょう。
以前は、転職の手段といえば、キャリアアップ転職か社内キャリアアップのどちらかを選択することがほとんどでした。
風向きが変わったのは、2006年に会社法の改正です。「1円起業」という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。資本金の壁が実質的に撤廃されて起業のハードルが下がったことが後押しとなり、社外キャリアアップの方法のひとつとして選択されるようになってきています。
 

キャリアアップのためのキャリアプラン設計


「キャリアプラン」とは、経歴の計画のことで、いわば自分のキャリアの地図のようなものです。キャリアアップを実現するためには必要不可欠なものでしょう。
自分自身でキャリアプランを設計する過程で、「自分はどうなりたいのか」「そのためには何をすべきか」「自分にとってのキャリアアップとはどのようなものなのか」などが明確になってきます。
  

自分の強み・弱みを把握する

キャリアプランを設計するためにまずすべきことは、「自己分析」です。
過去を振り返り、これまでに積み重ねたことを整理すると、自分の現在地がわかりやすくなるでしょう。
自己分析では、仕事で成功したこと、失敗談などを洗い出し、なぜそうなったのか、どのように対処したのか、身についたことは何か、を書き出してみましょう。見える化すると、自分の強みや弱みが把握しやすくなるのでおすすめです。
  

数年後の理想の状態を具体的に描く

キャリアプランの設計では、
①長期目標を設定する(最終的にどうなりたいのか)
②①を基に中期目標を掲げる(5年、10年単位)
③②を実現するための短期目標を立てる(数か月~1年単位)
というように、大きな目標から逆算して小さな目標を立てていくと実現しやすいとされています。
中でも、②の中期目標で、数年後にこうなっていたいという状態をできるだけ具体的に描いておくことが重要です。
長期目標だけでは、実現できるかどうか不安になってしまい、モチベーションを維持することが困難です。実現可能で具体的な数年後をイメージすることで、意欲を持って進むことができるしょう。
  

ギャップを埋めるための経験・スキルを把握する

数年後の理想の姿と、自己分析で見えてきた現在の自分を比較してみてください。ほとんどの人は、理想と現実の間にギャップがあるのではないでしょうか。
数年後の理想の姿は、先に説明した中期目標にあたります。ここでは、続いて③の“中期目標を実現するための短期目標”を立てるためには、この理想と現実のギャップを自覚し、何が足りないのかをしっかりと把握することが重要です。
  

経験・スキルを得る方法を検討する

ギャップを埋めるために足りないものは、補っていくことが必要です。足りないことがわかれば、必要な経験や得るべきスキルがはっきりするでしょう。
外部セミナーへ参加したり、スクールを受講したりといった個人のスキルアップはもちろんですが、今目に見える実績がない場合は、今の職場で経験や実績を積むのもひとつの手です。社内で開催されるセミナーなどにも積極的に参加してみましょう。
現職の待遇や業種によっては、国が採用している制度なども積極的に活用すべきです。
建設業界や保育業界における人手不足解消のためのキャリアアップ制度、非正規雇用者のキャリアアップ促進のための助成金などがあります。

 

キャリアアップのために転職するべき?とどまるべき?


キャリアアップのためには、社内でこのまま頑張ればいいのか、それとも思い切って転職したほうがいいのか悩んでしまうこともあるでしょう。
ここでは、転職と社内におけるキャリアアップのメリット・デメリットを紹介します。よく確認し、自分に合うのはどちらか検討してみてください。
  

転職することのメリット・デメリット

【メリット】
・キャリアアップしやすい体制が整った職場を選べる
・環境が変わるため、心機一転できる
・新しい環境で自分を試すことができる
・前職と異なる経験がプラスされる
【デメリット】
・前職で築いた人間関係や評価などは一度リセットされる
・新しい環境になれる時間が必要
【こんな人におすすめ】
・現職場にはキャリアアップの体制が整っていない
・現職場では、希望するポジションが空いていない
・心機一転、これまでとは違った環境で挑戦してみたい
  

社内に残ることのメリット・デメリット

【メリット】
・これまで積み上げた実績や経験も見てもらえやすい
・慣れ親しんだ環境で安心して取り組める
・すでに人間関係を構築できているため、周囲の協力を得やすい
・キャリアアップするためにすべきことの検討がつきやすい
【デメリット】
・希望のポジションが空いていない場合はキャリアアップに時間がかかる可能性がある
・現職場ならではのやり方でしか実績を重ねることができない
【こんな人におすすめ】
・キャリアアップ制度や体制が充実している企業で働いている
・大企業など、ネームバリューがある企業で働いている
・今の職場で良好な人間関係が築けている
 

キャリアアップに成功する人とは


キャリアアップに成功している人を見てみると、いくつかの共通する特長があるようです。
成功する人の共通点を知り、姿勢を取り入れてみましょう。
  

自分のキャリアプランを持っている

キャリアアップが実現できたかどうかは、キャリアを終えてみないとわからないことです。
それまでには長い道のりがあり、紆余曲折しながら進むことになるでしょう。
先に述べたように、キャリアプランはキャリアを歩んでいくための地図のようなものです。しっかりとした自分のキャリアプランを持ち、柔軟に変えていくところや、絶対にブレたくないポイントを押さえておくことが重要です。
  

自分の強み・弱みを自分で理解している

自分の強み・弱みを明確にできていると、責任を持って進んで取り組めること、人に助けてもらいながら学んでいくことの判断ができ、成果を上げるポイントを絞りやすくなります。
できる・できないをはっきりさせることは、ビジネスパーソンとしての信頼を向上させることにも繋がるのです。
  

現状を素直に受け止め、人からのアドバイスを積極的に得ている

新しい知識や情報ばかりではなく、現状や人からの指摘、アドバイスをも素直に受け止めることが大切です。
現状は決して満足がいくものばかりではなく、人からのアドバイスも耳が痛いものが多いかもしれません。しかし、それらをいったん素直に受け止め、改めて打開策を講じることこそが、ステップアップの近道です。
 

まとめ


キャリアアップの意味や種類から、キャリアプランの設計や実現についてまで解説してきました。
人によって、目指す終着点やそこまでの道のりはさまざまです。自分にあったキャリアアップとはなにか、どんなキャリアプランが必要かを今一度考えてみてくださいね。