グロービス 鳥潟氏に聞く「グロービス学び放題」が目指す世界

日本で最大規模のビジネススクールとして、第一線で活躍する多くのビジネスリーダーを輩出しているグロービス。そのグロービスが『グロービス学び放題』という新しいサービスを始められたその背景と、これからの時代で求められてくるビジネス力の身につけ方などについて、株式会社グロービスのデジタル・プラットフォーム プロダクトリーダーの鳥潟 幸志氏にお話を伺いました。
 
以下
鳥潟:株式会社グロービス グロービス・デジタル・プラットフォーム プロダクトリーダー 鳥潟 幸志
柴田:株式会社mannaka 代表取締役 柴田 雄平
 

「社会の創造と変革を行う」ビジネスリーダーを育成・輩出する

柴田
早速ですが、今回は「グロービス学び放題」というサービスについて、事業を立ち上げられた背景など、お話を聞かせてください。
 
鳥潟
グロービス全体としては、ヒト・カネ・チエという大きな3つのビジネスドメインで事業を展開しています。これらを通じて最終的には、新しいものを生み出したり、既存のものを変えていくことのできる、社会の創造と変革を行うビジネスリーダーを輩出するということが、グロービスの大きなミッションになっています。
 
おかげ様で、グロービスは日本で1番大きな規模のビジネススクールに成長しました。今回、「グロービス学び放題(以下、グロ放題)」を広めていこうと思ったのは、グロービスが25年間培ってきた、「ビジネスのリーダーシップの教育内容をより多くの人に伝えていきたい」と思ったのが1番の大きな背景にあります。
 
学びに対するハードルを下げることで、より多くの人たちが費用の面も含めてなるべく手軽に始めることができて、少しでもビジネスの考え方やリーダーシップ教育を受けて頂いて、社会全体の生産性が高められたら、と思い、事業の展開をしています。
 

 
柴田
グロービスは「第一線で活躍するビジネスパーソン」が集まるビジネススクールというイメージがあるのですが、なぜ「若手ビジネスパーソン」を対象とした新規事業を立ち上げたのでしょうか?
 
鳥潟
新規事業を始めたきっかけはいくつかあります。
元々eラーニングや、研修の一部を動画にしてパッケージ販売をしていくということは、各部門で断片的にやっていたのですが、この動きをもっと加速させる必要がありました。それはひとえに、テクノロジーが進化してきたというのが1つ大きなきっかけとしてあります。
そして、法人のお客様からのニーズに加え、一般のお客様からのニーズが非常に強まってきており、これまでのように部門ごとで断片的にやるよりも1つの部門に集めてしまい、そこに思いっきり投資することにしたというわけです。
 

グロービスにはもともとエンジニアがいなかった?

鳥潟
元々、私たちの会社にはエンジニアはいなかったのですが、今は20人くらいのエンジニアチームになっていて、サービスも全て自社で作り、PDCAを回しながらスピーディーに事業展開をしていこうという動きになっています。
 
今までアナログでやっていた時代にできなかったこととして、「学習データを蓄積して可視化する」ということが挙げられます。
 
例えば、「グロ放題」で誰がどの動画を見て、どういう評価をしているかということや、営業職の人はどのようなコンテンツを見ているのかということなど、いろいろな切り口で情報を分析することができます。その分析を使うことでさらに学習効果を高めることができるのではないかという狙いもあります。
これらの大きなデータの集約と分析・解析を1つの部門に集約し、さらに加速度的な事業展開を行うことを考えました。
 

 
 

鳥潟氏が考える「グロービス学び放題」の事業構想

柴田
鳥潟さん自身はこの「グロ放題」に対してどのような事業構想を描いていらっしゃいますか?
 
鳥潟
私自身は、1人でも多くの方に本当に必要とされる教育コンテンツが広がっていくことを実現したいと思っています。
何か仕事で悩んだ時に、「そういえば、これはグロ放題で学んだな」とか「グロ放題の中にヒントがあったな」といって、すぐにアクセスしグロ放題を使って、ビジネスの課題を解決できる状態を作りたいです。
これが、私が目下で考えていることですね。それ以外の事業の構想としては、「グロ放題」では、今は動画を見るだけなんですけど、その先には「ユーザー同士を繋げていく」ということもしたいと思っています。
 
同じような職種、同じようなポジションの人って結構似たような課題を持っているんですよね。エンジニアの世界ってみんなGitHubで繋がっていたりするんですけど、それ以外の世界って特定の課題で繋がることって少ないんです。
でも、「グロ放題」を利用していただいている方は、真剣に成長を目指している方が多いので、ユーザーの属性を可視化しながら、ユーザー同士を繋げて、一緒に成長できるコミュニティの場にしたいという構想があります。
実はこれは経営大学院の中の在校生・卒業生のコミュニティでやっていることと同じなんですね。学びたい人が集まって、一緒に議論して、コミュニティで仲間を作って、一緒に事業を始めようという。これをもっと大きな規模で、オンライン版を作っていけたらと思っているわけです。
 
そしてもう一歩先の世界で実現したいのが、アジアの中のEdtechの領域ですね。我々は、中国と上海とシンガポール、それからタイのバンコクにも拠点があり、そこでパフォーマンスを上げていきたいというのもあります。
我々が使っているビジネスの教育は、基本的には世界共通のものなので、これをマルチ言語化して、多くの方にお届けしていければと思っています。
 

 

これからの時代に求められてくるコンセプチュアル・スキル

柴田
PILESGARAGEというメディアは、主に20代の人たちに少しでも多くのビジネスのスキルを身につけてほしいということや、どこからでも採用される人材になってほしいということをメインで考えて動いています。なので、大企業に勤めて活躍するのも当然ありだし、ベンチャーで活躍するのもあり、そして起業というのも1つの選択肢だと思っているのですが、起業とか、大企業のマネジメントクラスの人材に期待していることって何かありますか?
 
鳥潟
そうですね、ちょっとこちらのスライドを見てください。

こちらは「グロ放題」の「Learn how to learn」というコースでご紹介している資料です。
これまでのビジネス環境は右肩上がりで伸びていたので、会社や上司の指示を受けて決められたことをやっていれば評価されたんですよね。でも今は、そもそも何をやればいいのか会社も分からないし、上司も分かっていません。そうすると、自分自身が問題意識を持たないといけないんですよね。
問題意識を持ってそれを自分で状況判断して行動して結果につなげていくことが必要です。経験を積むとか実務能力を高めていくということだけでは厳しくて、コンセプチュアル・スキルといわれるスキルが必要なんですよ。
 

 
コンセプチュアル・スキルとは、「つまりこれってどういうことなの?」ということを論理的に考えられるスキルで、これは当然グローバルで通用する力なんですよね。どんな職種、どんなポジションでも通用する力です。
 
ビジネスには原理原則があって、ビジネスを始める前にまずは市場を見ましょうとか、競合をリサーチしましょうとか、お金の動きはどうなってますか? とか、こういうことを総合的に1人の人間がある程度分かった上でビジネスをしていかないといけないんですよね。グロービス卒業生が、卒業した後にMBAを取って良かったと言うのがまさにそこで、今までだったら何かをやろうとすると、まず専門家を連れてきて、その人たちとチームを作らないといけなかったんです。でもMBAを学ぶことで自分でもそれがある程度分かり、最低限の必要な人だけをチームに入れてやるのでスピードが速いとか、経営層とも会話ができるとか。これからはそういうスキルを身につけていく必要があるんじゃないかと、私は思っています。
 
『Learn How to Learn ~自分にあった学習法を見つけるための4つのステップ~』
詳しくはこちら
 

問題意識と志を持って、世の中の課題を解決できる人間に

柴田
これから先の5年、10年って、今まで正解だったことがこれまで以上に崩れていくと思っています。リモートワークなんて今までほとんどなかったですし、プロジェクト単位で仕事を動かすというのもあんまりなかったと思います。こういったことに適応できない会社さんは、もちろんまだまだあると思いますが、グロービスの中のEdtechと呼ばれるようなところで学んだ人たちには将来的にどんな人になってほしいと思っていますか?
 

鳥潟
グロービスの大学院や「グロ放題」を含めた弊社のサービスを受けた人にどのようになってほしいかのかというと、「自分で問題意識や志を持って、世の中の課題を解決していく動きができる人間」になって頂きたいと思っています。
 
これからの時代はこれまでのように、どこかの会社に所属して、誰かの方針に従って生きていくという時代ではありません。『ライフ・シフト』という本にも書いてありますが、今までの時代だったらなんとか生きてこれましたけれど、これからはかなり早い時間単位で産業そのものがなくなっていきますよね。今、「◯◯エンジニアをやっています」という方も、あと5年もしたらその技術は陳腐化されていってしまう恐れがあるので、自分のキャリアをどんどんチェンジしていかないといけないわけなんですよね。そうなると、外に出て活躍できる人が必要になってくるので、グロービスのサービスを受けた方には、どんどんそういう動きをし続けられるようになっていって頂きたいと思っているんです。それこそがリーダーシップであり、専門性を持った課題解決だと私は思っています。
 

「グロ放題」のその先へ。インプットした知識を仲間と共に昇華させられる環境

柴田
今回、この記事の読者は主に20代~30代前半くらいの人たちになると思うんですが、その人たちが「グロ放題」のサービスを利用したその後にグロービスが提供できるものにはどのようなものがありますか? 経営大学院に通うというのも、もちろんあると思いますし、グロービスが今まで培ってきたネットワークも、若い人たちに対して提供できるのではないかと思っているんですけど。
 
鳥潟
まさにおっしゃる通りですね。「グロ放題」そのものは知識のインプットなので、まずは知らないことを知るということになります。グロ放題で培った知識を生かすための次のステップとして用意しているeラーニングは、1科目を20時間かけて学び、その後に我々が用意しているものとして、演習問題が数百問あって、知識の反復演習になり定着をさせます。さらにその次のステップでは、仲間と議論をして、これまで学んだことを自分なりに考えて出した意見を他の人の意見と議論し戦わせて、さらに1段高い考え方に昇華をさせていきます。これは仲間と一緒に学ぶという事ですが、ここで、仲間を見つけて起業していく人や転職する人もいてというステップが我々としては用意できるのかなと思っています。
 
 

柴田
貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。
 
鳥潟
こちらこそありがとうございました。
 
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今回は、株式会社グロービスの鳥潟 幸志氏にお話を伺いました。グロービスが『グロービス学び放題(グロ放題)』というサービスを始められたその背景と、これからの時代で求められてくる力などについてお話を伺う中で、一人一人が経営力やリーダーシップを学び、そして発揮していかなければならないと感じました。この対談記事を通して、皆さんも日々の仕事に対するヒントになるものが見つかったのではないでしょうか。
 
▶︎株式会社グロービス
創造に挑み、変革を導く
グロービスは、経営に関する「ヒト」・「カネ」・「チエ」の生態系を創り、社会の創造と変革を行います。
HP:http://www.globis.co.jp/
 
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