M&Aで成長し続けるモータ製造の日本電産とは? M&A成功の要因とは? 

はじめに

50社以上を買収して、短時間で買収先を黒字化させる日本電産株式会社(以下、日本電産)。さらに、買収王と呼ばれる日本電産の永守重信会長兼社長。
 
今回は、日本電産の買収の神話に迫りながら解説いたします。
 

日本電産の概要


(日本電産グループ2016年3月期決算書より作成)
 
上記の売上構成のように、モータ事業を中心に、超小型から超大型まで、日本電産は、様々なモータ事業展開を行っています。そのうち、特にHDD用モータについては現在、世界において80%前後のシェアを占めることが注目されます。
 
また、売上構成比の推移も重要視されるべきです。今後、パソコン出荷台数の減少とモータを装備していないSSDの普及を要因として、世界市場でのHDDの出荷台数が減り続ける予想です。売上の2割近くを占めるHDDモータ業務の不振が、日本電産グループの業績悪化の要因になる恐れがあります。
そのような状況を先読みして、日本電産は意識的に経営資源をHDDモータから、産業用ロボット、カメラシャッター部品またはオルゴール関連商品にシフトして集中投下し、高性能モータと新業務を強化しています。
 
2016年3月の決算を見ると、HDDモータ事業の売上構成は19.9%から17.7%まで下げて、それに対して、車載及び家電・商業産業用事業への転向が迅速にできるのは、日本電産の積極的なM&A活動が要因として考えられます。
 

日本電産の積極的なM&A活動

日本電産といえば、やはりM&Aが特徴の企業です。1984年以降、日本電産は52件のM&Aの実績があります。
 
買収先は、国内企業に限らず、タイ、中国、ルーマニア、イギリス、ドイツ、アメリカなどの国の企業も多数買収をしてきました。
 
買収活動は、必ずしも成功するとは限りません。しかし、30数年にも渡って、日本電産は、買収後1年以内に買収先の経営を黒字化させるのがほとんどです。
 
では、神話のような日本電産の買収の秘訣はどういうことでしょうか。
 

日本電産のM&A成功要因分析

日本電産がM&Aで成功し続ける要因は、以下のような3点にまとめられます。
 
1.厳選する買収先
日本電産の近年の買収実績を考察すると、買収先の事業領域が主に「半導体」「中・大型モーター」「制御回路・ソフト会社」に集中していることがわかります。
買収先の規模を問わず、技術のある企業をこつこつ買収し、規模の小さな買収を重ねて、「技術・販路を育てあげる」という既存の方向で進めていくのは、日本電産のやり方です。
 
2.買収時期のこだわり
M&Aでは、高額な費用を支払って、相手を買収すると思われがちですが、日本電産の買収実績を考察すると、決して法外な値段とは限りません。
日本電産の永守重信会長兼社長が、「15%の利益が出せない事業には近づかない」と語る一方、例え買収したい企業があっても買収価格が高いと判断すれば、マーケットを注視しつつ、買収価格が下がるまで待ちます。「こういう時期にこういう会社を買わなければならない」ということが、永守重信会長兼社長の買収基準です。
 
3.買収先の従業員を優待
M&Aにおいては、買収先の従来の社員と新たな経営陣との間の不調和がよく見られ、それによる経営の悪化がM&Aの成否につながります。
しかし、日本電産では業績不振の会社を買収しながらも、買収先の従業員をリストラすることは一切せず、従業員の求心力が維持されます。
 

日本電産のまとめ

M&Aを成長のけん引力とする日本電産は、今後いかにM&Aを続け、更なる成長をしていくのかに注目です。
 
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
 

財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
エスネットワークスは、「経営者の視点でニーズを掴み、経営者の視点で課題を解決し続ける、最強パートナー」を実現すべく、成長し続けています。
 
■エスネットワークスのサイトはこちら
株式会社エスネットワークス
■mannakaのサイトはこちら
株式会社mannaka