スマートキャンプ株式会社 古橋氏に聞く 効率化の探求とフェアな社会をめざして【前編】

今回は、スマートキャンプ株式会社 古橋智史氏にお話を伺いました。スマートキャンプ株式会社(以下、スマートキャンプ)は、「Small Company, Big Business.」というビジョンを掲げ、クラウドサービスをはじめとするインターネットテクノロジーの普及支援など幅広い事業展開を行っています。同社の代表である古橋氏に、起業にいたるまでの経緯やビジネスの原動力となっている学生時代のエピソードについて伺いました。株式会社Mi6の川元氏との対談をぜひ、お楽しみください。
 
以下
古橋:スマートキャンプ株式会社 代表取締役 古橋智史氏
川元:株式会社Mi6 代表取締役社長 川元浩嗣
 

クラウドサービスの情報提供を効率化する

川元
まずはスマートキャンプの事業内容を教えていただけますか。
 
古橋
はい。スマートキャンプ株式会社は創業して丸4年、現在5期目になります。メインの事業としては、ボクシルというクラウドサービスの比較サイトを運営しています。これは、いわゆるSaaSを対象にしたものです。そこから派生してBALESというインサイドセールスの代行事業など、メディアを軸に事業展開をしています。
 
川元
SaaSって、聞き慣れない人も多いと思うんですけど、簡単に説明していただけますか?
 
古橋
SaaSはSoftware as a Serviceの略で、簡単に言うとWebブラウザなどクラウド上で動くソフトウェアのことです。企業での仕事効率化のためのサービスが今とても流行っていて、国内でも非常に増えているんですね。法人向けクラウド名刺管理サービスのSanSanとか、企業向けクラウドサービスのサイボウズとか、勤怠管理・シフト管理システムのジョブカンとか。そういったたくさんあるサービスの中で、どれを選んでいいか分からないっていうユーザーさんに、僕等が分かりやすく解説しているっていう。
 
川元
古橋さん、もとは銀行マンだったんですよね。
 

 
古橋
はい。新卒でみずほ銀行に入ったんですが、向いてなくてですね。10か月ぐらいで辞めて。その後、速攻で起業しようと思って、先輩と一緒にタイに行って自動車の修理工場みたいなのを作ったんですけど、先輩が逃げちゃって(笑)。僕、そこに置いてかれて、3か月ぐらいタイで車の修理してたんですけど、このままじゃさすがにマズイと思って。
 
で、帰国して「ちょっとスキルつけないと起業出来ないな」と思い、営業スキルを身につけようと株式会社Speeeに入社しました。そこで1年ちょっと修行して、2014年にスマートキャンプを設立しました。
 
川元
「営業のスキルを身につけたい」とSpeeeで修行を積んだとのことですが、今もそのスキルって役立ってますか?
 
古橋
そうですね。営業力って言えるか分からないんですけど、その時の経験はすごく役立ってますね。いろんな場面で使えるんですよ。営業として商品を売るというだけでなく、採用もある意味、営業みたいなものですし。資金調達とかファイナンスとか、交渉ってあらゆる場で発生しますよね。そういうときの基本的なスキルになってるんで、普遍的な力かなって思っています。
 
川元
古橋さんの核は営業力?
 
古橋
営業ですね。好きなんですよね。好きだし、多分得意な方だと思ってる。起業を決めて「自分の一番強味になりそうなスキルって何だろう」と考えたとき、営業だなって思ったんです。大企業だとどうしても大企業の看板があるんで、営業力がつきにくいんですよね。すでに武器がある状態なんで。だからなるべく、自分が頑張らないとどうしようもないような環境で身につけた方がいいなって選んだのがSpeeeですね。
 
川元
起業することはいつから考えてたんですか?
 
古橋
社会人になってからですね。大学時代は水上スキーを4年間やって、それに命懸けてたんで、それ以外のことはやりたくなかったんです。将来のこと何も考えてなかったし、「銀行入ったら親喜ぶかな」ぐらいしか考えてなかったです。社会人になって、初めて「これヤベーな」って思って。
 
川元
そこで初めて気がついたんだ?
 
古橋
初めて自分は将来何やりたいんだろうって。
 
川元
大学時代、起業なんて全然考えてなかった?
 
古橋
全くなかったです。そんな危ないこと、全く考えてない。1ミリも考えてない。
 
川元
なるほど。銀行に入って、起業を考えるようになったんですか。
 
古橋
そうですね。最初に銀行がいいなって思ってたのは、銀行っていろんな業務があるじゃないですか。そこで自分の適性見つけられるかなと思ったんですけど、それはすごく時間かかりそうだなと。時間軸で考えたらもったいないなと思ったんです。
 
銀行で、先輩にくっついて顧客先でいろんな社長に会うんですけど、数字だけ見ても実態がなかなか分からない。融資より投資の方が面白いかなと思って、銀行からVC(ベンチャー・キャピタル)に転職することも考えたんですけど、それでも経営者の気持ちは分かんないだろうなと。だったら自分でやった方がいいかなと思って経営者になったんです。
 
川元
思考のステップアップ感すごいですね。
 
古橋
23歳で銀行に入ると、60歳で定年なんですよね。だいたい50歳で出向です。これからの世代って100年生きちゃうと思うんですよ、絶対に。そうなると「残り50年どうしよう」ってなりますよね。だったら定年がない仕事がしたい、これは起業しかないなと思いましたね。
 
川元
それで銀行を辞めて、タイに行ったってこと?
 
古橋
そうです。その時は、起業できれば何でも良かったんですよね。
 

失敗の積み重ねが今に活きている

 
川元
起業してから、壁にぶつかったことはありますか?
 
古橋
めっちゃ一杯あります。毎日壁にぶつかってますけど。でも、だいたい何とかなりますよね。Speeeにいたときも、傍から見るとたぶん大変だったんですけど、自分的には大変な時の方が楽しいんですよ。
 

 
川元
ドMですね。ポジティブマインドがすごいのかな。
 
古橋
そう言われるんですけど、めちゃめちゃ気が小さいんですよ。
 
川元
嘘でしょ。
 
古橋
みんな分かってくれないんだけど(笑)。ホントにメンタル弱い。でも、気にしないようにすることが増えたっていう感じですね。何か起こっても、既視感があるといいんですよ。「これ前にもあったな」っていう。20代はそういう経験を積んだ方がいいなと思いますね。
 
いろんな失敗もしてきたけど、そういう経験をしていれば、30代で慌てなくて済みますよね。いつか見た景色だから。“いつか見た景色”にするってすごく大事だと思うから、そんなに気にしない。
 
川元
それって今のスマートキャンプでも活かされてますか?
 
古橋
めちゃくちゃ活かされてます。そもそもボクシルって、SaaSを売りたい人と探してる人をマッチングするサイトなんですよ。それってある種、営業を効率化してるんですよね。飛び込みとかテレアポっていうのを全部Web上で解決するっていうのがコンセプトなんで。
 
BALESというインサイトセールス代行も、マッチングした後の営業をお客さんの代わりにやりますっていうサービスなんです。「営業の効率を上げたい」っていうのが僕の中にあって。
 
特にB to Bはシンプルで、僕は「売上が上がるものを作れば基本的に伸びる」って思ってるんですよね。基本B to Bは売上を上げるかコスト削減するかの2軸なんですけど、コスト削減って、コスト削減したうちの数%が手数料になるから、限界があるんですよ。だけど売上なら「月100万かけたら、売上1000万に出来ます」ということが可能になる。売上が上がるのって青天井だから。でも良い物を作れば売れるとは限らないし、営業が絶対に必要なんですよね。それを僕等が代行するっていう。
 
川元
確かにサービスの根幹も営業力ですね。
 
古橋
なるべくゴリゴリ交渉したくないんで。最適なマッチングが出来るものをずーっと追い求めてるって感じですね。
 
川元
それって今の社員さん達にも浸透してるんですか?
 
古橋
みんなもう浸透してると思う。うちはあんまりゴリっと営業してないんで。テレアポとか基本的にありませんしね。
 

「楽しくなかった」が楽しさを作る

 
川元
ちなみに古橋さんの営業力の原点で、幼少期に通じるものとかありますか?
 
古橋
それよく聞かれるんですけど、特にないんですよ。
 
川元
笑わせるのが好きだったとか、スポーツとか・・・・・・
 
古橋
ないです。スポーツとか全く才能なかったんで。
 
川元
ホントですか?
 
古橋
全くないですよ。大学の時に初めて水上スキーに出会って変わったって感じかな。それまで特段ないんですよ。
 
川元
クラスでどういうキャラだったんですか?
 
古橋
端っこにいましたよ。
 
川元
ホントに?
 
古橋
ただ、突然面白いこと言ってたんですよ。
 
川元
めっちゃおいしいじゃないですか。めっちゃ人気のタイプじゃないですか。
 
古橋
いや全然人気はないです。基本的にサッカー部しかモテないんで。決まってるんですよ。
 
川元
固定観念がすごい(笑)。
 

 
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今回の対談の前編では、銀行を辞めて起業に至った経緯とそこで培った営業力についてお話を伺いました。4年前に創業して以来、アグレッシブに事業を展開している古橋氏ですが、前職で鍛えた営業力が、営業のみならず採用や資金調達などさまざまな面で役立ったといいます。またパワフルな印象とは裏腹に、学生時代は目立たないキャラクターだったとのこと。ユニークな語り口から、失敗や困難にぶつかっても自身の力に変えていく強靱な精神力を感じました。
 
後編は「100歳までに1000個の事業を作りたい」「既存のものを効率化する面白さ」「フェアな社会をつくりたい」というお話を伺いました。後編もぜひご覧ください。
 
▶︎スマートキャンプ株式会社
テクノロジーで社会の非効率を無くす
「Small Company, Big Business.」

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