OFFICE DE YASAI 川岸亮造さんに聞く“健康”と“農業”を軸にしたベンチャービジネスの未来【後編】

今回は株式会社KOMPEITO 川岸亮造氏にご登場いただきました。株式会社KOMPEITOは、新鮮で美味しい野菜や果物を会社のオフィスで食べられるサービス「OFFICE DE YASAI」で急成長を遂げたベンチャー企業。会社における働きやすい環境づくりや、従業員の健康改善を促す福利厚生の充実に取り組んでいます。同社の代表取締役社長兼CEOである川岸亮造氏に、事業展開の今後の展望や健康経営のあり方、若い世代に向けたアドバイスについて、お話を伺いました。PILES GARAGE編集長の柴田との対談をぜひ、お楽しみください。
 
以下
川岸:株式会社KOMPEITO 代表取締役社長兼CEO 川岸亮造氏
柴田:株式会社mannaka 代表取締役 柴田雄平
 

消費者だけでなく生産者も喜ぶサービスを

 
柴田
OFFICE DE YASAIで提供している2つのプランについて教えてください。
 
川岸
1つは「オフィスでやさい」という、生鮮野菜や果物をデリバリーするタイプのプラン。もう1つの「オフィスでごはん」は、お惣菜やごはんを冷凍でお届けするプランで、小ロットから対応できるのが強みです。
 
柴田
今の冷凍食品企業ってすごく伸びてますし、これからますます需要が高まりそうですね。
 
川岸
お総菜の場合、冷蔵である程度日持ちさせようとすると、pHを調整したりお酢を少し強めに入れるという工夫が必要で、味を損なうケースが多いんですね。うちは調理したものをそのまま冷凍でお届けするので、非常に美味しいです。
 

 
柴田
2人で会社を立ち上げたということですが、現在のメンバーについて教えていただけますか。
 
川岸
正社員という形では10人、ほかに週2日出勤とか業務委託の方もいて、チーム全体では20人ですね。
 
柴田
事業としては、今後どういう方向に進む予定ですか。
 
川岸
今のOFFICE DE YASAIは、従業員の健康管理を経営的な視点で考えるという健康経営の一手として、事業展開をしています。ただ、企業の福利厚生という枠内でのビジネスなので、景気や企業予算に左右されやすい面もあるんですね。そこからさらに一歩、次のフェーズに行かなきゃいけないというのは思っています。次の構想として考えているのは、商品を利用している従業員の皆さんに対するビジネス展開ですね。
 
柴田
この事業に対する、生産者の農家の方たちの反応はいかがですか?
 
川岸
うちの野菜は基本的に産地直送で、生産者さんとも直接やりとりをしています。安定した価格で取引しているので、生産者さんとしては安心だと思います。市場だとどうしても価格のアップダウンがありますので。
 
柴田
飲食業界大手の仕入れに似てますね。
 
川岸
弊社の商品は食べやすいようにカットして提供するので、必ずしも丸ごと形が整っている必要はないんです。だから、規格から外れて市場では売りにくいような野菜を使うこともあります。
 
柴田
それを含めて、基本的には御社で買い取りをするという感じですね。
 
川岸
今でこそカット工場に依頼できるぐらいの商品数になりましたが、最初はそこまでの商品数がなかったので、切らずに即食できるサイズの野菜を提供していました。たとえば、ミニトマトとか。キュウリも摘心といって、大きくなる前に収穫したものを仕入れたりして。マッシュルームも「そのままレンジでチンして食べてね」みたいな、今考えると、それでよく食べてもらえたなって思うような商品もありましたね(笑) 。
 
柴田
試行錯誤の結果が今に繋がってるんですね。
 

 
川岸
昔からのお客さんに「前の商品の方が尖ってたよね」って言われるんです。でも、尖ってたっていうことは誰も食べてくれなかったんじゃないかって(笑)。
 
柴田
首都圏中心の展開ですか?
 
川岸
サービス自体は全国展開です。その中でも、配達員が対応できるエリアは、東京と横浜市、川崎市、さいたま市、千葉市、大阪市です。
 
柴田
今後は配達員対応エリアの全国展開も考えていますか?
 
川岸
そうですね。オフィスが多い都市部には展開していきたいですね。
 

健康経営が会社の生産性を向上する

 
柴田
企業経営者の方に、OFFICE DE YASAIのような健康経営の一環となるサービスを理解していただくために、どのように説明をされているんですか。経営者の中にも、健康経営に関心がある方もいれば、全く知らないという方もいらっしゃると思うんですが。
 
川岸
健康経営に少しでも関心のある経営者さんなら、効果が云々とか言わずに「やりましょう」という感じになると思うんですけど、そういう方はまだまだ少数です。だから、ちゃんと費用対効果を説明できるのかが大事かなと思うんですが、健康の費用対効果って分かりにくいんですよね。
 
柴田
「健康経営に取り組んでいる会社が、何%生産効率を上げた」というような調査はあるんですか?
 
川岸
日本ではまだありませんが、アメリカでは「健康経営を行わない場合にどれぐらいのロスがあるのか」を検証したデータがあります。
 
プレゼンティズムという言葉があって、これは会社に出勤しているけれども肩こりや眠気といった健康上の不調があって、生産性が落ちてしまう状態をさします。僕は「プレゼンティズムコスト」という言い方をしてるんですけど、従業員の体の不調は、企業が払っている医療費よりもはるかに高いロスがあるんです。もちろん、そのロスを0にすることはできないんですが、従業員全員が食事の摂り方や運動や睡眠について意識を持ってコンディションを整えれば、失われたコストを回復できるわけです。
 
柴田
今はまだ目に見えていない部分のロスを、伝えてあげるということですね。
 
川岸
算出方法についてはまだまだ研究段階で、非常に難しいところではあるんですけど、最先端の企業では金額換算しているところもあります。これ、人数で割って月あたりで換算すると大体一人20万円くらいの損失になるんですよ。たとえば月に300万円の利益を生み出す従業員がいるとして、体が不調だと280万円になる。2400人いたら全体で40億円、それくらいの損失の可能性があるんです。
 
食という観点で話をすれば、たとえば朝から何も食べないで仕事をすると、夕方に手がしびれてきたりするんですね。血糖値が低くなって、イライラしたり頭痛が起きることもあります。そこで空腹を感じて糖質たっぷりのラーメンを食べると、今度は血糖値が急上昇し、身体からインスリンが出て眠気を起こしてしまうんです。そんな状態で仕事をしても、絶対に生産性は上がりませんよね。また、日本人は一日に摂取するべき食物繊維とビタミンの量が圧倒的に足りていません。野菜や果物をきちんと食べれば、必要な栄養素が摂れてコンディションを整えることに繋がります。
 
柴田
知識を得て、どんどん習慣化すれば全体的に向上しますよね。
 
川岸
はい。今のプロ野球選手って、徹底した食事の管理をしますよね。年間を通してコンスタントに成績を出すためには、食事まで気を遣った方がいいというのがアスリートの常識になっている。それはサラリーマンやビジネスワーカーも同じだと思うので、そういう取り組みをしませんかと提案しているのが、今の事業の形です。
 

 

若いうちに失敗を重ねて能力を伸ばす

 
柴田
最後の質問になりますが、20代・30代の若い人たちに向けた仕事上のアドバイスをいただけますか。
 
川岸
「さらに能力を高めたい」と思うのなら、一歩踏み出して新たな挑戦をしてみることが大切だと思います。普通の企業なら、20代くらいの世代が失敗しても、上のクラスの方が出れば全然尻拭いができるレベルなので、むしろ失敗した方がいい。若い時期に失敗していないということは、新たなチャレンジをしていないということなんですよ。「自分の能力をフルにぶつけてチャレンジして失敗する」という経験をどんどん積むべきです。副業とか、別のフィールドで自分の実力を試していくのも一つの手段ですね。未知の領域をやってるから失敗するのであって、未知なトライをするから学びも大きいのだと思います。だから、若いうちにどんどん失敗するっていうのが大事だと思います。
 
柴田
なるほど。失敗が成長の糧になるのですね。今日はありがとうございました。
 
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今回の対談の後編では、「OFFICE DE YASAI」のサービスにおける今後の課題と展望についてお話を伺いました。従業員の健康管理を経営的な視点で考えるという“健康経営”、従業員の体の不調によるコスト損失などのお話は、これからの経営戦略を考える上で重要な示唆に富んでいました。また「若いうちは失敗を重ねてほしい」という、若い世代に向けた川岸氏のアドバイスは、ご自身の経験に裏打ちされた説得力のある言葉でした。
 
あなたにとってはどんな話が胸に残りましたか? この記事から、これからの時代を生きるヒントが見つかれば幸いです。
 
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