信託とは? 信託銀行とは? 普通銀行と何が違う? 高齢化社会で活躍、信託銀行の業務を解説

はじめに

2017年4月21日の日本経済新聞に、信託銀行各社が事業モデルのあり方を見直しているとの記事が掲載されました。
 
信託銀行には、資産運用というイメージはあっても、実際信託銀行の業務内容とはどんなものなのか。普通銀行とはなにが違うのでしょうか。加えて、主要信託銀行はどのように成長してきたのかを確認していきましょう。
 

信託とは

そもそも「信託」とは何なのか。ここから解説していきます。
 
信託とは、委託者が所有する金銭・土地などの財産を、受益者のために受託者に託し、運用・管理を任せる法的な枠組みのことを言います。具体的にここで言う資産とは、金銭、有価証券、動産、不動産など、多岐に渡ります。そして、受託者が運用して発生した利益を、受託者に還元することで仕組みが成り立っています。
 

信託銀行とは

信託銀行の業務は3つ

では次に、その信託の名が付く「信託銀行」とは何なのか。ここを解説していきます。
 
信託銀行が、業務としている領域は大きく分けて3つあります。
 
 
1.普通銀行と同じ銀行業務:預金業務、貸出業務、為替業務、付随業務(有価証券の売買、デリバティブ取引等)
 
2.狭義の意味での信託業務:金銭の信託、有価証券の信託、金銭債権の信託、動・不動産の信託
 
3.併営業務:不動産関連業務(仲介売買、鑑定等)、相続関連業務(遺言執行、遺産整理等)
 
 
また、普通銀行は2、3を行うことを法律で禁じられており、1の部分しか運営することができません。
 

信託銀行の個人・法人向け業務

さらに、個人・法人の具体的な商品・サービスも以下に記載します。
 
個人向け
貯蓄商品、投資信託、保険商品、住宅ローン、不動産仲介、財産管理、遺言執行、遺産整理 等
 
法人向け
資産金融、ファイナンス、年金業務、資産運用、資産管理、不動産仲介、不動産受託・管理、証券代行業務、市場国際業務 等
 

信託銀行のメリット

信託銀行であるメリットとしては、広い業務領域をカバーしているため、お客様の多様なニーズに合わせたサービスの提案ができることです。さらに、信託銀行の専門性の高さは、急激に変化する環境、そしてニーズにも対応することができます。つまり、資産全般のコンサルティングができると言えるでしょう。
 

信託銀行のデメリット

しかしながら、信託銀行は普通銀行に比べて店舗数が少ないため、顧客が利用しにくいというデメリットも存在します。
 

主要信託銀行はどんな銀行か

主要信託銀行の紹介

では、どんな信託銀行があるのか、主要な2行について簡単に見ていきます。
 

国内信託1位、三井住友信託銀行

実は、三井住友フィナンシャルグループとは資本関係のない三井住友信託銀行は、三井住友トラスト・ホールディングス、傘下子会社の信託銀行です。住友信託銀行と中央三井信託銀行の2行が合併して2011年に誕生しました。信託業務で国内1位、銀行業務で国内5位の規模を誇ります。
 
2015年12月には米シティグループの日本でのクレジットカード事業の買収を完了させ、新たな顧客層を獲得しました。従来よりも若い富裕層への営業の強化を可能にし、クレジットカード事業の強化とリテール事業の商品・サービスの充実を狙います。
以前には、ゆうちょ銀行と日本郵便、証券大手の野村ホールディングスと共同で資産運用会社を設立。地銀大手の横浜銀行とも、資産運用会社を共同設立と躍進しています。三井住友信託銀行の強みは、規模の大きさを利用した新規顧客の獲得といえるでしょう。
 
*株式会社略
 

国内信託2位、三菱UFJ信託銀行

安定的な収益を稼ぎ出すことができる資産管理関連ビジネスの強化を戦略とする三菱UFJ信託銀行は、2016年10月に、当時の管理残高約6兆円を抱える米資産管理会社のライデックス・ファンド・サービシズを買収しました。その結果、総合的な管理を手がける金融機関で世界6位になりました。
 
また、信託業務においては、三井住友信託銀行に次ぎ国内2位となっています。三菱UFJ信託銀行の強みは、三菱UFJフィナンシャルグループの顧客基盤を利用できるところでしょう。三菱UFJ信託銀行は2016年7月にアメリカ投資信託市場で資産管理業務に参入するなど、海外での影響力も高めています。
 
*株式会社略
 

信託銀行、今後の展望

現在の日本は高齢化社会であり、この先更なる高齢化が予想されます。信託銀行のリテール領域は主に高齢者の方が顧客基盤であるため、この傾向は信託銀行にとって追い風となります。信託銀行は低金利の長期化によって利ざやが先細る一方で、高齢化による事業承継、長期目線の資産運用などのコンサルティング、企業年金などの事業が成長してくると見られています。
 
しかしながら、高齢化に目を向けながらも環境の変化に適応していく姿を忘れてはいけません。信託銀行のこれからの動向に目が離せません。
 
 
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
 

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