おもちゃの会社、バンダイナムコのしたたかな経営戦略

はじめに

株式会社バンダイナムコホールディングス(以下、バンダイナムコ)は、2005年9月に株式会社バンダイ(以下、旧バンダイ)と株式会社ナムコ(以下、旧ナムコ)の経営統合により設立された会社です。

バンダイナムコといえば、2017年の夏に国内最大級の仮想現実(VR)施設を東京の新宿に開業するとされ、話題になっています。今回はそんな最新技術を活用したエンターテインメント事業を行う、バンダイナムコを見ていきます。

バンダイナムコの概略

旧バンダイは1950年7月に株式会社萬代屋として設立されました。セルロイド製玩具を主として、その他に金属玩具(乗り物)、ゴム製浮き輪などの販売業務を行っていました。

一方、旧ナムコは1955年に誕生。設立時の社名は、有限会社中村製作所でした。百貨店等における遊園施設の運営、いわゆる、アミューズメント事業から始まり、当初は木馬2台の設置から始まりました。

経営統合後のヒット商品には、2012年の「仮面ライダー」関連商品、「アイカツ!」関連商品、「アイドルマスター」はゲームソフト、ソーシャルゲーム、ライブ、音楽など様々なカテゴリーで話題となりました。2014年には、子供に爆発的ヒットした「妖怪ウォッチ」の関連商品があります。

バインダイナムコの経営戦略

バンダイナムコの事業内容

バンダイナムコの事業内容としましては、以下のようなものが挙げられます。(企業HPより抜粋)

  • トイホビーSBU
    玩具、模型、カプセルトイ、カード、菓子・食品、
    アパレルなどの製造・販売

 

  • ネットワークエンターテインメントSBU
    ネットワークコンテンツの企画・開発・配信、
    家庭用ゲームソフト、業務用ゲーム機などの企画・開発・販売、
    アミューズメント施設などの企画・運営

 

  • 映像音楽プロデュースSBU
    アニメーションの企画・制作・プロデュース、映像・音楽ソフトの企画・制作・販売、
    オンデマンド映像の配信、ライブエンターテインメント事業

 

  • 関連事業会社
    流通・物流、印刷、管理業務など各SBUをサポートする事業

 

バンダイナムコの知的財産戦略

バンダイナムコは知的財産を軸とする戦略で経営しています。

知的財産はIntellectual Property、略してIPとも呼ばれたりします。

すなわち、これを軸とする戦略とはキャラクターなどの知的財産を最適なタイミングで、その商品またはサービスを提供することで、最大の価値を提供するというものです。

バンダイナムコ、映像音楽プロデュース事業に参入

さらに、バンダイナムコは新たな事業領域の開拓に動いています。

その事業は「映像音楽プロデュース」です。これは自社キャラクターをアニメや音楽CD、ライブイベントなど多くのカテゴリーにおいてプロデュースすることで、収益獲得の場を広げるというものです。

バンダイナムコが映像音楽プロデュース事業に参入する理由

では、バンダイナムコは、なぜこのような行動をとったのでしょうか。

その理由の一つに、国内の少子化が挙げられます。徐々に縮小していく子供関連ビジネス市場において、玩具やゲームといったそれ単体で完結してしまうビジネスでは、行き先が暗いのは見えています。それを打開する事業として、例えば「アイドル」が歌手、女優、モデルとして活躍し、更に自身のアパレルブランドを立ち上げるように、映像音楽プロデュースにおいて、架空のキャラクターが、さまざまな分野に進出し活躍するといった発想です。

その良い例が「ラブライブ!」でしょう。一度人気キャラクターを創出することができれば、そのキャラクターの版権使用料を、収益として得られる機会が増えます。このビジネスモデルを築き、安定的な収入基盤を構築することが成長の軸になるでしょう。

バンダイナムコの財務情報

現在、バンダイナムコは家庭用ゲーム、スマホゲーム、「ラブライブ!」の各コンテンツ、「機動戦士ガンダム」などの玩具の売上が好調です。

下の表に過去3年分の財務情報を掲げました。事業面において、トイホビー事業、ネットワークエンターテインメント事業のネットワークコンテンツ及び海外の家庭用ゲームソフト、映像音楽プロデュース事業が好調に推移しましたが、ネットワークエンターテインメント事業の業務用ゲーム機の販売が苦戦したようです。その結果、2015年3月期から2016年3月期にかけての売上高の伸びに対して営業利益にインパクトがあります。

Table バンダイナムコの連結損益計算書・財務指標
(企業HP: http://www.bandainamco.co.jp/ir/financial/index.html より集計)

バンダイナムコの統合時代

バンダイナムコ、統合がもたらした悩み

バンダイナムコの代表取締役社長である田口三昭氏によると、経営戦略の軸は上述したとおり「IP軸戦略」だといいます。それを可能にするには、旧バンダイ、旧ナムコそれぞれのコンテンツの特性を把握し、最大価値の商品またはサービスに育てることが大切となってきます。

経営統合当初は、旧バンダイと旧ナムコの企業風土の違いから伸び悩みがあったといいます。旧バンダイはキャラクタービジネスなため、人気があるうちに消費者に商品・サービスを提供しなければなりませんでした。つまり、スピード重視の経営です。一方で旧ナムコはというと、ヒットするゲームを製作するために、商品の開発に長い時間を要します。ある意味、スピード偏重の姿勢とは衝突する考え方でした。

バンダイナムコ、企業風土の違いを克服

この差異を埋め合わせるべく、「最速で良質なものを」追求したところ、お互いの長所を失ってしまったようです。しかし、徐々に旧バンダイと旧ナムコ相互の社員理解が進み、15年3月期ごろから経営目標を達成できるようになりました。お互いの良さが出てきたのでしょう。今後は更に飛躍して欲しいですね。

バンダイナムコ、今後の戦略 人気キャラクターを生かし海外へ

最後に、バンダイナムコは今後アジアにも、更に注力していくようです。

海外ではガンダムの公式動画の視聴回数は、2016年6月までに、累計6億回以上になるほど評価が高く、この先需要のある国に商品・サービスの提供をきめ細かく提供していく予定です。現在も日本のキャラクターは海外で活躍していますが、さらに認知されるよう頑張ってほしいですね。今後のバンダイナムコの動向に期待です。

沿革:参照URL
https://www.bandainamco.co.jp/ir/library/pdf/securities/20160331_Report.pdf
http://www.bandai.co.jp/corporate/history60.html
http://bandainamcoent.co.jp/corporate/history/namco/
https://www.bandainamco.co.jp/about/history.html
http://bandainamcoent.co.jp/corporate/history/namco/history50.php
事業内容:参照URL
https://www.bandainamco.co.jp/ir/library/pdf/securities/20160331_Report.pdf
http://www.bandainamco.co.jp/group/index.html
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO13738400W7A300C1TI5000/
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO95908610Y6A100C1000000/
財務情報:参照URL
http://www.nikkei.com/article/DGXLMS7832H2SHX10C17A2000000/
今後の展望:参照URL
https://www.weekly-economist.com/2016/05/03/経営者-編集長インタビュー-田口三昭-バンダイナムコホールディングス社長-2016年5月3-10日合併号/

執筆者:パイルズガレージ編集部
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス


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