ヤマト、中国EC大手と提携で海外宅配強化 日本流の高品質サービスに「強み」 ヤマトの海外展開を解説

はじめに

2017年6月28日、ヤマト運輸株式会社(ヤマト運輸)などで知られるヤマトホールディングス株式会社(以下、ヤマトHD)が中国の大手ネット通販会社である京東集団(JDドットコム 以下、京東)との提携強化に同意しました。(http://www.yamatohd.co.jp/news/h29/h29_36_01news.html)
 
中国通販事業と提携することにより、ヤマトHDは中国全土での物流網の拡充および海外事業の拡大を目指します。
 
ネット通販ビジネスの成長に伴い、宅急便の国内需要が増加していることは最近よく話題に上りますね。2017年4月、ヤマト運輸がアマゾンジャパンの当日配達サービスから撤退することを発表したことは、記憶に新しいです。(詳しくは、5月31日の記事「最大のパートナーのヤマト離脱 アマゾン、サービス維持できるか?」をご覧ください。https://piles-garage.com/article/1739
 
実はヤマトHD、海外進出を既に始めています。私自身、香港に行くとヤマトの配達員の方々を必ず見かけます。今回はヤマトHDの海外事業展開について考えてみましょう。
 

ヤマトHDの海外進出概略

ヤマトHDの海外進出沿革

沿革
2000年10月 台湾にて宅急便事業開始
2008年4月「ヤマトロジスティクスインド株式会社」設立
2010年1月 シンガポール、上海市内にて宅急便事業開始
2011年2月 香港にて宅急便事業開始
2011年9月 マレーシアにて宅急便事業開始
2013年9月 「インドネシアヤマト株式会社」設立
2014年1月 「ヤマトアジア株式会社」設立
2015年1月 「メキシコヤマト運輸株式会社」設立
2015年2月 「ヤマトロジスティクスベトナム有限会社」設立
http://www.yamato-hd.co.jp/company/pdf/annai.pdf
 

ヤマトHDの事業概要

まずヤマトHDは宅配サービスのイメージが強いですが、以下のの7つの事業から成ることに留意してください。
 

  1. デリバリー事業(小口貨物輸送サービス)
  2. BIZ-ロジ事業(企業間物流サービス)
  3. ホームコンビニエンス事業(生活支援サービス)
  4. e-ビジネス事業(情報システム開発)
  5. フィナンシャル事業(決済などの金融サービス)
  6. オートワークス事業(車両整備サービスなど)
  7. その他の事業(幹線輸送、人材派遣など)

 

ヤマトHDの海外展開事業

BIZ-ロジ事業(企業間物流サービス)においては北米、ヨーロッパを含む23の国と地域で企業向けのロジスティクス事業を展開。国際貨物の輸出入サービスを提供しています。
 
ホームコンビニエンス事業(生活支援サービス)に含まれる国際引越し事業も同様に21以上の国と地域で手がけています。
 
皆さんが普段から利用している個人顧客への宅配は、デリバリー事業(小口貨物輸送サービス)(以下、宅配便事業)になります。こちらの宅配便事業を展開している国と地域は台湾、上海、シンガポール、香港、マレーシア及び、タイの6つとなっています。(タイについてはヤマトHDニュースリリースより 2017年1月3日開始 http://www.yamato-hd.co.jp/news/h28/h28_104_01news.html
 

ヤマトHDの手厚い宅配便サービス、海外で強み

宅配便事業を手がけるヤマトHDは、
 

  • 配送、受取日指定
  • クール宅急便
  • 夜間配達
  • 無料再配達

 
など荷物の送り主だけでなく、受け取り手へのサービスも徹底的に追求するのが特徴です。
 
上述したように、現在6の国と地域に進出しているヤマトHDの宅配便事業ですが、海外ではこれらのサービスは珍しく、高いサービス水準が強みとなっています。
 
たとえば、「クール宅急便サービス」は小口の荷物を低温保存したまま配達することが可能なため、食品通販会社にとって非常に魅力的なサービスになります。
 

ヤマトHDの財務情報から海外事業を読む


Chart 1 ヤマトHDの総営業収益
 

Chart 2 海外営業収益および海外収益比率
*(両出典) ヤマトホールディングス株式会社決算短信より
http://www.yamato-hd.co.jp/investors/financials/results/index.html
 
Chart 1を見ると、ヤマトHD全体の営業収益は右肩上がりに増加しています。
 
しかし、Chart 2を見ると海外収益は全体の2%に留まっています。また、直近3年間は海外営業収益自体も減少気味です。
 
ちなみに、アメリカ最大手の物流会社FedExの2016年度海外収益比率は24%です。
(FedEx Annual Report 2016, p.74 http://s1.q4cdn.com/714383399/files/doc_financials/annual/FedEx_2016_Annual_Report.pdf
 
FedExと単純に比較することはできませんが、ヤマトHDもまだまだ海外市場拡大の余地があるように見えます。
 
2016年度ヤマトHDの収益のうち、78%が宅配便事業からの収益となっています。この事実を踏まえると、まだ台湾、上海、シンガポール、香港、マレーシア、タイのみの進出となっている宅配便事業が、更なる海外展開によってマーケットを拡大すれば、ヤマトHDは大幅に収益を伸ばすことが期待されます。
 

ヤマトHD、中国EC大手と提携の狙いとは

ヤマトHDは、この提携により中国全土に宅配ネットワークを構築し、さらなる海外市場開拓を目指します。特に宅配便事業の海外進出強化が期待されます。
 
京東は、この提携によりヤマトHDの保冷輸送ノウハウを利用し、日本の生鮮食品の配送等さらなる通販サービス展開を目指します。これは、中国における中間層の増加、刺身など日本の生鮮食品ブームの加熱に対応するためだと考えられます。
 
この2社の提携、京東にとっては通販事業展開、ヤマトHDにとっては海外進出拡大がそれぞれの主な狙いですが、日中間の流通経路が整うことにより、日本製品の市場が大きく開拓されるかもしれません。
 
今後もヤマトHDの展開に注目していきましょう。
 
 
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
 

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