社会起業家とは 一般の起業との違い、社会起業の事例

近年社会起業家と呼ばれる方が増えていますが、社会起業家とはどのような人を指しているのでしょうか?また一般的な起業との違いや社会起業には、どの様な事例があるのでしょうか?この記事では、社会起業家について解説していきます。

 

社会起業家の定義


社会起業家とは、どのようなビジネスモデルで起業した人をいうのでしょうか?一般的に起業する起業家と何か違いがあるのでしょうか?ここでは、社会起業家の定義と一般的な起業との違いについて解説します。

  

経済産業省の定義

経済産業省で定義されている社会起業家とは、国際社会や地域社会における環境保護や高齢者及び障がい者の福祉・介護、子育て支援やまちづくり、観光・地域創生などの多種多様な社会的課題をビジネスの手法を用いて課題解決に取り組んでいる起業家のことを指します。

社会起業を推進していくことで、行政のコスト削減が可能になるだけでなく、地域の雇用創出など地域活性化にもつながっていくことを目的としています。

  

社会起業と一般の起業の大きな違いは事業の目的

社会起業は、事業を通じて社会的課題を解決していくビジネスです。一方、一般的に起業する場合は、「自分がやりたいことを仕事にしたい」や「自分の力で利益を出したい」などという目的の方が多く、社会起業の目的とは異なります。

しかし、事業を継続していくためにビジネスモデルを構築する必要性や、起業時の運営計画、資金調達方法など一般的な起業との共通点は多く、完全に別個なものとは考えにくいです。よって社会起業とは、一般的な起業に社会への取り組みを組み込んだ起業スタイルです。

 

社会起業家の事例


社会起業の定義と一般の起業との違いを紹介してきましたが、社会起業には、具体的にどのような事例が存在するのでしょうか?ここでは、4人の社会起業家の事例について紹介します。

  

株式会社マザーハウス 山口絵理子さん

「株式会社マザーハウス」は、山口絵理子さんが2006年に「途上国から世界に通用するブランド」を理念に設立されました。インターネットで「アジア 最貧国」と検索してバングラデシュに興味を持ち、バングラデシュを訪問し、バングラデシュの貧困と汚職といった現状を目の当たりにしました。

その後バングラデシュBRAC大学院に入学してバングラデシュのことを学び会社を設立しました。政府の開発援助に疑問を感じた山口さんは、バングラデシュのダッカでジュードを材料にした日本で販売するカバン工場を設立しバングラデシュの雇用創出に貢献しています。

また、バングラデシュで学校に通えない子どもたちにスクールバッジを提供する事業を計画したり、2007年11月に発生したサイクロンで被害を受けたバングラデシュに、毛布や鍋を配布するなどバングラデシュの復興に尽力されています。2012年には、内閣府から「世界で活躍し「日本」を発信する日本人」の一人に選ばれています。

2019年10月時点で、バングラデシュ以外にもネパール、インドネシア、スリランカ、ミャンマー、インドにて自社工場や提携工房でモノづくりを行って日本、台湾、香港、シンガポールの直営店でバック、ジュエリー、アパレルの販売をしてアジアの広い地域で、社会貢献をされています。

  

株式会社andu amet 鮫島弘子さん

鮫島弘子さんは、化粧品メーカーにデザイナーとして就職しましたが、大量生産・大量消費のモノづくりに疑問を持ったため3年間で退職されました。その後青年海外協力隊に応募して、エチオピアに赴任した時に世界最高峰と言われる羊皮に出会い羊皮を活かした事業ビジネスの構想が生まれました。

帰国後に外資系ラグジュアリーブランドに入社しマーケティングを学んだ後に、2012年世界最高峰のエチオピアンシープスキンを贅沢に使用したレザー製品の企画・製造・販売を行う「株式会社andu amet」を設立しました。

コンセプト「Happy!」を定義し、「使っている人が幸せになるようなデザイン」について日々考えられていて日本人の伝統芸能とエチオピア人の色彩感覚の融合を目指した製品を製造しています。

また製造工程で扱う革は、端切れなどの産業廃棄物になりやすいですが、端切れが出にくいデザインを採用していたり、工場の汚水を垂れ流さないように浄化設備の完備なだ自然環境を考慮した製品作りをしています。エチオピアに自社工場を持つなどエチオピアの雇用創出にも大きく貢献されていて、日本とエチオピアを繋ぐ懸け橋的な存在です。

  

株式会社いろどり 横石知二さん

横石知二さんは、徳島県上勝町農協に営農指導員として入所し、地元の農産物の売上増進に努めていました。その時に料理に添える様々な葉っぱがあることに着目して、1986年に「彩(いろどり)」商品を開発し、「つまもの事業」を開始するなど山の資源を活かした商品を開発して1996年に上勝町に転籍し、「株式会社いろどり」の設立に携わっていきました。

株式会社いろどりは、地元の高齢者を活かせる様々なシステムを開発して、高齢化と過疎化という課題を抱えていた町の再生に成功しました。その後副社長を経て、2009年5月に代表取締役社長に就任しました。

株式会社いろどりは、平均年齢70歳の高齢者がイキイキと働いていて、高い収入を得ていて「究極の高齢者福祉産業」と呼ばれて、日本だけでなく世界各国から視察や取材の申し込みが殺到しています。

そんな功績が認められて、「世界を変える社会起業家100人」に選出され、2012年には、総務省から「地域情報化アドバイザー」に、2014年には、農林水産省から「ディスカバー農山漁村の宝」の有識者に任命されています。高齢化社会を迎えている日本におけるビジネスモデルとして、注目されています。

  

株式会社HASUNA 白木夏子さん

白木夏子さんはイギリスのロンドン大学を卒業後、国際機関や投資ファンドを経て2009年に「株式会社HASUNA」を設立し、ジュエリーブランドHASUNAを立ち上げました。

白木さんは、小さい頃から好奇心旺盛で様々なことや常識とされていることに「本当にそうなのか?」という疑問を抱いていて、ジュエリーブランドを立ち上げたのもジュエリー業界の常識を疑ったからでした。

白木さんは、ジュエリー業界の採掘地の環境破壊、自児童労働や強制労働、紛争などジュエリー業界に存在していた無視されている常識を疑い、本来は、人や社会、自然環境に配慮してジュエリーを制作することができると考えジュエリー業界の現実を変えてたい考えました。

そのために「産地が特定できる鉱石を直接仕入れる仕組みを作れれば、ジュエリー業界をエシカルにできる」という志を持ちHASUNAの活動に取り組まれています。

2018年には、既存のパートナーシップ問い直すプロジェクト「Re.ing」の立ち上げに携わるなど、「こうあるべき」を疑い追求するスタイルで、「未来を創る日本の女性10人」に選出されるなど世界的にも注目を集める社会起業家として活動されています。

 

社会起業家に求められるのは「志」


いかがでしたか?4人の社会起業家を紹介してきましたが、4人全員に共通しているのが誰かのためや何かに貢献したいという強い志です。特性を活かしたビジネスモデルを構築して実行していくには多くの労力と時間を費やす必要があり、一朝一夕でできることではありません。

それでも、強い志を持って取り組んだ結果4人の社会起業家の方々は、起動に乗せることができ社会貢献に尽力されています。一般的な起業の場合にも求められますが、特に社会起業家を目指していきたいならば揺るがない強い志を持ちましょう。