前代未聞の意見不表明とは? 監査意見とは? 東芝決算を解説

はじめに

2017年4月12日の日経新聞で、11日に株式会社東芝(以下、東芝)が2度延長していた2016年4~12月期の連結決算を発表したことが報道されました。長らく延長していた末に発表した決算であるため非常に話題になっています。
 
そんな中、担当監査法人であるPwCあらた監査法人から監査意見を貰えない、意見不表明での決算発表ということも話題になりました。
 
今回は、東芝の決算発表と監査意見などについて解説いたします。
 

東芝、意見不表明決算の概要

東芝、純損失が純資産に与えた大きな影響

今回東芝は、延長していた2017年4~12月の決算を発表しました。その内容で一番衝撃的な内容が、親会社株主に帰属する当期純損益と、それが純資産の部の株主資本に与えた影響です。
 
2016年9月末時点の東芝の純資産の部は以下のような状況になります。(単位:百万円、以下同様)
 

Table 1 東芝のBS 純資産の部 2016年9月末
[http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/library/er/er2016/q2/ter2016q2.pdf]
 
出資部分である資本金、資本剰余金と、稼いだ利益の累計である利益剰余金は、プラスになっており、この段階では、財政状態に大きな問題があるとはいえません。
 
では、今回の決算発表で明らかになった2016年12月末時点の純資産の部の状況を見て見ましょう。
 

Table 2 東芝のBS 純資産の部 2016年12月末
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/library/er/er2016/q3/ter2016q3.pdf
 
今回の2016年4月~12月の最終損益である親会社株主に帰属する当期純損益は、△532,512百万円という非常に厳しい結果となりました。それが利益剰余金を通じて株主資本に大きなインパクトを与えました。損益計算書を見ると、のれんの減損損失716,563百万円が利益に大きく影響していることがわかります。東芝の決算説明資料には、原子力事業でのれんの減損が多額に発生したとあります。
 

東芝が大規模減損を計上した原因

このような減損はなぜ生じたのでしょうか?報道では子会社のウェスチングハウスの経営状態の悪化が主たる原因であると言われています。東日本大震災を期に、世界の原子力安全規制は厳しくなり、従来の予測以上にコストがかさみ、結果的に減損を計上せざるを得ない状況になってしまいました。
 

監査法人による意見不表明とは

上記のように決算の結果を分析することも大切ですが、今回の決算でそれ以上に大切なことは、監査意見が不表明であるということです。
 
財務諸表の意見が不表明であったとは、どのようなことを意味しているのでしょうか。
 
公認会計士による監査は、会社が発行する財務諸表の経理の状況を中心に、そこに記載してある数値が適正なものであるかどうかについて意見を表明し、財務諸表利用者に適切な投資判断を促すことが目的です。その財務諸表に概ね問題がなければ適正意見、部分的に問題があれば限定付適正意見、全体的に問題があれば不適正意見を表明します。
 
今回の東芝は、意見不表明というケースで上記の三つのどれにも当てはまりません。意見不表明とは、監査人が監査をする上で必要な手続きができなかったりした場合、監査人はその財務諸表が適正か否かわからないため、意見を表明しないというものです。したがって、その財務諸表は、適正な可能性もあれば、不適正な可能性もあります。
 
このことを踏まえると、上記で説明した東芝の財務データも、東芝が発表した決算も、すべてが適正か否か、お墨付きがない状況です。したがって、もしかしたら発表された損失以上に損失が発生している可能性もあるということです。
 

まとめ

東芝は、経営再建を進めています。主力事業である半導体事業を分社化し、他社に売却しようとしています。
 
しかし、このような決算の状況で、証券取引所の上場規定にも抵触する恐れがあり、東芝はさまざまな課題に直面しています。CFOを目指している方であれば、このような事例を把握していることも大切になるでしょう。
 
 
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
 

財務・会計系コンサルティング会社。
ベンチャー企業やローカル企業にCFOコンサルティングを行っています。
「経営者の輩出」を企業理念とし会計や財務の実務支援能力だけでなく、 CFOとして求められる知識や経営センスをより短期間で身に付け、育成することを目指しています。
エスネットワークスは、「経営者の視点でニーズを掴み、経営者の視点で課題を解決し続ける、最強パートナー」を実現すべく、成長し続けています。
 
■エスネットワークスのサイトはこちら
株式会社エスネットワークス
■mannakaのサイトはこちら
株式会社mannaka