製造業の景気は良いのか? ボーナスから考察、日本経済の景気

はじめに

2017年5月22日(月)の日本経済新聞に、全産業の夏のボーナス支給額が2.75%減少したと報じられました。
アベノミクスでは賃上げが目標の一つだったため、大企業を中心に賃上げが行われていました。
 
今回は2016年度の製造業を中心にボーナスの変動の背景を解説していきます。
 

製造業の規模と業種によるボーナス比較

日経新聞の統計は、上場企業をもとに2017年の夏のボーナスを対象にアンケートを取ったもので、アンケートをとった製造業180社平均で、約3%のボーナスが減少したと報告されました。
本記事では厚生労働省の毎月勤労統計調査をもとに、企業の規模別で製造業の各業種の2017年度の夏のボーナスの前年度比をまとめました。詳細をFigure 1に示します。このデータは中小企業も対象としているのですが、平成28年度は製造業全体で0.5%ほど夏のボーナスが増加しました。

Figure 1 一人平均支給額における各業種の事業所規模別の夏のボーナスの前年度比(製造業、平成28年度)
(出典 : 厚生労働省毎月勤労統計調査、URL: http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/OtherList.do?bid=000001029072&cycode=7)
 
プラスチックや印刷業界でボーナスの増加が見られました。プラスチック業界や印刷業界では原料として原油を使うため、シェールガス革命による石油価格の低下で原材料費が安くなり、業界全体として業績が向上したと考えられます。
 
一方でゴム、鉄鋼、金属などの素材系の業界ではボーナスが前年度を下回りました。これらの業界では中国や韓国・インドなどの国で技術力が向上したため、低価格競争が激化したため業績が悪化したと考えられます。
 
従業員数別で見てみると、従業員数が30人未満の零細企業ではボーナスの前年比からの変動が大きいことがわかります。零細企業では年々の業績の変動が激しく、それに伴う人件費も大きく変わることがわかります。
 
また製造業全体で、500人以上の従業員を持つ企業では0.5%のボーナスの減少が見られましたが、30~99人、100人~499人の規模の中堅企業ではボーナスが前年に比べて3~4%増加しているのが分かります。これらの企業では海外との低価格競争にさらされることが少なく、国内の需要が回復したために業績が向上したものと考えられます。
 

製造業の従業員規模による出勤日数と給与比較

続いて製造業の従業員数別の所定外給与と出勤日数を示したものをFigure 2に示します。データは2017年3月のものに対し、2016年3月と比較したものです。
 
どの規模においても1ヶ月あたりの出勤の日数が減少しており、従業員の働く時間が減少していることがわかります。それにもかかわらず、所定外給与がほとんどの規模で増加しています。特に従業員数が30~99人の中小企業では、月の出勤日数が平均半日ほど減少しているにもかかわらず、所定外給与の支払額は平均で6%近く増加しており、この規模の企業では人手不足が顕著で、人手の確保のために高い給与を支払う必要があることがわかります。

Figure 2 2017年3月の従業員数別の製造業の所定外給与と出勤日数の前年度比
(出典 : 厚生労働省毎月勤労統計調査)
 

製造業の動向まとめ

以上、給料から製造業の近年の動向を見てきました。
 
業界、従業員数別で動向が大きく異なりますが、働く時間は製造業全体で減少していることが分かりました。日本では地方や建設業、運送業を中心に人手が不足しているため、女性や海外からの移住者を積極活用し、AIや自動化などで業務の削減を進めていって欲しいです。
 
 
編集者:株式会社mannaka
協賛 :株式会社エスネットワークス
 

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