ストーリーで共感を生む、新しいPRのソリューション「PR Table」誕生のきっかけと、大堀航氏が考える組織のカタチ

今回は、株式会社PR Table 代表取締役社長 大堀 航 氏にお話を伺いました。同社が展開するサービス『PR Table』は「ストーリーで共感を生む、新しいPRのソリューション」として、多くの地方・中小企業から上場企業にまで選ばれています。本対談では、「PR Table誕生のきっかけ」と、大堀氏が考える「これからの時代の組織」などについてじっくりお話をお伺いしました。
 
以下
大堀:株式会社PR Table 代表取締役社長 大堀 航
柴田:株式会社mannaka 代表取締役 柴田 雄平
 

日本の会社のエモい部分をもっと発信できるようにしていきたい

柴田
では、まずはじめにPR Tableの会社説明と、会社を始めたきっかけについて教えてください。
 
大堀
PR Tableは固い言葉で言うと、広報支援サービスを提供する会社です。カテゴリーとしては、企業の情報発信という点でプレスリリース配信サービスの「PR TIMES」的でもあり、採用広報という側面では「Wantedly」、コンテンツがあつまるプラットフォーム面では「NewsPicks」的でもあります。
 
会社を設立したのは2014年12月で、僕がちょうど30歳の時でした。僕は、社会人の最初の頃はあるPR会社にいて、起業する気はほとんどなかったんですよ。その会社で学んだのは、リレーションズにはインベスターリレーションズ、エンプロイーリレーションズなどいろんなリレーションズがあって、それらをうまく作るためにどうするか? というのが本来のPRの仕事だということでした。PRの仕事は「メディアに取り上げてもらうための仕事」ではないんです。PRの仕事をもっとゼロから追究したいと思ったので、当時ベンチャー企業だったオンライン英会話事業を展開するレアジョブに転職しました。
 
レアジョブでは、僕はユーザー・メディア・採用など、あらゆるステークホルダーとコミュニケーションを取る必要がある広報チームにいました。サービス広報をはじめ、会社のコーポレートブランドを一新する際に、CI変更に携わるなど、本当に様々な活動をさせてもらいました。その活動の中で、パブリックリレーションズは経営視点で見ていかないといけないんだと思うようになったんです。
 
プレスリリースは発信するだけだとメディアに届く記事にならないので、会社内のエモい内容をとにかく発信し続けることが、社内の人たちに対しても、社外に対しての広報の役割としてもきっと貢献できるだろうと考えるようになりました。でも、エモい情報を発信するのって結構恥ずかしいことなんですよね。特に日本にはそういう会社が多いので、その敷居を下げるための場所として用意したのがこのPR Tableだったというわけです。そして内容を作るサポートもしたらいいんじゃないかというのが最初の構想でした。
 

 
柴田
最初、起業した時にどんなことが大変でしたか?
 
大堀
まず商材が決まっていなかったことが大変でしたね。僕らは創業以来やっていることは変わらず、企業が継続的に情報発信できるような状態を作ることですが、採用広報というトレンドもあり、採用の領域に攻めていったら、広報部より人事部の方が、もっと情報発信をしないといけないという課題意識があって、それが僕らの転換ポイントになったりしました。採用に関しては、自社の伝えるコンテンツが増えると、伝える工数が減り、面接の回数を減らすことができたりします。面接に来る人にはまずコンテンツを読んできてもらえばいいですからね。

参考:株式会社モバイルファクトリーのストーリーや最新情報|PR Table
学生エンジニア採用向けの事例としては、ソーシャルアプリ・モバイルコンテンツと幅広く事業を展開しているモバイルファクトリーさんがあります。活躍している若手エンジニアの想いや働き方のストーリーを用意することで、エンジニアが参加する採用活動の工数削減や、企業の魅力を効果的に伝える部分で役立てていただいています。

参考:株式会社ベーシックのストーリーや最新情報|PR Table
また、採用広報での活用としては、WEBマーケティングツール「ferret One」を提供するベーシックさんも同様です。面接前に会社の想いや背景などの根底となる文脈をストーリーで伝えることによって、共感度の高い方のスクリーニングや、採用フローの短縮へと繋げられています。
僕らの思想としては、まず能動的に探している人たちに対してちゃんと情報を届けようというのがあり、それに加えて特集を作って新しい人にもリーチできるようにやるという順番なんですね。
それから最近では、自社で発信するコンテンツを見直さないといけないと思っているお客さんも多いです。なの で、僕らがストーリーを製作代行するよりも、企業が自分たちで作れるようになる仕組みを裏側で提供し始めています。

 

経営資源の投下が経営者の役割と認識し、どんどん権限移譲をしている

柴田
続いて、PR Tableの社内のメンバーについて教えてください。
 
大堀
平均年齢は30歳くらい、男女比は半々ですかね。時短勤務で2児の子供がいる働くママがいたり、地方の女子アナをやっていた人がいたり、最近いろんな会社からジョインしてくれるメンバーがいますね。なので、最近になってMBO(Management by objectives)とかコンピテンシーを作って評価制度を整え始めました。HRブレインというSaasなんかを使っていて結構うまくいっています。採用面談ではこの評価基準とかを全部オープンにして説明をしています。
 

 
コンピテンシーとMBOについては、コンピテンシーは定性的にプロセスの評価に軸を置いていて、MBOは数字ベースなので執行役員・マネージャーになってくるとMBOの方がウェイトが大きいです。それは経営陣で決めています。
 
1on1は、僕は全員に対してはやっていなくて、事業部のマネージャーがやっています。基本的には僕の手は離すようにしていて、特に意識しているのは経営陣の目線を下げないような仕組みにするということですね。どうしても業務の改善などをやっていると、目線が下がってきてしまうので、だから結構権限移譲してやっています。僕は予算を持たずに、今は採用をやっている感じですね。
 
柴田
経営資源を投下するのが経営者の役割だと認識してそこに注力しているんですね。
 
大堀
そうですね。でもここに来るまでには右往左往して、結構大変だったんですよ。誰に何を聞いていいかわからない状態で、この人に聞いたらああなる、でもあの人はこう言ってた、みたいな。なので、うちはきちんとピラミッドを作ろうと決めたんです。毎週事業部でやっているPDCAミーティングに僕は出ていなくて、議事録だけ見て、気になることが何かあれば言うというようにしています。基本的にはマネージャーにどんどん権限を委譲していく形で進めていこうと考えています。
 

 

大堀氏が経営指標として従業員エンゲージメントが大事だと考える理由

柴田
「企業広報のこれから」について聞いてみたいんですけど、大堀さんが今まで出会った中で、魅力的な企業ってどんな会社ですか?
 
大堀
僕らがいろんな会社を見てきた中で、一番大事な指標は従業員エンゲージメントかなと思います。この指標が高い企業は、ベースとして、しっかり社員とコミュニケーションが取れていたり、社内報で情報発信をしていたりします。なので、従業員エンゲージメントが高い企業は良い会社だと思います。メディアに一発取り上げられるために、メディアリレーションズをやるのではなく、継続的に情報発信をすることは大事なんですよね。
例えば、従業員エンゲージメントをIRに繋げられないか、ということを考えていたりする会社もありました。その会社では従業員に対して持株会をやったり、事業部長が株主に対して説明するとか、そういうことを通じてIRへの意識をどんどん高めていったということでした。そのために、社内報や社内向けコンテンツに投資をしたらしいんですが、そうしたら株価が2年で8倍になったというんです。そうすると「今、うちの部署はこうだけど、IRでこういう風に言っているから、こんなこともできるんじゃないか」という発想ができ、皆が株主意識になり、「会社をもっと伸ばそうぜ」という風になるらしいんです。
 

 
採用広報をやる時には、まず社員が会社のことをきちんと理解して話せるというのがベースなんです。それと一緒で、広報もすぐ外向きに何かをやってしまいがちですが、やっぱりまずは社内からなんですよね。体の中からキレイにしましょうというのと一緒です。こう考えると、なかなか見えづらい従業員エンゲージメントは経営指標になるんじゃないかなと思います。なのでうちでも従業員満足度を高める取り組みはかなり頑張っています。
 
そして、「働き方改革・福利厚生」で、一つ僕が肝いりで大事にしているのが、この「センス給」という制度です。
 

 
毎月月末にやっているんですけど、毎月テーマを決めて1人2分でプレゼンをさせるんです。テーマは「秋冬に買いたいもの」とか、「自分の好きな本」とか「自分の住みたい家」とか。フォーマットは自由で、票が一番集まった人が、1万円をもらえるんです。
 
何か買う時に惰性で買うんではなくて、何か購入のポイントなどを意識するようになってほしいというのと、伝えるスキルを身に着けてほしいというので始めたんです。実際に、みんなのプレゼンスキルは上がっていますし、お互いのことを知れたりするのでとてもいい効果が出ているなと思っています。
 
柴田
これは面白い福利厚生制度ですね。社内の体制が確立してますね!
 
大堀
結構そこにお金も時間も使いましたね。センス給や登壇ボーナスなどの福利厚生は自分たちで考えられたのですが、評価制度や給与テーブルの設計などには知見の高いコンサル会社さんに入ってもらいました。僕がこっちにお金と時間を使っている間にもしっかり事業を考え続けてくれる人がいて、一緒に事業を作ることができているなと感じています。僕らの事業体はB to Bなので、組織力の強さはやっぱり大事だと思っていて、会社自体もプロダクトだと思っているので、やるからにはかっこいいプロダクトにしたいと思っているんです。
 

 

日本全国の会社に「ストーリーテリング」を届けたい

柴田
今の20代の若い子たちに伝えたいことはありますか?
 
大堀
若い人たちには、もっとエモいことをしてほしいと思っています。先日、スタートアップの経営者として駒澤大学の授業に登壇したんですけど、大学生はエモいことをする時間がもっといっぱいあると思うんですよね。大学3、4年生でも就活でES書くとかだけじゃなくて、もっと感覚的に生きてもいいんじゃないかなと思います。
 
柴田
若い人たちに伝えたいことはエモさなんですね。そこに繋がるのかもしれないんですけど、今、PR Tableは採用支援のプラットフォームとしてやっているのは意図的にやっているんですか? 僕が大堀さんの立場だったらコンサル案件しかやらないと思うので、PR Tableがこのようなサービスをこの金額感でやっている理由を教えてほしいです。
 
大堀
日本全国の会社にストーリーテリングを届けたいというのが前提としてあるからでしょうね。僕は高額のコンサルティングをして、数社さんしか支援できないというのが嫌で、それよりも、スケールするプロダクトを作るんだっていう気持ちが、創業時からの想いです。
 
一方で、クライアントさんのニーズとしてはもっとサポートして欲しいと言われることもあります。情報発信というのは先ほども話したようにIRにも繋がっているし、社員や採用など全てに繋がっているので、それらを統合的にサポートできるような新規事業はつくっていきたいと考えています。
 

 
柴田
なるほど。ちょっと話が変わりますが、経営者として副業についてどのように考えているか聞いてもいいですか? 先日、経団連から、副業は容認できないという話がありました。企業から優秀な人材がどんどん抜けていくので、多くの企業は結構ビビっていると思うんですけど、大堀さんは企業支援をしている者としてどう考えていますか?
 
大堀
企業経営のこれからって「持たざる経営」というのがあると思っているんですよね。なので、僕らもそれを実践していて、いろんなクラウドツールを積極的に使っています。フリーライターさんも70名くらいいて、いろんな新しいツールを使いながら、満足度とか給与体系とか、きちんと言語化をしてマネジメントしています。僕らはライターさんに対しての支払いの水準が結構高くて、普通の日本のメディア企業さんよりも、しっかり報酬体系を作っています。ストーリーを製作する部分って属人的な仕事だと思われがちなんですが、実は工場の生産ラインのように仕組みもきちんと作っていて、例えば音声の文字起こしは社内でやって、ライターさんには一番大事な取材の場に集中できるようなオペレーションをしっかり作っています。
 
とにかく企業経営者自身がきちんと仕組みを作って伝えるという事をしているかということはお互いの信頼として必要ですよね。なので別に副業でも社員でもそこは変わらないと思います。企業経営のあるべき姿として、持たざる状態でいると、いろんな変化に対応しやすいので、そのためにも仕組み化をしっかりするということは大事だと思います。
 
一方で社員も、外部パートナーも、皆ステークホルダーなので、良い関係作りをするには仕組みやロジックと、右脳的なコミュニケーションも必要だと考えていて、どうしたら関係がより良くなるかということは常々考えています。この前はフリーライターさん向けの「ストーリーアワード」というのを初めてやってみました。ライターさんが書いたストーリーの中でどれが良かったかを表彰するというもので、今回初めてやってみてすごい良かったので、次はカフェを貸切るくらいの規模でやりたいなと思っていますね。
 

 

これからの時代のPRについて考える

柴田
最後に、PR Tableの今後の動きについて教えてください。
 
大堀
事業をしっかり伸ばすということとPR Table社の自体の情報発信、さらには、PRの考え方自体をアップデートし、啓発していく活動を強化していきます。今後はメディアでの情報発信にとどまらず、中小規模のイベントも続々と展開していく予定です。その集大成として、2018年11月に「これからの時代のPR」についてみんなで考えるようなカンファレンスを実施します。日本初となるPRの大規模カンファレンスとなるので、今から楽しみです。
 
柴田
今日はありがとうございました。
 
大堀
こちらこそありがとうございました。
 
ーーーー
今回は、株式会社PR Table 代表取締役社長 大堀 航氏にお話を伺いました。本対談では、「PR Table誕生のきっかけ」と、大堀氏が考える「これからの時代のPR」などについてじっくりお話を聞かせていただきました。
 
PRの話から社内制度、会社経営についてたくさんの刺激的な話がありましたね。外向けの情報発信ばかりになるのではなく、まずは「体の中からキレイにしましょう」という話は、「分かってはいるけれど、なかなか実行するのが難しい」ことですよね。話を伺った時、「グサッ」と胸に刺さるものがありましたが、あなたにはどんな話が胸に残りましたか? この記事を読んだあなたにとって、今後の時代を生きるヒントが見つかれば幸いです。
 
▶︎株式会社PR Table
企業・団体の想いを届けるストーリーテリングサービス
PR Tableはすべての会社がPR活動を行うために生まれたサービスです。企業・団体が“想い”を言語化し、継続的にステークホルダーに向けて、コンテンツ発信するために最適化したプロダクトとサポートを提供します。
HP:https://product.pr-table.com/