今回は、アナグラム株式会社 代表取締役の阿部 圭司氏にお話を伺いました。アナグラム株式会社(以下、アナグラム)は「身近な広告を通してより豊かな未来を創造するために」を企業理念に掲げている、広告運用のスペシャリスト集団です。そのスペシャリスト集団を率いる代表の阿部氏に、本対談で起業のきっかけから法人化、そして今の組織体制に至るまでを伺って参りました。PILES GARAGE編集長の柴田との対談をぜひ、お楽しみください。
以下
阿部:アナグラム株式会社 代表取締役 阿部 圭司
柴田:株式会社mannaka 代表取締役 柴田 雄平
運用型広告の素人から、プロフェッショナルへ
柴田
アナグラムが今の事業を始めた経緯について教えてください。
阿部
経緯は、端的にいうとこの事業領域が起業当時ガラ空きだったので、そこに入り込んだという感じです。
僕は元々制作側の人間だったので、実は広告に関しては素人だったのですが、前職の時に2人で一緒に組んでいた集客のディレクターが急に辞めることになってしまったんです。
なので突然、広告運用業者とのミーティングに入ることになったのですが、専門用語ばかりが飛び交い、何が話されているのかが全く分からなくて…。ただ、何を言っているかはよく分からなかったんですけど、当時の僕の嗅覚で「この人たちは本物じゃない」ということだけは分かったんです。
ただ、それが分かっても、何が「本物じゃないのか」が分からなかったので、次のミーティングまでに彼らよりも詳しくなる必要があると思い、とりあえずAmazonで売っていた関連書を全部買って読みました。すると急激に知識が身につき、自分の方が知識あるという状態になってしまったので、社長に直談判して自社内で広告運用をやらせてもらえることになったんです。
それから案の定、僕の広告が成功しまして、これまでの3倍くらいの実績が出せました。広告運用は当時、今ほど複雑ではなかったので、結構簡単に成果が出たんですよね。広告運用をし始めて気づいたことは、最新の情報があまり出てこなかったということでした。なので「この領域はガラ空きだ」ってことが分かったんです。それから自分でブログを書き溜めていたら、そのブログが影響力を持ち始め、いろんなところで「あのブログ読んでるよ」と言われるようになりました。
柴田
そこから起業まではどんな流れだったんですか?
阿部
実はその後、すぐに会社を辞めることになったんですよ。広告運用がめちゃくちゃ上手くいったので、社長には新規事業としてやりましょうと提案したんです。儲かるはずだから僕は社長が絶対に乗ってくると思ったんですけど、社長の答えは意外にもNOだったんです。
その時の僕はNOに対する答えを全く用意していなかったので、「でしたら辞めます」という言葉しか出てきませんでした。それからその後、社長ときちんと話をして案件の報酬を折半にすることで、しばらくは食べていけそうだったのでまずは個人事業主として起業しました。
柴田
なぜ個人事業主から法人にしたんですか?
阿部
まず、単純に税金対策ですね(笑) それから、僕が最初に本を出した時に「ステータスをどうするか?」という話になりまして。「著者の肩書きはみんな代表取締役です」と聞いたものですから税理士とも相談をして、税金的にもそろそろ法人にした方がいいということで法人にしたという流れです。
柴田
ちなみにちょっとプライベートな質問なんですけど、ご結婚はいつ頃されたんですか?
阿部
法人にしてから2年目ぐらいだったと思います。
柴田
その時、奥さんはどんな感じでしたか?
阿部
反対とかはなかったですね、僕は元々アパレル業界にいて、その時から彼女と付き合っているのですが、アパレルを辞めてITに行くとなった時も、法人化することになった時も、全部OKをしてくれました。法人化にあたっては細かいこともいろいろあったのですが「全然いいよ、今と変わらないでしょ」って言われましたね。
社員には、お客様にとって正しい仕事をしてほしい
柴田
アナグラムのメンバーについてお聞きします。まず男女比は大体どれくらいですか?
阿部
男3:女1です。
柴田
既婚率はどうですか?
阿部
3割ぐらいですね。男性の方が子供がいる人が結構多いです。
柴田
僕らの会社は9割既婚者で、既婚者は全員子持ちなんですよ。女性社員の多くがママなので、保育園に入れない問題などもあって、だからリモートワークの形になっているということもあります。なので僕らもチャットではコミュニケーションミスが起きないように気をつけていて、電話やグループ通話も多用しています。
組織運営に関して、僕らの会社ではOODA理論を推奨しています。OODAというのはPDCAから進化したようなもので、PDCAは外的環境の変化を起こさないことが前提のトップダウンの組織論なんですけど、OODAというのは外的環境が変化することを前提に動くんです。だから僕らは、PDCAを回しながらOODAループも展開しています。プロジェクトごとに、小さな3~4人の体制のチームを作り、予算などの権限も持たせ、メンバーに任せてチーム運営しています。
阿部
僕らも20人まではそのような組織体制だったんですけど、僕自身もメンバーたちもいろんなことが把握しきれなくなってきてしまったということがありました。おそらく様々な要因があったと思うんですが、誰が主体者なのか分からない状態になったり、仕事の質も下がってしまったりして、クレームなどが出てきたタイミングでもありました。
そこで僕らがとった手段は、アウトラインまでは僕ら経営陣が決め、それ以外のことは自分達で決めてもらうというものでした。アウトラインが決まった後は、案件を取るか取らないかということまで基本的には自由にしています。ちょっと偉そうに聞こえるかもしれませんが、僕らはお金を積まれれば何でもやりますというわけでもないんです。その案件を無理してやって、社内のメンバーが疲弊して、逆に仕事の質が落ちてしまったら、結果的にはお互いLose-Loseなので、それならやらない方がいいと思っているからです。
柴田
メンバーには売上のコミットはあるんでしょうか?
阿部
ありません。創業の時から変わらない僕らの考えとしては、売上や利益を作るのは経営側の仕事であって社員の仕事ではないと思っているんです。社員達にはお客様にとって正しいことをして欲しいという思いが強いですね。
柴田
僕らの会社も、幹部メンバー以下は売上を作るというタスクはほとんどなくて「お客様の課題解決の為に何ができるかを考えよう」ということしか伝えていませんね。「提供価値が100%以上のものを出せ。期待値を1%以上超えろ」と伝えています。期待値を上回っていれば継続してくれると思うんです。
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今回の対談の前編では「運用型広告の素人から、プロフェッショナルへ」という阿部氏の起業に至るお話と「社員には、お客様にとって正しい仕事をしてほしい」という組織運営に関するお話を伺いました。前職での相方の退職を機に、広告運用に関して短時間で相当なインプットの努力をし、起業を決意された阿部氏。現在の組織運営も、たくさんのインプットと試行錯誤をされながらこの形を作ってこられたと伺いました。組織運営に関しては、後編でさらに詳しくお話を伺っています。
後編は、「チャットでのコミュニケーションでは明治維新はできなかった?」「定量評価は定性評価をものすごく統計化したものだった」「若いうちはできることはなんでも経験した方がいい」というお話を伺いました。後編もぜひご覧ください。
▶︎ アナグラム株式会社
身近な広告を通してより豊かな未来を創造するために
HP:https://anagrams.jp/